<2006年 学生YMCA賛助会ニュースレター20号 より>

人を育てる使命

日本YMCA同盟理事長 中川 善博テキスト ボックス:

全国学生YMCA賛助会が発足して6年になります。また、全国の学Yに連なる若者たちの信仰と友情を育み、生き方を問いあったあの東山荘も昨年90年を迎えました。

 学生YMCAの歴史は、先駆けともなる熊本バンドや札幌農学校から数えてほぼ130年、今日の学Yにつながる旧制高等学校に設立されてから、120年を近く迎えようとしています。この間、学生YMCAで育った青年達が、社会で活躍するとともに、YMCAのスタッフやレイパ-スンとして、各地のYMCA運動を担って来ました。

 YMCAは一貫して人を育てることを使命として来ましたが、学生YMCAは将にそうした場として、聖書を通して真摯に生き方を問い求める場であり、仲間と出会う場であると言えます。それは何時の時代にも変わらず受継がれて来ました。

青年が、自らの生き方への問いかけを止めたとき青春は終わり、YMCAが祈りと聖書を忘れたとき、YMCAでなくなると言えますが、学生YMCAは、学生という場を通して自らの生き方を、聖書に問いながら共に学んで行くところであり、その拡がりが学Y運動であると思います。

近年、大学改革が進み、大学や学生生活が変わっていく中で、活動を休止していた学YやSCAが再建され、インターカレジエイトな活動も活性

化しつつあることは大変心強いことです。学Yを学生時代だけの関わりで終わるのではなく、社会の中にあっても聖書を通して自己の生き方を問いつつ、YMCA運動の担い手・支え手として、つながりをもち続けて欲しいと願っています。

 この一年あまり、日本のいくつかの都市YMCAや学生YMCA100年を越える記念の集いがもたれました。富国強兵のナショナリズムが勃興する中で、若きキリスト者たちが、厳しい社会の目を受けながらも強い信仰と溢れる使命感のもとに、立ち上げたそれぞれのYMCAの歴史に触れる時、改めて深い感動を覚えます。

 なかでも、この4月に100年を迎えた在日本韓国YMCAにとっては、苛酷な植民地支配の時代やさまざまな苦難が続く100年でありました。とりわけ1919年朝鮮に於けるいわゆる31独立運動の導火線となった独立宣言が、在日本東京朝鮮キリスト教青年会で韓国朝鮮の若きキリスト者や学生達によって行われたことは、韓国近代史にとって欠くことのできない出来事であり、そうした歴史をもつ在日本韓国YMCA100年の意味の重さを感じます。同時にYMCA運動の使命や役割を問いかけていることに深く考えさせられます。

 日本のYMCA運動は、いま多くの課題に直面しています。特に、公益法人改革はYMCAの今後のあり方に影響を及ぼしかねない問題であり、法人格や寮をもつ学Yへの影響も考えられます。また、個々のYMCAは、財務面や事業面での問題とともに、ボランタリ-ム-ブメントとしての組織維持の人材が課題となって来ています。学Yが、日本のYMCA運動を担って来たように、今また、YMCA運動の担い手を次々と生み育てて行くことが求められています。

 その面からも、明日を担う学Yの活動を支える賛助会を、もり立てて行きたいものです。(関西大学YMCA OB


WHATS UP NOW ①

学生YMCA賛助会西日本地区セミナー

『いま期待される学生YMCAのはたらき-キリスト教は学生の課題に応えられるか』をテーマに、3月25日、学生YMCA賛助会西日本地区セミナーを京都YMCAを会場に行ないました。

 まず最初に、昨年から学生YMCA設立の動きのある神戸女学院大学のチャプレン飯謙氏より開会礼拝があり、申命記30章11節~14節から「アガペーの愛による人間としての誇りの回復」についてメッセージをくださいました。

