山形県広域水道の抜本的な見直しについての請願
「請願の趣旨」
山形県内の平均水道料金は10立方メートルあたり2081.8円と、全国平均が1446.2円に対し47都道府県中で最も高い水となっている事実は、新聞報道などでことに知られるところとなりました。
このような高水道料金の理由は、この約30年間に県内ほぼ全域にわたって整備されてきた広域水道事業が原因であると言えます。この対策として12年度、山形県では、村山広域水道、置賜広域水道から各市町村への受水費を平均20パーセント引き下げる措置が12年度県予算案に示されています。現在、広域水道から受水する市町村のうち、新庄市、村山市など7事業体は、その負担を住民の水道料金では賄いきれず、国の高料金対策として補助金を受け取っているにもかかわらず全国一の料金水準で、また、この補助金を受け続けるために、県が値下げしても結果的に末端の水道料金では値下げができない状況となっています。
さらに現在進行している庄内広域水道計画の受水が開始されますと、山形県の平均水道料金はさらにつり上がり、不名誉の上塗りとなることは明らかであります。山河に恵まれた県土ながらも水道料金全国一を不動のものとし、家計を直撃する「くらしにくさ」を全国にアピールするようなものです。
以上のような実態をしっかりと認識し、県広域水道事業の抜本的な見直しを求めます。
1、 社会情勢の変化にともなう水需要に応じ、水道受益者である住民の主権を念頭においた、水道政策の抜本的な見直しをはかること。
県の広域水道事業計画は、高度成長時の伸びを前提とした「山形県水道整備基本構想」に基づいており、庄内南部でも現時点ですでに過大見積りとなっている。鶴岡市を例にとると、ここ数年一日平均給水量4万2千トン、一日最大給水量約5万1千トンの実績なのに対し、受水契約水量は7万2千602トンと、現状最大で2万トン以上も上回っている。21世紀初頭、少子高齢化による人口減少が進行することが全国的に予測されることから、さらに水需要とのズレが生じる。また、受水契約が、責任水量制によって、末端の水需要に関係なく一定の料金が設定されているため、水道料金のさらなる高騰、自治体水道の経営破綻などの危険性をはらんでいる。このような責任水量制を従量制にするなどの、抜本的な見直しを求める。 富山県では、熊野川ダムの場合、富山市など6市町村への利水目的を含む多目的ダム(県営)として完成したにもかかわらず、水需要予測が大幅にずれ、自己水源が豊富なため、ダムからの給水を見合わせている。先ず水道受益者である住民の主権を念頭に置き、水需要の推移の現状に合わせた水道行政に転換することを求める。特に自己水源としての地下水が依然豊富な庄内南部については、広域水道移行時期の再検討を要望する。
2、水道水質の保全をはかるため、地下水源の質的価値を再確認し、安全で おいしい水が供給可能な、緩速濾過方式の浄水場の検討をはかること。
地下水は、「清浄・低廉」な水道原水として最良のものととらえられている。庄内南部地域では、羽黒町や鶴岡市で使用している水道原水とほぼ同水源の地下水を加熱殺菌しただけの水をナチュラル・ミネラルォーターとしてペットボトルにいれ販売している業者もある。これに対し、月山ダムの表流水の利用には、急速濾過方式を採用しているため、有機物を多く含む河川表流水の中の有機物と塩素が化合し、トリハロメタンなど多種類の発ガン性物質が生成されることを防ぐことができない。又、浄水過程で大量に投入される凝集材PAC(ポリ塩化アルミニウム)の水道水中への残留の可能性が大きくなる点。結果として健康阻害のリスクの高い「質のおちる」水になることは明らかである。そうした水質の低下は、大都市のほとんどの市民が、飲料水をミネラルウォーターや高額の浄水器を使用している現在、市民の安全感覚からすれば住民サービスの大きな低下としてとらえられる。県の事業がむしろ県民へのサービス低下をひきおこしかねない。地下水源の再認識と有効活用、水質低下を抑えクリプトスポリジウム対策としても有効な緩速濾過方式の浄水場の採用を要望する。
3、県民に対し、水道施設負担額の増加などの納得のいく説明をおこなうこと。
庄内南部広域水道事業計画が、昭和55年、市議会で同意決議された当時、ダムの建設費用は780億円、広域水道事業の総事業費は230億円だった。現在、ダムの建設費用1780億円、広域水道事業の総事業費が510億円に膨張している。水道料金に影響する事業費増加の理由とその負担について、住民に対して納得のいく説明を求める。
以上、地方自治法124条の規定により、請願いたします。
平成12年2月 29日
請願者
ウォーターワッチ・ネットワーク
代表 草島進一
住所 山形県鶴岡市本町1-5-13
電話 0235-28-3338
山形県議会議長 石垣 潔殿
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