1、月山炎のまつり 企画趣旨
--庄内地方でお盆になるとおこなわれていた 忘れてしまった神事(送り火と迎え火)の再生--
出羽三山は、修験道でその名を知られ、神仏習合、神仏共存の神の山々であり、すべてを暖かく迎え、死と再生へといざなうといわれ、全国各地からの信者でにぎわいをみせています。その主峰である月山(1984m)は、今年、卯歳、ご縁年を迎えました。
山全体がご神体であり、月の神、月読命(つくよみのみこと)を祭る「月山」は私たちの先祖が安らかに眠っている祖霊の山でもあります。
毎年お盆になると、月山頂上では柴燈祭(さいとうさい)がおこなわれています。そして、近年までは、盆の13日、「おしょれ様(精霊様)」といって、庄内の平地に住む村人は、川のそばに立ち月山の側を向き、茅などに火をつけたものを手に持って円を描くようにして振り、「おしょれ様、おしょれ様」といって火とともに精霊を呼んでいました。そして、この火を各家庭の祭壇に迎え入れ、3日間家族とともにすごして15日には、月山へ、また、精霊流しとして水辺に流す、そうした祭儀があったと聞いております。
この祭儀は、日本人の心の文化として伝えられてきたものですが、残念なことに現在、これは忘れられている現状があります。「せっかく灯す送り火を、迎える家庭がない」その祭儀を我々人間と、神なる自然とをつなぎ直すためにも復活させたい。月山に眠る祖霊を一同に迎えて、共に和みの儀式をしたい。そんなところからこの「月山炎のまつり」の構想があります。
本来死と再生のお祭りをおこなうお盆に、この月山の地で柴灯祭からの火とともに祖霊を迎え、祈り、祖霊と心から踊る。そうした祭りを現代を生きる私たちの音、踊りとともに復活させ、私たちの心を開きたい。そして本来、密接に神なる自然とつながっていた我々日本人のスピリットを再確認し、そしてまた、自然や世界との共生、平和という新たなる私たちの指針をもって、新たなる生を受けて、21世紀につなげたいと考えています。
なお、「月山炎のまつり」は、一過性の興業イベントでも行政主導型のまつりではありません。月山を祭る志をもつ地元、庄内人が、全国の月山への志のあるアーティストとともに仕掛け、参加者と一体になって、月、月山、そしてそこに眠る祖霊をまつる市民の祭りです。
この祭りは、また昨年被災地神戸でおこなわれた「神戸からの祈り」、鎌倉大仏殿でおこなわれた「東京お開きまつり」、又、今年8月8日に奈良、東大寺でおこなわれる、魂を開く市民の祭りムーブメント「虹の祭り」に呼応しておこなわれるものでもあります。
月山炎のまつりは、今夏をきっかけに、長年にわたっておこなう「現代の神事」としたいと考えております。現代人の心の進化が希求されるこの21世紀の私たちの指針として、聖なる山、月山への思いもって「やる側」に立つ皆様のご協力を期待しております。