1998.11 報告
1998.11 例会
「わたしからフェミニズム」発刊記念シンポジウム&バースパーティー
ノラの方舟 〜フェミニズムの未来戦略〜
報告 part2
NPOとフェミニズム
森 綾子さん
- NPO( Non Profit Organization )とは何か?
みなさんこんにちは森でございます。私は「女と墓」という意識調査をしまして、8号と9号の年報に書きました。その頃に日本女性学研究会に入ったのですが、その5年ぐらい前からボランティアをしていました。子育てが一段落した時に、働くか何かしたいなと思って、働くのがだめだったら社会参加ということで、ボランティアを始めたのです。あの頃は、カルチャーセンタージプシーといわれる人が出てきて、ボランティアもそうなんですけれども、次々と手話やったり、点訳をやったり、朗読をやったり、ぶらぶら、ぶらぶらする人がいっぱいいる中で、私は1つのことを10年間は続けて、それから結論を出そうと思っていました。10年経ってやっぱり結果は出ました。ちょっと講師をしたり、点訳を教えたりもできようになって、それから社会福祉協議会のボランティアセンターにコーディネーターとして就職しました。お金になっていくということで、この頃から人生が変わったなあと思います。ちょうど「女と墓」の調査結果を論文に書いたこともあって、講演の仕事もたくさん入ってきました。
ボランティアコーディネーターというのは、ボランティアをしたい人と、して欲しい人を結び付ける仕事なんですが、日本にない仕事なので、改良に改良を重ねてすることが山ほどありました。社会福祉協議会は福祉ばっかりだったので、福祉以外のボランティアも育てたいと思って、新しく別のボランティアセンターを作ってみたり、いろんな事をしました。中西さんと同じような高齢者の問題を考える会というのも作りました。
こんなことをしているうちに震災がありまして、私も大変な目に遭いました。でもたまたま4日前に宝塚の中山から豊中に引っ越していたので全壊は免れました。引っ越した次の次の日に新年会をしていて、翌朝出勤しようかなと思ったら、大地震だったんです。
社会福祉協議会は社会福祉法人で、社会福祉事業法という法律に絡めとられていますから、ほとんど行政みたいなもので、あまり自由なことができないんです。ボランティアがやりたいことがやれないということがわかりまして、民間のボランティアセンターを作りたいとその時からひそかに思っていました。大きな地震の後で、私自身も気持ち的にもなえていましたので、なかなか立ち上がれなかったのですが、3年かかってやっと今年の4月に市民が立ち上げる、市民のためのセンターということで設立できました。この時に上野千鶴子さんがフォーラムに講演に来て下さいまして、本間正明先生と、上野さんに、別々に喋ってもらって「NPOの可能性」という本にしました。
- 日本女性学研究会はNPO
私はこの会に入って、トップを置かないということを学びました。口を出す者は、手も体もお金も出す。総会もしないし、いろんなことが毎月の運営会に参加された方で決まっていく。そういうやり方をすごく新鮮に感じました。今私は宝塚NPOセンターでそれを実践しています。口だけの人はもういらない。言うた人は自分がやるんだということで、運営にかかわってもらっています。だから私は日本女性学研究会はNPOなんだと思います。みんなの会費を持ちよってやっていく。よくつぶれないで今まで続いたなぁと思います。これから戦略として研究会をどういうふうにしていくか。大きくしていくのか、このままでいくのか、縮小していくのか、3種類あると思うんですが、これがなかなか決断できないだろうなと思いました。
- 宝塚NPOセンターとは
たまたま宝塚で生まれたので宝塚NPOとしたので「宝塚市」とはついていません。あの震災があってから、福祉ボランティアだけではなく、高齢者のボランティアをしている人とか、スポーツのボランティア、文化のボランティア、英語の通訳などいろんなボランティアがネットワークを組んで災害の時に動かせないかなぁということをずっと考えてまして、ボランティアのネットワークセンターを作りたかったんです。それで、市民活動団体のNPOという言葉をとって、宝塚NPOセンターと命名したわけです。本当は宝塚だけではなく、災害の時には阪神間で助け合おうというネットワークなんです。今、全国で30ほどのNPOセンターができているのですが、インターネットでリンクできるような形でつながってまして、年に2、3回NPO同士が全国集会も持っています。昨日東京でNPOの仲間とNPOの法人格の問題についてシンポジウムをしました。NPOセンターとついたら、みんな仲間になっていく。だからネーミングが面白いなと思うんですね。情報交換もしていますし、いろんなことを審議したり政策提言するときは連携してやろうと決めています。
