送信日時 : 2001年 5月 26日 土曜日 8:33 AM
件名 : なぜ「トンデモ教科書」に負けるのか
「『つくる会』の皇国史観が結実した『トンデモ教科書』検定合格の裏事情」と題する記事を載せた『噂の相』(2001.6)の発行日は、5月10日です。かつては毎月のように寄稿していたので、その後もずっと無料で贈呈を受けています。発行日前に自宅に届いていますから、もうすでに16日以上が過ぎてしまいました。
上記の記事の執筆者は「本誌特別取材班」となっていますが、「トンデモ教科書」という表現は、私が末端組合員の出版労連の機関紙でも、早くから使っていました。私自身が、「本誌特別取材班」に加わったこともあるので、もしかすると、出版労連関係者が匿名で加わっているのかもしれません。論調も、そんな感じです。
確かに、とんでもない内容を含んでいるのでしょう。上記の記事によると、この教科書の担当調査官、村瀬信一は、元皇学館助教授、元帝京大学助教授で、彼を東大の大学院で指導したのが、「つくる会」メンバーでもあり、日本近代史の権威とされる伊藤隆だそうです。その意味でも、文部科学省とやらの「検定」なるものは、猿芝居でしかありません。
『日本経済新聞』(2001.4.4)には、その前日の「教科書検定の発表」の概略が載っています。話題の焦点については、「1997年度から」「各社の教科書に一斉に掲載された」「従軍慰安婦」は、今回、3社のみで、その「3社のシェアは2割程度」、しかも2社は「『慰安婦』の言葉を避けた」とあります。
「『南京大虐殺』(南京事件)」については、「つくる会」のも含めて「8社すべてが記述したが」、「現行本7社中6社が数万人から30万人としている」のに、「今回被害者数を載せたのは2社だけ。他は『大量』『多数』とした」そうです。
つまり、「トンデモ教科書」反対派は、全面的な敗北です。当然、「反動だ!」との抗議の声が上がるでしょう。しかし、そんなに元気な声が出そうには見えません。
「反動」も確かでしょう。しかし、問題は、むしろ逆に、その「反動勢力」の猿芝居に負けた方の側に求めるべきなのです。これが野球とかゴルフなら、直ちに「敗因」の研究が行われ、場合によれば、監督は辞任、スポーツ紙や週刊誌で、でかでか記事になります。ところが、教科書問題だけではなしに、いわゆる「左」とか「反体制」の「闘い」では、常に「敗因」や「責任」が曖昧にされ、このところ、ずるずると後退してばかりいます。
私は、たとえば、旧ソ連の崩壊の実例を考えます。ソ連の言論統制や経済的な失敗についての情報は、かなり前から、いわゆる「右」、今回の事態に比較すれば、「トンデモ教科書」の周辺に溢れていたのです。それらの情報にも、確かに、とんでもない部分がありましした。しかし、大筋は、当っていたのです。ところが、いわゆる「左」の陣営では、わが日本も皆様も含めて、事実上の言論統制を敷き、それらの情報の分析を怠り、今や、総崩れとなっているのです。
この目の前で起きた約十数年ほどの「現在史」を直視することなしに、「反動だ!」と肩を聳やかしてみても、それは「負け犬の遠吠え」でしかありません。今、「トンデモ教科書」反対派が、緊急に行うべき作業は、なぜ負けたかの徹底検証です。
上記の『日本経済新聞』(2001.4.4)には、「寄稿」として、「溝口雄三・大東文化大学教授」の一文も載っています。今回の検定の争点、「加害行為」を巡って、「反省する側も、認めまいとする側も」、「アジア諸国を『後進的』とみなす」「ヨーロッパレンズの歴史観」に立っており、それを「根底から検討する時期に来ている」というのです。つまり、現状は、目糞が鼻糞を笑う類いでしかないのです。
私は、今から27年前、横帯の宣伝文句に、「近代ヨーロッパ系学者による"古代史偽造"に真向から挑戦」と記した単行本、『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』を発表しました。今、わが電網宝庫に入力中です。
http://www.jca.apc.org/~altmedka/afric-index.html
もっともっと大規模に、人類、私の表現では、裸の猿の歴史を、抜本的に書き直す努力をすべきなのです。
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