続いて、学生YMCAの使命を考えるときに、柱となる4つの視点から大学・学問の現場にて第一線でご活躍の方々からご発題を頂きました。

テキスト ボックス:  「キリスト教」の視点から片柳榮一氏(京都大学教授・京都大学Y理事長)は「宗教は個人の自発性を生かすもの、『お前はこの人生で何をなすのか』と問うもの」であり、「個人を超えるものがいきなり根本に強制力をもつ『国家』となる日本社会」において「社会の質を変えるボランタリーアソシエーションの一つとして教会、YMCA・YWCAは社会の中で課題を担うという自覚があるだろうか」と問題提起。「大学」の視点から中道基夫氏(関西学院大学神学部助教授・同大学Y顧問)はマンモス化した大学では「誰かと何かをする時間」「面倒くさい人間関係の場所」こそが必要であり、小さな群れであってもまず「場(天地創造のように神様はまず「場所」を作られる)」を作ること、一方で「大学」の枠組みを超えた全国・世界的なつながりが学Yの魅力であることを語られました。「学生」の視点から新堀真之氏(元共働スタッフ・同志社大学神学部)は最初に、「学生」と一くくりにするのではなく、その多様性を踏まえることが肝要であると述べ、「何者かにならないプレッシャーにさらされる学生たち」の現状において、「人と話す・人の話を聴く」こと、そして現場に出向くことを通して「自分のあり方が強烈に問われる体験」をし「自分がどこに立つか」という「答えのない歩み」に踏み出すことが学生YMCAであると話されました。「YMCA」の視点から福田奈里子氏(学生部委員・活水女子大学YWシニア)は学生YMCAを通して出会ったアジアの現実と小さくされた人々の存在、聖書からの学びと社会を変える力を持つ学生・青年の可能性について語り、「聖書を通して自分の生き方を問い、原点探しをする」学生YMCAのあり方と、YMCAの多様な働きに触れ、「都市YMCAで求められるクリスチャンリーダーシップなど、ぜひ卒業後もYMCAの広がりの中で学Yのリーダーシップを発揮して欲しい」と語りました。(司会に岩野祐介氏・京大シニア)

 その後、フロアを含めたディスカッションの中では、藤森元氏(元学生部主事)や島田恒氏(神戸大学YMCAOB)など先輩方から、「学生のニーズとキリスト教の可能性の一致点をどうつかむか」「現役学生が主役になれる『居場所』の創造」、「(かつての否定媒介のように)自己、大学、社会を厳しく批判的に捉えることができているか」という意見も出され、世代、関わりを越えて学生YMCAへの情熱を分かち合うときとなりました。

 また、インドスタディキャンプに参加した松本敬史氏(京大Y)、深渡歩氏(関学Y)から帰国直後の声を聴き、有住航氏(関西地区共働スタッフ)からは現在の関西地区学生YMCAの状況について報告がり、六甲聖書研究や関西主事宅聖書研究へのOBGの参加も呼びかけられました。

 会場を提供くださった京都YMCAからは西岡博司スタッフより協働してYMCAのミッション実現の道を歩みたいとのメッセージ、最後に山川一郎学生部委員長より、今回の議論を結論づけず、継続した話し合いを行うこと、学生YMCA賛助会はそのような「生きた場」であり多くの方に協力を頂きたいとのご挨拶がありました。(文責:事務局)


WHATS UP NOW ②

第11回インド・スタディキャンプ

団長・九州地区共働スタッフ 三上 梓

11回インド・スタディキャンプ(227日~316)に団長として参加しました。全国から集まった7名の学生たち、スタッフ1名と共に参加した今回のキャンプは、参加者各人にとって、貧困、宗教、信仰について深く考えるための多くの出会いと対話の機会となりました。

 キャンプの中心は、二つの活動でした。一つは、南部の大都市バンガロールのSCM-Indiaが主催する、グローバリゼーションに関する研修に出席し、グローバリゼーションのもたらす負の側面である、貧富格差と構造的暴力の現状を、インドの文脈において視察することです。グローバリゼーションは、一方では、大都市と富裕層に発展をもたらし、他方では、貧困と、それゆえの農村部から都心への人的資源の移動をもたらします。また、児童の経済的・性的搾取を容認・助長するのです。そのことを実感する契機となったのが、ストリートチルドレンの支援をするバンガロールYMCAの活動の視察であり、スラム地区の視察でありました。

  

