VOW特集 「渡辺和子さんを偲んで」


No.218 (2001.2.5) から

渡辺和子さんを偲んで


横川寿美子

 

 渡辺和子さんが亡くなってから約1カ月が過ぎたが、この間ず っと胸の奥がシンとするような思いがしている。

 私は渡辺さんとそれほど親しかったわけではない。数年前に渡 辺さんが「女性学年報」の編集委員を退かれてからは、年に数回 何かの会で顔を合わせ、あとは年に1、2度電話で話をする程度 のおつき合いだった。

 電話はかける時ももらう時もいつもせっぱ詰まった感じで、い きなり「ねえ、どうしましょう」「ちょっと助けて」というとこ ろから始まった。私としては、渡辺さんはとても忙しい人なので 、久しぶりの挨拶などで時間をつぶしては申し訳ない気さえして いたのだが、結局は、気がつくとぐずぐずと雑談をしてしまって いた。というより、渡辺さんと話していると、いつの間にか話の ポイントがぐるぐる渦を巻きながら外へ外へと広がっていくよう で、それが何やら心地よいのだった。

 訃報に接した夜、そうしたいくつかの電話のことを思い出して いた。何年か前までは研究上の相談だったりもした用件が、最近 は出口のないような気の重いものばかりになってしまっていた。 渡辺さんがここ数年で以前にもまして多忙になられ、同時に公私 ともに多くの心労を抱えられたことにあらためて思い至った。そ れでも渡辺さんの話しぶりは最後まで少しも忙しそうにはならな かったし、私は話し終えると少し楽しくなることができた。

 渡辺さんは、良い意味でとりとめのない、強さと大きさを持っ た人だった。ご冥福をお祈りします、としか言えないことが、残 念でならない。