VOW特集 「渡辺和子さんを偲んで」


No.218 (2001.2.5) から

時々思い出しては悲しい理由


P

 

 わたしが渡辺さんと初めて会ったのは、わたしがオーガナイザ ーをつとめた関西での初めてのレズビアン・ウィークエンドとい うイベントでだった。渡辺さんはどこからか情報を得て、来てく れた。友だちと一緒に。渡辺さんとその友だちは、その集まりで カップルと間違えられたらしく、そのことをさもおかしそうに話 しているのを聞いて、わたしはあまりいい気がしなかった。ひど く無神経な発言だと感じた。外から眺められているような、対象 にされているような、そんな気がした。でも、そのことは誰にも 言わなかった。

 それから十年以上が過ぎた。わたしは今、同じようなことを言 われても、悪く取らないだろう。自分のあり方に自信を得たから 。世の中が変わったから。自分も誰かを対象にしていることに気 が付いたから。
 今、同じようなことを言われたら、わたしは「ちょっと、それ って失礼じゃないの?対象にされているみたいに感じるけど。」 と言うだろうと思う。渡辺さんをよく知るようになったから。

 出会ってから、そんな風に近くなった。だから逝ってしまった のが悲しい。今、彼女がどういう風に言うのか、わたしにはわか らない。そんなことは言わないかもしれないし、言うかもしれな い。ただ、わかっているのは、わたしが言い返せるようになった ということ。それがなくなってしまったから。だから、悲しい。