 もう一つは、インド最南端のカニャクマリにあるアンプマナイ・ボーイズホームに滞在し、キリスト者による教育支援の実態を知ることです。ホームでは、主として財政上の理由により就学困難な子どもたち(小学一年~高校三年男子)
35人の共同生活の場に加えていただき、交流のときを持ちました。また、ホーム近隣のキリスト教関連施設の来訪、ヒンズー祭の見学と対話、塩田やロープ作り農園の視察、小・中学校での日本文化の講義(!)、そしてホームの子どもたちの生活を知るホームステイなどを通して、インドの文化、生活、宗教に触れることができました。

インドにおいて、私たちは毎晩、共に聖書を読み、その日の出来事を分かち合いました。それは、各人の体験を言葉にし、互いを刺激しあう作業でした。また、アンプマナイでは、毎朝子どもたちと一緒に祈り、日曜日の礼拝を共に守りました。

寮やサークルの活動において、聖書を読み、キリスト教にふれている参加者一人一人でしたが、今回のキャンプにおいて、生きたキリスト教運動、キリスト者に接する中で、各人の聖書理解に立体感が加わったのでは、と確信しております。

多くの皆さまの具体的な支援と祈祷なくしては、このキャンプは実現しなかったことでしょう。参加した一人一人にとって、非常に有意義な体験となった今キャンプをお支えいただいたことに、心からの感謝をいたします。

▼キャンパーから感想抜粋▲

○日本の社会がどんどん「快適に」「便利に」向かっている中で、外に追いやられてきた大事なものがインドには残っていると思った。それは言葉にすれば「人や自然との直接的なやりとり」とでも言えるだろうか。全て自分の前で起こり、強烈なインパクトを与えてくれるのだ。余計なものは何一つなかった。(京都大学Y・松本敬史)

○インドで本当の貧困を目の当たりにする中、子どもの笑顔に救われることが度々あった。笑顔の中には毎日を必死に生き抜くために必要になってしまった猜疑心、大人の感情を心得ているかのような表情も感じる自分がいた。日本には物があり過ぎて、日常のあたり前のことを素直に喜ぶことができない。大人もなのであろうか、感受性が乏しいように感じた。この体験はこれからの人生に大きく関わっていくことになるであろうし、インドという国の素晴らしさ、一方でインドの問題を多くの人に知ってもらいたい。(慶應学Y・坂田逸美)

○インドでは人との対話や関係の中で多くの違和感があった。その多くは、人の前に立ち、じっくりとその人に向き合ってみるという努力が足りなかったからだと思う。そして向き合うということは、自分を他者に見せるということでもある。汚さや弱さも含め、「これが自分だ」と言い切れる自信をこれからつけていきたい。(早稲田大学Y・成瀬朋樹)

*事務局にて編集・抜粋しています。報告書は6月下旬に完成予定です。


WHATS UP NOW ③

九州大学YMCA100周年
九州大学YMCA 藤村 真琴

九州大学YMCAは、昨年2005年をもって、設立100周年を迎えました。その歴史は、1905年に九州大学の前身である京都帝国大学福岡医科大学にYMCAが設立されたところから始まります。その後、九州帝国大学(現九州大学)が1911年に開学してからは、九州大学とともに歴史を歩んでまいりました。

テキスト ボックス: 2006年度学生部委員会方針
①「聖書を読む」場を起点に協力者、参加者の輪を広げ、学生YMCAの聖書研究の意義を内外に示していく。
②キリスト教青年運動として聖書を通して、いかに生きるか、学ぶかについて考え、平和を祈り願い、重荷を負う人々と出会う活動に取り組む
③専従スタッフ、共働スタッフの働きの充実を図り、新しい視点でのプログラム開発や、ネットワーク作りを進める。
④アジアや世界の場で学び、協働できる学生・青年を育成する
⑤都市YMCA、ワイズメンズクラブとの協働を進める
⑥「全国学生YMCA賛助会」を生きたネットワークとして展開を図る
⑦全国・海外プログラムをより魅力あるものとすべく、充実を図る。
⑧新しい学生YMCA、復興に協力し、支援する。
⑨寮・資産の管理運営について取り組みを強化する。
この100年の歴史を記念し、34日(土)には、九州大学Yのシニアで、現在もペシャワール会にて活躍されている中村哲氏を講師に招いて、100周年記念講演会を開催しました。当日は、九州大学YのみならずYMCAに連なるさまざまな方々が遠くは海外、東京、そして九州各地から多忙の中、福岡に来てくださいました。

