VOW特集 「渡辺和子さんを偲んで」


No.218 (2001.2.5) から

渡辺和子さんはもういない!


中西豊子

 

 深夜に電話のベルが鳴る。「こんな時間は和子さんかな」と思 いながら受話器を取ると必ず彼女だった。「もう寝てた?」「寝 てても電話で起こされたんやないの」なんてやり取りから始まって 、延々と話は続き何の用で掛けて来たのか判らなくなって二人と も「では眠いからもう寝るわ」で終る。不思議な人だった。思っ たら行動に移し、あっという間に活動やネットワークを立ち上げ ていた。和子さんの一番いいところは、疑わないまっしぐらなと ころだった。それだけに度々トラブルも起こしていたけれど、彼 女を誰も憎めない。色々あっても考えてみたら皆あの純な心を愛 していたのだ。

 和子さんは、世界中に友人を持っていて早くから情報通だったが 、彼女の一言が、我がウイメンズブックストア開設のきっかけと なった。
 「アメリカやイギリスなんかじゃフェミニ ストの本屋があって、そこが女たちの拠点のようになってんのよ。日本にも 出来たらいいのにねえ。」本屋を始めて8年を過ぎた頃だった私は 、それこそ私の仕事だと身を乗り出していた。それが日本初の女 の本屋の始まりだった。彼女との出会いがなければ、あんなに早 くウイメンズブックストアは誕生していなかった。

 その後、マイッチングマチコ先生に抗議する会から始まって、 実に様々な数え切れない運動を共にしてきた同志だった。いつも 明るく元気いっぱいの彼女がこんなに早く逝ってしまうなんて!

 深夜の電話がふとかかってきそうな気がして、あ、もう帰って こないと改めて実感する。和子さんはもういない!
 友人を失う のはなんと辛いことだろう。でも彼女は案外シラーっとあの世で 「きたわよー」なんて先輩に挨拶してるかも。ご冥福を祈るばか りだ。

   

(ウイメンズブックストア松香堂書店 代表取締役)