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国際基準で問われた日本の男女平等―マーシャが日本の裁判所に伝えたこと― 正路怜子（ＷＷＮ世話人）

　　ＷＷＮでは大阪府ジャンプ基金をもらって１０月１６日にドーンセンターの１Fで国際シンポジウムを行なった。タイトルは「女性差別撤廃条訳は日本で活かされているか―マーシャが日本の裁判所に伝えたこと」である。パネリストは、女性差別撤廃条約の実施状況を監視している国際的NGOであるＩＷＲＡＷの会長マーシャ・フリーマンさんである。もう一人のパネリストはニューヨークの弁護士資格を持つ長岡麻寿恵弁護士。コーディネーターは宮地光子弁護士。

　彼女とＷＷＮとの出会いは、ネットワーク関西が1997年4月に行なった『世界とつながれポスト北京の女たち』の集会である。その時参加していた宮地光子弁護士が、手を上げてマーシャさんに質問したのである。「大阪で今たくさんの男女賃金差別是正の裁判をしており、ＩＷＲＡＷとしてぜひ支援して欲しい。男女差別は国民の意識に応じてぼちぼち是正したらいい、と日本国政府は言い、是正のための具体的な措置をとろうとしない。せっかく女性差別撤廃条約を批准したのに、何とかこれを活用できないだろうか」と。

　　というわけで、マーシャは住友電工裁判のために意見書を書いてくれ、10月15日には大阪地方裁判所に意見書を提出したのである。

　その要旨は次ぎの通りである。

① 差別は直ちに是正すべきである。差別の禁止を直ちに行なうのは国際条約の常識である。
② 文化を理由として、差別の是正をサボるのは許されない。条約は普遍的なものであって、文化に対しても制約を与えるものである。もし国民の意識が遅れたものであったら、それを変えようと提案する政府でなくてはならない。
③ 差別をなくすための適当な法的措置とその他の措置をとる必要がある。経済が高度に発達し、有能な官僚のいる日本で、差別撤廃のために効果的な措置をとることは容易であろう。
④ コースが違えば差別ではないという国の主張は間違っている。原告たちには選択の自由はなかった。昇給や昇格がたとえ努力義務であっても、会社は誠実に努力したのであろうか。女性を母や妻の役割に押し込めるのは間違っている。
⑤ 過去の差別は問わないと国は言うが、それならいったん女性職に配属されたが最後、訓練も受けられず、昇給もせず、昇格もせず、自己永続的に差別がつづくことになる。条約では差別が発見された時から、是正義務が生じるとしている。
⑥ 実効ある救済措置がなければ、権利は空手形である。

　第2部は会場との討論。「女性差別撤廃条約の選択議定書を、ニューヨークの二〇〇〇年女性会議で署名式をするよう働きかけよう」と国際女性の地位協会の堀口悦子さんが提案、「日本の労働基準法制定のころ、女性は保護の対象であって男女平等という意識はなかった。日本国憲法に14条の男女平等が入ったのも、ベアテ・シロタのおかげ。もっとも、アメリカでもいまだに女性差別撤廃条約が批准できていないし、1964年の公民権法のタイトル7に男女平等が入ったのも全く偶然の結果である。歴史の検証が必要である」　と興味深い話をしたのは福岡大学の林弘子先生。

当日の内容とマーシャの意見書を収録した冊子を1月にまとめる予定なので、興味のある方はWWN（０６－６３５９－３４３４）までご注文下さい。

さて、この意見書を読みながら考えた。日産自動車にはフランスからゴーン氏がきて大リストラの真っ最中。マツダ自動車にはフォードから社長がきて女性の一斉昇格。アメリカ三菱自動車はセクハラでEEOCから訴えられて3400万ドルの支払い。経済の分野では目に見えてグローバリゼーションの波にさらされ、国際基準に合わないものは容赦なく切り捨てられている。

　男女平等だってやる気になればすぐ出来るのにと思ってしまう。たとえば男女平等オンブッドにマーシャを迎えて、国際基準に照らして遅れているものはバッサバッサと切り捨てたらどうだろうか。

　私たちも　《女性問題は人権）》　という言葉にもっと自信をもち、世界の桧舞台で活躍しなくては。二〇〇〇年が飛躍の年でありますよう！