Subject: [reg-easttimor 162] 東ティモールから  No.14
From: Koshida Kiyokazu <koshida@jca.apc.org>
Date: Mon, 22 Jan 2001 16:53:54 +0900 (JST)
Seq: 162

東ティモールから No.14

1月15日(月)
 スタッフ会議。休暇明けのロザさんと児玉さんも参加。もう一度、今年の計画
について説明しなおす。雇用契約書についても、交通事故の責任と賠償について
は、どこの団体も契約書には書いていないと説明する。先週とは違って、みんな
すんなり納得する。おそらく、英語で書いてある契約書をテトゥン語で説明する
時に誤解が生じたのだろう。WFP(世界食料計画)でも、雇用契約をめぐって
労働争議が起きているらしいが、このあたりは何度も時間をかけて話すしかない。
 午後、リキサ県に行く。UNTAETにはあまり人がいない。教育の担当者は、
まだクリスマス休暇から帰って来ていない。こうなると、ほとんどやる気がない、
としか考えられない。ディリに戻って、世界銀行とUNTAET教育部を訪ね、
担当者にプロジェクトの説明をする。世界銀行の担当者(東ティモール人)は、
コーヒーなど出してくれて親切なのだが、12月に出してあるレポートをデータに
入れていなくて、もう一度UNTAETに提出しなおしてくれと言うので、あき
れる。それにしても世界銀行は「白人」と東ティモール人の机の並べ方が露骨に
違っていて、「白人」は個室が与えられているが、東ティモール人は机を並べて
いる仕事をしている。それでも机やコンピュータの立派さはUNTAETの比で
はない。
 世界銀行へ行くと、必ず資料室へ寄ることにしている。ディリでこんなに涼し
くて静かな場所は、他にないだろう。そこにあった資料(『東ティモール人的資
源調査』)によると、東ティモール人で英語が話せる人は2.7%、ポルトガル語が
10.6%、インドネシア語が65.8%、テトゥン語が88.9%だという。これは約7000
人を対象とした調査なので、これが全体を代表するかどうかはわからないが。
 夜、JVC高橋君を交えて食事。

1月16日(火)
 午前中、リキサ県へ行く。教育委員会へ行くと、ちょうどUNTAETのジミー
も来ていたので、そこでもう一度机・椅子のプロジェクトについて説明。草の根
無償がとれたら、できるだけ早く始めようという事になる。場所はリキサにもと
もとあった職業訓練校を使えば良いというので、そこを見に行く。壊れたままで
屋根も窓もないが、かなり広い敷地で資材もおける。この建物は教育委員会の管
理下にあるので、プロジェクト終了後は、設備も含めてそのまま教育委員会へ引
き渡すということにする。
 ディリに戻って、午後はレポートの作成。しかし完成したところで信じられな
いミスを犯し、データを消してしまう。
 夜、SHAREの蜂須賀さん、平岡さん、JVCの清水さん、高橋さんに、P
ARC3人で、La'o Hamutukのパメラさんと一緒に夕食をとる。高橋君念願の
「東ティモールの叶姉妹の店:マウベレ」に行く。とはいっても、ここはパメラ
が指定した場所。仕事熱心な高橋君は、さっそくパメラと話し始めるが、「叶姉
妹」も気になるらしく、横目で動きを追っている。どうも妹さんの方が好みらしい。
 パメラたちの活動は、東ティモールにおける援助のモニタリングと民衆教育。
たしかに去年の7月頃から準備を始めていたが、活動が本格化したのは10月頃
から。テトゥン語と英語でニュースを出し、同じものをメールでも配信している。
ジーン・イングリスさんがこちらにいる時に、La'o Hamutukのことを知らせてく
れていたので、連絡しなければと思っていたが、彼女もPARCのことを知って
いて、前から話したいと思っていたと言う。日本の援助に関する資料を渡すこと
を約束し、日本に帰ってからもメールで連絡を取り合うことにする。彼女として
も、これまで経験のない分野なのでどうやって仕事を進めていいのか不安らしく、
協力のネットワークを広げていきたいらしい。民衆教育についても、ブラジルか
らファシリテーターを呼んでトレーニングをしたらしい。
 食事の後、コーヒーを飲み、みんなでPARCに戻る。ところがついた途端に
停電。平岡さんがダーウィンで買ってきた白ワインを空ける。私はすぐに寝たの
だが、事件はその後に起きた。以下は勝谷君からの聞き取り。 
 仕事熱心なJVC高橋君は、食事にも熱心でレストランで出された魚を骨ごと
食べたらしい。東ティモールを丸ごと味わいたいという熱意の表れだろう。とこ
ろが、その骨がのどにひっかかり、時間がたつにつれ、痛くなってきた。ついに
耐えられなくなり、真夜中に赤十字病院へ。そこで病状(?)を説明したが、出
てきた医者は冷たい態度で、その内とれるだろうといった扱い。しかし仕事熱心
な高橋君は、いかに痛みがひどいかを医者に訴える。医者もついに説得に負けて
「これでも飲んどけ!」とモルヒネを一袋渡した。病院には東ティモール人の子
どももいたが、勝谷君の「魚を食べて、痛くなった」という説明に大笑いしてい
たらしい。