中村氏は、小柄でおっとりとした印象を与える方で、講演では、淡々とご自分のこれまでされてきたことを語ってくださいました。彼の視点からみたアフガニスタンやパキスタンの世界、そこで行ったハンセン病から始まる医療行為、井戸の掘削。淡々と語る様子から、中村氏の見る世界には、国境などなく、ただそこに困っている人があっただけなのだと伺えました。

 九州大学Y100年の歴史の中、私自身が当会に関わった年月は5年を超えません。しかしながら、100年という歴史の中で大切に受け継いできたキリスト教の精神というものを幾度となく感じることができました。そして、中村氏の講演では、中村氏が同じキリスト教の精神に支えられ、突き動かされて今を生きていらっしゃるのではないか、ペシャワールにおける中村氏の偉業も、九州大学Yの歴史を培ってきた先輩方の偉業も、ともに同じ精神に根ざしているのではないか、そう思えました。

九州大学Yは、その歴史の中で、会館学生寮を2度閉鎖し、2度再開することで今に至っています。100周年を迎えるにあたり、歴史の中でキリスト教の精神を守り、培ってこられた先輩方に深く感謝の意を表したいと思います。また、この精神をつなぎ育てていくために、九州大学Yと全国のYMCAが今後も盛会であり続けることを願いたいと思います。

  

(上は西南学院大学での中村哲氏講演会・下は記念祝会)

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WHATS UP NOW ④

第1回高校生セミナー開催

~違いをうけとめ、生かされる~

 318日、学生YMCA第1回高校生セミナーが明治学院高等学校にて行われ、高校生、教師、関係者など35名が参加しました。これまで大学を拠点として活動をしてきた学生YMCAですが、ハイYOB・OG会の後援も受け、高校生のうちに学校の枠組みを超えて仲間と出会い、社会において真実な生き方を貫く人たちと出会い、聖書のメッセージに触れること、そして国際、ボランティアなどの興味・関心を広げていくことを願い、企画されました。

まず、フリー・ザ・チルドレンという「子どもが子どもの人権を守ること」を目的に活動する国際的なNGOの働きに連なる明治学院高等学校の生徒から、イラクの白血病の子どもたちへ医薬品を贈る運動や、フィリッピンブレダ(性的虐待を受けた子を保護する施設)との交流などについて紹介がありました(写真)。五感で感じつつ、思いをはせる想像力の大切さなどが話され、活動の積み重ねと一人ひとりがしっかりと受け止めている様子に参加者一同、深く感銘を受けました。顧問の小暮修也先生は、「子ども自身がもつ共感、それは人権意識そのものである」と話されました。

「聖書を読む」プログラムでは、三森妃佐子氏(日本キリスト教団神奈川教区寿地区センター主事)より映像を用いて横浜寿町の紹介が行なわれました。「社会の矛盾が集約され、偏見のもと仕事も十分にない。そこに生きる人たちの『わたしも人間だ』という叫びを受け止め、『天の国』をこの場で実現するよう努力しなければならない」と述べました。グループタイムで感じたことを共有し、閉会礼拝では、「今わたしができること」を葉に模した紙に書き、枝の絵に貼り付け、豊かな木を創り上げました。このような高校時代の体験が、長い人生の原点の一つとなって欲しいと願います。(文責:事務局)

 ◆ 賛助会使途報 ◆

   

 本会の2005年度(2005年4月1日~2006年3月31日)使途を次の通り感謝をもって報告します。賛助会の運営責任を持つ学生部委員会にて承認されたものです。全国・海外プログラム支援、共働スタッフ支援、賛助会プログラム支援の目的に沿って用いられます。尊いお支えに深く感謝いたします。

