- 毎日新聞(夕刊) 1998年2月4日 <憂楽帳>
「ナヌムの家」
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「好きでやったんだろう」
「売春婦!」
「うるさい、最後まで見ろ!
先月14日、東京・中野のBOX東中野で開かれた試写会でとげとげしい、やじが飛んだ。
韓国の元従軍慰安婦たちの現在を追うドキュメンタリー「ナヌムの家・パート2」(ママ)が上映されていた。
やじっていたのは、客席前方に陣取っていた中年の男性2人組だ。会場は騒然となり、収集がつかなくなった。そのとき、会場にいた元慰安婦の女性がすくっと立ち上がって、身の上話を始めた。
日本軍に連行される前からもつらい暮らしだったこと。父親は酒乱で、よそに女性がいて母親を顧みなかったこと。たまに帰宅すると子供たちに暴力をふるったこと…。
場内は水を打ったように静まりかえった。さて、くだんの男性はというと。なんと、体をがたがたと震わせているではないか。
「もういい、帰るぞ」
そのひとは精いっぱいの強がりを吐いて、会場を出ていった。
友人が「ちょっと感動的でね」と教えてくれた。「ナヌムの家」(パート1、2)
(ママ)の劇場公開は今月14日から。
【佐藤由紀】