1月17日(水)
 朝、JVCの二人をピックアップしにホテル・ディリへ。高橋君は、夜中に自
力で骨を取ったので、元気回復。NGOフォーラムへ行く。Civic Educationに
ついてのワークショップがあるということだったが、行ってみると選挙について
のレクチャー。UNTAETの選挙担当者が、東ティモールの選挙がどうなるかを説明
するのだが、日程も選挙制度も、正式には何一つ決まっていないということ。た
だし、大きな流れとして、憲法制定議会メンバーの選出、憲法草案の作成、憲法
承認の投票、第1回総選挙、というプロセスは動かせないようだ。ただし、2001年
中の独立を望む声が、東ティモール内に強いので、このプロセスが相当駆け足に
なることも考えられる。おそらく8月30日に、憲法制定議会メンバーの選挙が行な
われることになりそうだが、その数も選挙区も何も決まっていない。UNTAETの資
料も、選挙制度の説明(小選挙区制と比例代表制、選挙区について、など)がほ
とんどで、こうした資料を参考にして、NC(国民評議会)が決定することになっ
ている。
 午後、UNTAETに賃金税の資料を取りに行く。これは日本でいう源泉徴収のよう
なもので雇用者側が賃金から天引きして、支払う仕組みになっている。1月分の給
料から対象になっており、第1回目の支払いは2月15日。月給100ドル以上650ドル
未満の人間は10%が税金という説明だったので高いと思っていたが、よく読む
と、月給170ドルの場合、100ドルまでは無税で、100ドル以上の70ドル分に10%の
税金がかかるので、税金は7ドルということになる。それでも手取り分が減るのだ
から、
不満は高まるだろう。この制度は外国人も対象になるらしいが、UNTAET職員など
は除外されることになっているらしい。
 夕食後、ようやく電気が回復。昨日の夜からほぼ丸1日停電。

1月18日(木)
 午前中は事務所で仕事。SHAREの蜂須賀さんを訪ねて、JICAの伊藤さんが来る。
この事務所に来るのは初めてなので、珍しそうに事務所兼宿舎を眺める。彼女た
ちはホテル(といってもコンテナ・ホテル)住まいなので、こういう一軒家にく
ることはめったにないのだろうな。JICAの英文資料などをお願いしてあったので、
それを頂き、蜂須賀さんとの打ち合わせが終わってからの雑談に加わる。雑談と
言っても、東ティモールに何が残せるのだろうか、などと言ったマジメな話。
 夕方、日本政府連絡事務所の渋田さんを訪ね、草の根無償資金の説明。この事
務所は、いつ行ってもがらんとしている。何しろ職員がまだ二人しかいないのに、
かなり広い家を借りているのだから、全体が応接室のようなもの。
 夜、夕食後に停電。早めに寝る。
 
1月19日(金)
 午前中はスタッフ会議。一番の焦点は、賃金税。インドネシア時代は、賃金の
2%ぐらいが税金として取られていた、と言う。今回は、それより高くなるし、税
金を集めるETTA(東ティモール暫定政府)自体の情報が公開されていない。とい
うような議論をした後で、PARCとしては、しばらく様子を見て、他のNGOがどうす
るかを調査する、ということにする。来週の会議で結論を出すことにする。とに
かく手取り分が減ることになるのだから、みんなにとっては切実な問題。しかし、
税金を払わないまま、という訳にも行かないだろう。PARCの賃金は、他のNGOと比
べてもやや高めなのだから。
 午後は、政府連絡事務所に行って資料を入手したあと、La'o Hamutuk に行く。
スタッフのパメーラとゆっくり話をする。PARCの活動を説明した後、東ティモー
ルで考えている活動について話をする。とくに世界銀行やIMFの動きについては、
キチンと分析した方がいいという点で一致。世銀はオープンなのだが、問題は
IMF。彼女たちは、IMFの事務所がどこにあるかを調べるだけで1週間かかったと言
う。しかも資料はほとんど出さない。というような話をしていたら、アデリート
君も登場。彼はLa'o Hamutukの理事なのだ。東ティモール大学で「社会政治経済
学」を教え始めたらしく、そこを突破口に大学の授業を変えたいという。
 二人とも、もっとアジアとのネットワークを強めたいと言う。僕も、この点に
ついては大賛成。PARCとしても強い分野なので、これから協力していこう、と話
す。
 夜、ママさんレストランで食事。鈴木氏を招いて、一応送別会。UNTAETの高橋
さん、新垣さんもいたので、あいさつする。帰りがけ、JICA伊藤さんも来る。

 という訳で、明日は東京へ帰ります。この「日記」もとりあえず、今回でおし
まいにします。長いものを勝手に送りつけて申し訳ありませんでした。では、ま
た。

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