賛助会費収入

1,247,920

<使途内訳>

1)全国学Y夏期ゼミ支援

184,000

2)WSCF派遣・招聘支援

60,000

3)インドスタディキャンプ派遣支援

 100,000

4)パレスチナ現状視察派遣支援

60,000

5)共働スタッフ活動支援

450,000

6)日韓共同未来プロジェクト支援

45,000

7)第4回エキュメニカル協議会

30,000

8)講演記録集発刊費用一部

90,000

9)賛助会地区別プログラム

90,000

10)ニュースレター・講演記録郵送費

88,000

11)賛助会事務費

50,920

1,247,920

1)運営委員会支援

2)森小百合氏(関学・SELF)、夏期ゼミ招聘(Necta

3)学生7名(早稲田・慶應・京大・九州)団長渡航費一部

4)新堀真之氏(同志社)、山口政隆氏(関学)、竹迫之氏(東北学院大学シニア)渡航費一部

5)有住航氏(関西)、三上梓氏(九州)

6)Yより20名参加。団長有住氏派遣経費

7)主催団体分担金として

8)『憲法と教育基本法』(小森陽一氏)、『聖書から聴く平和への使命』(関田寛雄氏)、『「憲法九条と平和」(高田健氏) 

9)全国セミナー(7/18)関西地区セミナー(3/25)関東地区聖書を読む会(毎月)


WSCFの2006年度プログラム

WSCFアジア太平洋地域委員会

日程:72日(日)~7日(金)

場所:バングラデシュ

日本から新たに福田奈里子氏(学生部委員・活水女子大学YWCAシニア・山梨YMCA会員)を委員に推薦することになりました。

なお、委員会に先立って628日~71日、プレ女性ミーティングが行なわれます。

学生YMCA全国夏期ゼミナールに招聘決定

日程:831日(木)~93日(日)

場所:国際青少年センター東山荘

昨年のMs. Nectaria Montes Rocasに続き、今年は女性コーディネーターのMs.Yock Lengを招聘し、ジェンダーの視点からのプログラムコーディネートやWSCF紹介を行います。ふるってご参加ください。

Student Empowerment for Transformation

日程:1112日(日)~18日(土)

場所:タイ 費用:3万円程度

アジア太平洋地域から学生が集り、教育へのグローバリゼーションの影響をテーマにフィールド・トリップ、話し合い、聖書研究など行ないます。日本からは選抜の上、学生1名派遣予定。

この他にも、『人権に関するワークショップ

(フィリピン・10月)や『ムーブメント・エクスチェンジ』(海外のSCMにて3ヶ月程度インターンとして活動に加わる)などあります。詳細は日本YMCA同盟までお問い合わせください。

テキスト ボックス:


◆私が生きた時代、そして学Y◆

 奈良 信

10月28日、秋晴れの日曜日の午後、西荻窪の駅から東京女子大のチャペルに急ぎ向かう若者たちの足の速さに、わたしは驚いていた。

お互いには未だ相知らない間柄だった。だが、戦時下を異邦人の如く、夫々の孤独な場所に在った者たちだったに違いない筈だった。

堂が溢れた次の瞬間、このあふれる「遺された神の民の群れ」の中に自らを見いだして、感動は共鳴し合っていた、どよめく讃美のうた声、その中にわたしの声もあったのだった。その時、みんなで歌ったのは、今も歌っている「かみはわがやぐら」であり「主よみてもて」だった。みんな、独りででも歌っていたからあんな大きな声で自分の歌を歌えたのだろう。

この時から今年まで60年になる。礼拝の直後には、みんな去りがたく、殆どが初めましてだった筈だが、そんな挨拶を交わした記憶もなければ気もしない。兎に角あれから東京キリスト教学生会という運動が起こって、翌年の夏には「修養会」と称して、鷺の宮の神学校で、月曜から土曜まで、毎朝8時から午後4時までお弁当持ちで、これに男女140余名が精勤していたのにも驚いていたが、思えばそれどころか、毎朝の礼拝説教を交替で担当して下さった、石原謙、山谷省吾、村田四郎、総チャプレンの鈴木正久の諸先生、5日連続の毎日の分団担当の今中次麿、熊野義樹、酒枝義旗、宮本武之助、北森嘉蔵、山本和の諸先生、それに最終日には、脚の不自由な大塚久雄先生を、阿佐ヶ谷駅からリヤカーでお運びしたことなど、これらの大先生がよくもお付き合い下さったものと感激する。きっと敗戦の日本の将来を託す思いで、献身下さっていたのだろうなぁ。そう言えば先生方のお弁当はどうしてたんだろう。飢えの時代だった。ご用意した記憶もない。これは、ご持参下さっていたこと確実ではなかろうか。

