「足るを知る」話
−鶴岡市水道の地下水源を守るために−
環境カウンセラー 桑原 英夫
1980年9月に、鶴岡市議会が承認した「庄内地域広域的水道整備計画」は、「目標年度昭和80年」の鶴岡市の計画給水人口は115,420人、計画1日最大給水量は82,602
m3として立てられています。82,602 m3のうち、10,000 m3は既存の地下水源で賄い、残り72,602 m3を赤川ダムに頼るというものです。
その後、「社会経済動向の変化に対応し、給水人口、給水量などを全面的に見直す」として、1985年に「計画変更」が行われました。その内容は、数字がゴチャゴチャといじられていて、私には十分に理解できません。分かったのは、「赤川」から「月山」へダムの名前が変わったこと、しかし、ダムに頼る水量は変わっていないことです。まさに、「始めにダムありき」なのです。
その後とも、どこがどうなっているのか、数字的のことはよく分かりませんが、一昨年の水道料金の値上げを前にした『広報つるおか(1998.6.1)』に、「今の広域水道の計画では、鶴岡市が広域水道から受水する水を平成22年で1日最大72,602
m3、1日平均50,821 m3と予想しています」とあります。また、1996年から始まった鶴岡市水道の「第4期拡張事業」の「目標年度平成22年」での数字は、計画給水人口106,400人、計画1日最大給水量72,700
m3となっています。そして、「地下水」は、どこに消えたか、潜ったか、分かりません。
ところで、鶴岡市水道の給水人口は、1990年代に入って完全に横ばいです。給水量も、ほぼ横ばいですが、1994〜96年ころをピークにして、減少傾向が現れてきました。
先に挙げた、『広報つるおか』所載の数字、「1日最大72,602 m3、1日平均50,821 m3」を1人1日給水量に換算すると、2010年に、給水人口が計画通り106,400人に増えたとしても、最大給水量682l、平均給水量478lです。現在のままならば、最大726l、平均508lです。人口が減少すれば、さらに多くなります。こんなにたくさんの水が要るのでしょうか。
昔、「水道の使用量は文化のバロメーター」という言葉がありました。この度、『平成9年度水道統計』を調べて驚きました。鶴岡市の1人1日当たりの給水量が、東京都のそれを上回っているのです。平均給水量でいえば、鶴岡市428l、東京都415lです。先の言葉に従えば、鶴岡市民の文化度は東京都民のそれを抜いているのです。
でも、何か空しい気がしませんか。「消費は美徳」という時代は終わったのです。今や、量より質が問われる時代なのです。
20年余り前から「渇水都市」の名で呼ばれる福岡市の市民は、306lの水で九州一の大都会を支えています。
早くから「村山広域水道」からの給水を受け、県内で一番高い水道料金を払わせられている村山市民は、312lで暮らしています。
さらに、東京都営水道への移行を拒み、鶴岡市と同じように「100%地下水」を守っている東京都昭島市(人口10万8千人)は、372lで「おいしい水」を誇っています。
鶴岡市民にも、できないわけがありません。現在の水道使用量を少し減らすこと。それが、掛け替えのない「おいしい地下水」を守る第一の要件です。
いま、鶴岡市民にとって必要なことは「足るを知る」ことです。