- 市民事業が起業になるわけ
今までボランティア活動というのは主婦の愛とか、無償の労働といわれて、認知されにくかった部分があると思うんです。私もずっとそれが気になってまして、ボランティアを育成していていいんだろうかというのが悩みだったわけですが、育成したおかげで皆さん力を持たれて、市民事業を起業され、オーナーになり、リーダーになられてお金にしていっています。そこがボランティアの養成にかかわっていてよかったなあと思うところです。
長い年月女性は無償でやってましたけれども、その間いろんな勉強をしていました。社会勉強もしましたし、人間関係も学びました。行政がどんなことをやっているかということも学んだんです。足りないことは多々あるかもしれませんけれども普通の男の人よりも知っているかもしれない。とにかく女の人が社長になれるくらいに成長したなというのが震災後の実感です。
私たちも民間のデイサービスハウスを立ち上げまして、1月の始めにNPO法人格の申請に行きます。明日の晩に設立総会をやるんですが、予算書や、貸借対照表、財産目録など、皆さん勉強して作れるようになりました。定款も作りました。男社会だったらそういうことはどこかに頼んでしまうんですが、みんな自分たちで作ったんです。そういう意味では女の人の力というのはすごく大きいなぁと思います。女性が一生懸命やって、男性も一緒にやってくれていますけれども、女の人が起業をしてほしい。福祉だけではなく、これからいろんなところで起業されると思います。
NPOの一番の問題点としては、収益を上げていかないと、行政に100パーセント依存するわけにはいかない。もうけるために働くんじゃないんですが、収益を上げるということがついて回りまして、それが悩みです。私も事務局長になって、何百万円、何千万円というお金のことで苦労するというのが、どういう意味かがやっと分かって、情けないなぁと思っています。本間先生が「NPOの可能性」の中で「企業回りをしてお金をくださいという仕事ほどおぞましい仕事はない」と書いておられます。「おぞましい」ということばにわーっと思ったんですが、なかなかお金をもらうことができなくて本当に「おぞましいなぁ」と、ものすごく自己嫌悪に陥って帰ってくるんです。これだったら大企業の宝塚市株式会社に言おうと思って、市役所へ行きました。そしたら、お金が出そうなんですが、市役所からもらってがんじがらめにならないかと思って。くれると言ったら悩むし、なかったら悩むし、どちらにしても悩むんですね。
今NPO条例という県条例ができていますが、どれくらいNPOに支援するかということがこれから審議されていくんです。助成金申請を出すとお金がもらえる時代がきそうなので、もらってもいいのかもしれないけれど、お金を出しても口は出さないような行政になってほしいということを私は言い続けています。財政の安定というのがこれからは一番必要で、今まではボランティアグループやNGOグループはいろんなところでお金を集めて頑張ってきましたが、1年の半分ぐらいお金集めをしていたらエネルギーがなくなってしまうんです。やっぱりお金をある程度確保できるという方法を取らないとしんどいなと思いました。
- 発展させるか 否か NPOの法人格について
民間デイサービスの方は法人格をとると言いましたが、宝塚NPOセンターについては迷っているんです。財政的に安定できるかどうかわからないと決断がつかないんです。宝塚市はとってもよくて、駅前に場所を貸してくれて、そこを登記してもいいと言ってくれたんです。結構過保護な市で、かまわんといて欲しいんですが、かまってくるんです。それが1つの問題点で仲が良すぎるんです。市民活動をやって、市に対して言っていく人や圧力団体がない。市民団体がNPOセンターを立ち上げると、市も協力したいと言ってくれるのです。法人格はお金の安定がはっきりしてから考えないと。結婚と一緒で、籍を入れてしまったら大変なんじゃないかなぁと思っています。今度は2回目ですから、じっくり考えてから籍を入れさせていただきたいなぁと思っています。