9月卒業だった私は、この同じ時期、卒業設計Tokyo Student Christian Center にも精励していた。学Y主事の第一号になることに一旦はなってもいた。だがこの鷺の宮のお話の頃には、やはり私の本来の決意人生、それは教会ででもYMCAででも、私はレイマンで行くのだ、であり、その理想の職業は自由な建築家であり続けることだ、であった。

「早大YMCA ホームカミング・セミナー」という定例会が、信愛学舎を会場に始まって既に3年に近く、一年半前からは、毎月第一木曜6時から、礼拝に始まる月例会としており、理事たち、OBたち、現住舎生たちの30人程度、夕食は理事の中での有能シェフを舎生が手伝って給仕。毎回のゲストスピーカーには、すでに24名のOBが1時間の講義と質疑の楽しいものです。テキスト ボックス:  

(早稲田大学YMCA OB/現理事長)

(早稲田大学YMCA信愛学舎の前で。著者中央。左:本間勝氏 右:東條隆進氏)


◇YMCAで培ったものを社会で◇

原点となった二つの体験

岡山大学YMCAシニア 宇津宮 尚子

私はいま、福島県二本松市にある青年海外協力隊の訓練所でスタッフとして働いており、語学の修得を中心に、国際協力に関わる者として必要な知識や、派遣国の地域住民と一体となって活動する上で基本となる自発性、柔軟性、協調性等の適性を高めるためのトレーニングを行っています。

大学卒業後、スリランカに農村開発部門の協力隊員として赴任し、帰国後、この訓練所でスタッフをしている背景には二つの理由があります。

一つ目は、スリランカに派遣されていた時、思い通りの活動が十分にできなかったことです。村に住むおばちゃんたちの生活を少しでも楽なものにしたいと、そのつぶやきに耳を傾け、女性による農業のグループ活動に取り組んだものの、経験の少なさから、グループとしての蓄えを増大する事業がしっかりと展開できませんでした。にも関わらず、村を巡回し泊めてもらう度、トイレには普段はないバケツが置かれ、米作りを試したいという私の希望に、大切な田んぼを無料で貸してくれたり、すぐにお金にはならないグループ活動を投げ出さずに続けたり、と協力をおしまずしてくれました。帰国する時、涙をためて感謝の詩を朗読してくれたおばちゃんたちの姿が、深く心に刻まれています。

二つ目は、学生時代に岡山大学の学生YMCAのメンバーとして活動する中で、出会ったたくさんの人たち、特にハンセン病施設である国立療養所邑久光明園(岡山県瀬戸内市)にある、光明園家族教会の人たちとの出会いです。元ハンセン病患者だった光明園家族教会の人々は、身を切るようなつらい過去について、無知な私たち学生に対していつも温かく語りかけ、「訪ねてきてくれてありがとう」と頭を下げられます。その姿に申しわけない気持ちが込み上げ、「話を聞かせてくれたことへの感謝の気持ちを伝え、何かお返しができればどんなにいいか」と言う私に、津島久雄牧師がにっこりと語ってくれました。『恩返しっていうのは、受けた本人に返さなくていいだよ。これから出会っていくだろう人、違う人にすればいいだよ』、と。

正直、いますぐスリランカに飛び、村のおばちゃんたちと村おこしや収入向上プロジェクトに関わりたいという思いはいつもあります。しかし、それを踏みとどまらせる津島牧師の言葉もまた、私の心にあるのです。そして自分の経験を還元するために、また心残りがいっぱいの協力隊経験を持つ私だからできる貢献とは何かと考えた結果、これから派遣される隊員候補生と自分が隊員時代には出来なかった状況把握の方法や、プロジェクトの具体案作りを一緒に考えたり、あるいは近い将来、派遣国の現場で協力隊員を支援するボランティア調整員として働くことではないかと考えています。

