VOW特集 「渡辺和子さんを偲んで」


No.220 (2001.4.3) から

渡辺和子さんをしのぶ会のご報告


古久保さくら

 

 去る3月20日に京都市内のホテルにて、昨年12月末に亡くなられた渡辺和子さんをしのぶ 会が80名以上の列席のもと開催されました。参加者の顔ぶれを見て、つくづく和子さんのネ ットワークのすごさを感じました。

 開会にあたり三宅川泰子さんから1999年の病気の発見から亡くなるまでの、病に敢然と立 ち向かった和子さんの様子が語られました。つづいて京大矢野事件において被告!)として 闘った小野和子さんによる献杯があり、和子さんからはじめて電話をもらった日のエピソード が披露されました。着実にして緻密な小野さんと圧倒的行動力の和子さんとの邂逅の瞬間とは、 まさにキャンパスセクハラの問題が可視化されていき、解決への飛躍的一歩が進められる瞬間 であったと思います。

 別府恵子さんのスピーチでは、和子さんのアメリカ文学についてのお仕事についてのお話が あり、最後に詩の紹介がありました。「私のろうそくは両端から火をつけてしまった。だから一 晩ももたなかったけれど、その光は明るく、私の友の顔を照らした。私の敵の顔を照らした…」 正確ではないけれど、そんな詩でした。アメリカ文学研究者としてのみならず、フェミニスト としての運動に積極的にかかわり、二足のわらじをはいて、あわただしく精力的に生き抜いた 和子さんの一生を胸の痛みとともに思い起こさせられました。

 牟田和恵さんからは、和子さんのキャンパスセクハラネットワークでの活躍ぶりが語られま した。セクハラ被害者の声を一つ一つ嫌な顔を決してせずに受け止めてあげた和子さんの姿が 紹介され、「和子さんは本当にやさしい人だった」と述べられました。気丈にして冷静な牟田さ んが、涙をこらえて語る姿は私にとって感動的でありました。

 松本澄子さんからは、和子さんを講師に招いてドメスティック・バイオレンスについての例会 を開いた思い出が語られました。自らの体験から女性たちの共有の問題として議論を深めてい く経験をともにできたことへの感謝が述べられました。「私も馬鹿だったわよね。殴られていて もそのときは全然相手が悪いって思わなかったのよね。自分がいたらないからだって思って。」 と和子さんが語っていた日のことを思い出しました。語ることが気づきとなることを、和子さ んは誰よりも知っていたのだと思います。(でも、和子さんて自分が大変な目に会っていても、 なんだか瓢々としていたっけね。)

 船橋邦子さんは、和子さんとは古くからの女性学の同志でしたが、和子さんの自分のやるべ きことを必死にやりぬく生き様を振り返り、自らのやりたいこと=やるべきこととして、政治 に女性の声を届かせるべく、今度の参議院選挙に出馬するつもりであると、遺影の前に報告さ れました。満場のやんやの拍手!

 姫岡とし子さんの司会もすばらしく、「この中には和子さんに迷惑をかけられた方々も多か ったと思うのですけれど」なんてセリフをさりげなくいれられて、思い当たる方は爆笑してし まいました。しめっぽくない、かたくるしくない、でもみなが和子さんの思い出を共有し、み なが和子さんを喪失したつらさを共有し、みながそれでも和子さんを忘れずそれぞれの道をす すめていける、そんな勇気を与えてくれた会でした。絶賛!

 こんなすばらしい会が開催されるなんて、やっばり和子さん、あなたの人徳ですね。困らさ れたり困らしたり、けんかしたりもめたりしながら、それでもみなに愛され、惜しまれる。わ たしもそんなすばらしい人生を作り上げるため精進しようと思った一日でした。