● 皆様へ ●  2002年4/11 日本YMCA同盟  本田真也

今回のイスラエルの軍事侵攻について、日本YMCA同盟としてイスラエルのシャロン首相、パレスチナ自治政府のアラファト議長宛に、昨日声明を出しました。イスラエルの侵攻を止め、ただちに撤退し、パレスチナを国家として認めること。本質的には、イスラエルの占領が原因なのですが、暴力の連鎖を断ち切るために、パレスチナ側に自爆の抵抗の中止を求めています。
そして、将来的にYMCAとして両国の青年交流など果たすべきことにも触れています。
ご意見は種々あると思いますが、同盟としていくつかの過程と合意を経ての総主事井口延としての声明です。



イスラエル・パレスチナに関する声明
イスラエル共和国首相 アリエル・シャロン様
パレスチナ自治政府 議長 アラファト様

 YMCAは、キリスト教の愛と奉仕の精神に基づいて全人的な青少年の成長を願い、宗教・教派の違いを超えて社会教育の活動を行い、世界125ケ国・地域に組織されている団体です。
平和で公平な社会の中で、青少年が豊かに育まれることを願う団体で、政治団体ではありません。イスラエル、パレスチナにもYMCAがあり、様々な活動が行われています。しかし、職業教育、リハビリテーションセンター運営、幼児教育などの活動を戦闘行為のため行うことができません。

 2000年秋以来のイスラエル・パレスチナ両国民の間で激しい戦闘が続いていることに深く心を痛めています。特に、イスラエルが圧倒的な軍事力をもって、ガザ地区を封鎖し、自治区内に多数の入植地を建設することによって、パレスチナの人々の生活を日常的に圧迫していることを知っています。女性・子どもを含む民間人も多数死傷し、パレスチナ地域の社会的施設も攻撃を受け、生活のみならず生存についても深刻な状況に置かれていることに大変憂慮しています。

 そして、今、イスラエル軍がキリストの聖誕地ベツレヘムなどパレスチナ自治区の諸都市に侵攻し、圧倒的な軍事力をもって包囲、占拠していますが、直ちに撤退し、和平交渉のテーブルに着くことを強く求めます。このままでは、両国が積み上げてきた平和への努力が崩れ、憎しみが増大することを恐れています。この時に、和平の実現へ向けて道が開かれることを願っています。

 日本のYMCAは、YMCAミッションの中で、「アジア・太平洋地域の人々への歴史的責任を認識しつつ、世界の人びとと共に、平和の実現に努めます。」と述べています。
日本は、第二次世界大戦敗戦までアジア諸国に侵略し、朝鮮を植民地支配し、多大な人命を損ない、苦悩を与えました。そのことを謝罪しなければなりません。そして、今YMCAは、すべての暴力行為や人間の尊厳を傷つける行為に反対します。
弱き立場にある人々、貧困に置かれている人々へ側に立つ働きを常に目指したいと思います。したがって、パレスチナ人による自爆テロという無差別殺戮行為に対しても反対です。イスラエルによる占領という状況が変わらない限りパレスチナ人の自爆テロは、続き、イスラエル人とパレスチナ人の安全は確保できないと思われますが、この暴力の連鎖を断ち切るために、パレスチナ側も自爆テロの遂行を止めさせるよう働きかけることを求めます。

 私たちは、イスラエル・パレスチナの両住民が、人間性が回復され、平和のうちに共存して生きていくことを心から願っています。YMCAは青少年の成長に関わる働きを1世紀を越えて進めてきました。YMCAは、イスラエルとパレスチナの青年や世界各国の青年が交流し、青年期よりお互いの違いを認めつつも共存していく学びを深めるプログラムを将来行っていきたいと思います。そのようなプログラムが、YMCAが参与できる分野であります。長期的視野に立って平和の実現に寄与したいと願っています。
 けれども、多くの命が奪われている現在、次のことを要望します。

1 イスラエルがパレスチナ人の尊厳を守り、
 人間を辱める一切の行為を止めること。
2 パレスチナ人による自爆テロを行わないこと。
3 イスラエルは、3月30日の国連の安保理での決議に従い、
  また、オスロ合意を遵守すること。
4 イスラエルは、パレスチナを国として認め、
  国際法に従い占領地から完全に撤退すること。
5 不安定な状況が続くならば、国連平和維持活動による停戦監視を受入れること。

  日本YMCA同盟 総主事  井口 延

参考説明
・ オスロ合意/1993年9月ノルウェーの首都オスロで、パレスチナとイスラエルの交渉が実り、パレスチナ自治を目指す合意が成立した。9月13日アメリカのクリントン大統領を保証人としてパレスチナのアラファト議長とイスラエルのラビン首相が調印した。ヨルダン西岸、ガザ地区が自治区となった。

・ 安保理の決議。/3月30日 国連安全保障理事会がイスラエル軍の撤退を求める決議を行った。米国を含む14カ国が賛成。

・ 国連平和維持活動/国際的な努力の集結点となって、国際社会が一丸となって平和を求めていることを当事者に示し、紛争を拡大する可能性のある同盟および反同盟の拡大を制限することができる。紛争を抑制および解決する行動の負担を共有する手段を多くの国に提供し、その結果、人的、財政的、政治的な意味での効率を高める。
 国連平和維持活動の機能のひとつに、休戦の監視、停戦の監視、軍事的監視がある。

以上

●世界YMCA同盟の英文サイトは→こちらです



         


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