私自身の恥ずかしい失敗を洗い出し、「生きっ恥」の数々を隊員候補生にさらしながら、「あなたならどうできるか。どう考えるか」と議論しながら、事実を多角的に捉える勉強会を始めました。

YMCAや協力隊の経験を通して、多くの人々からたくさんの体験を共有してもらった者として、今度はそれを誰とどのように分かち合っていくのか。今後も自問自答しながら具体的な実践につなげる努力を積み重ねたいと思います。

*THE YMCA6月号に寄稿)

☆ 感 謝 ☆

東京YMCA 本田 真也

2000年に茨城Yより同盟、そして今春東京Y帰任となりました。茨城Yでは会員集めてのYMCAの創設、同盟では全国レベルでの都市Y・学Yでの関わりにより、個別状況と課題の中でYMCA運動を担う人々との出会いにより多くの学びを得ました。感謝いたします。同盟赴任直後は、本行さん、横山さんらが学生YMCA賛助会の立ち上げ準備中でありました。6年を経て現在320名もの会員をもって賛助会が維持されていることは、ひとつの証しであります。全国学Yプログラム支援、協働スタッフ支援も含め「青年が育ち、育てられていく」ことを願い、風を吹き込み、耳を傾け、励まし、そして、世界大のYネットワークを押し出しいく同盟学生Yの働きを理解し、期待していることに他なりません。事業形態でない学生Yにとってそのような一人ひとりの思いの結集が基盤であろうと思います。学Y運動にとって「人を育む」ことは、生きることの原点に関わる種が蒔かれていくことではないでしょうか。愚直なまでにみんなで聖書を自由に読む、深く聖書を見据えながら現場で生きている人との出会い、そういう言葉と出会いの循環を経て、イエスの生き方、福音がそれぞれなりに通奏低音のように据えられることだと思います。ある牧師は、「蒔かれる」ことを言い過ぎる。「如何に実り、刈るかだ」と言われます。しかし、実りの時は、目先の時ではなく、祈り待つ、望み待つと言う脈々とした営みの中に起こってくることです。一面ですが、多くの学Y出身の牧師が各地にて良き働きをしていることも感謝です。今後、さらに学Yのみならず日本のY、キリスト教界に居る志ある青年がアジアの神学校で学ぶなどエキュメニカル・ユース育成が肝要と思います。そのファンド等が整えられるということを夢見ております。

☆ 紹 介 ☆

日本YMCA同盟 上久保 昭二

みなさん、こんにちは。上久保昭二と申します。私は京都生まれの広島育ちのうさぎ年、父方は三重県名張市、母方は佐賀県伊万里の出身です。時々ではありますが、ふるさとを訪ねて郷愁を温めるようにしています。大学卒業後広島YMCAに奉職し、28年の年月が経った51歳のときに、一区切りつけて大学院への進学を決意しました。久々の学生生活はとても新鮮で自由で、のびのびとした研究生活であってほしいなと望んでいましたが、現実はそれどころか2年間はあっという間で、やはり5人の家族を養うための大変苦しい生活に終始したことも否めません。

このたびは、再びYMCAの門をくぐることになり、日本YMCA同盟で国際協力と学生YMCA・ユース関係の仕事を担当することになりました。自分自身も驚きと戸惑いを隠せませんでした。大変ありがたい恵みでもあり、YMCAでの働きがまだ残されているんだという見えざる力さえ感じられました。

Yとの関わりも、3年前から広島大学学生Y再建活動に関わることに導かれ、聖書の学びとともに学YOBOGの方々との交わりを得ましたが、それがまたこのたびの同盟での働きに直結するという何とも不思議な縁を感じました。

東京での本格的な生活は初めてで、息子との同居ではありますが単身でがんばります。少しスリムにならないといけないのですが、健康に留意して全国の学Yや海外のYを飛び回り、YMCA運動の深まりと広がりに少しでも貢献できたらいいなと願っています。どうぞよろしくお願いいたします。




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