毎日新聞社御中

「憂楽帳」の虚報を考える会

申入書
1998年4月16日

 毎日新聞が日頃から人権に配慮し、正確な報道に尽力されていることに敬意を表します。
 しかし貴紙は、去る2月4日付夕刊の「憂楽帳」に事実事項が皆無である記事を掲載しました。これは、貴紙に対する私たちの信頼と期待を根底から揺るがして余りあるものでした。
 さらに貴紙は、記事への抗議を受け、翌日夕刊に「訂正」を掲載しましたが、その内容は新たな虚偽を重ねるものでした。そのため、貴紙に対する私たちの失望と不信は、日々の報道姿勢全般への深い疑いにまで広がっていきました。
 また、くだんの記事が元日本軍「慰安婦」女性に関する事実を歪曲することで、被害当事者に対する歪んだイメージを捏造しているという点も指摘せざるをえません。このことは、貴紙が日本軍「慰安婦」問題に関し、公正かつ意欲的な報道に努めていると理解していた読者への背信ではなかったでしょうか。
 私たちは「公器」である貴紙が、何百万部もの単位でこれら誤った情報を流しながらも、読者に対して真摯に向き合おうとしなかったこれまでの姿勢に、強い怒りを覚えます。

 以上のような立場から、私たちはメディアのあるべき姿を問うという趣旨の基に、以下の内容を申入れます。読者への信頼を回復するべく、貴社が報道機関としての誇りある誠実な対応をしてくださるよう、強く期待するものです。

<事実確認>
 貴社に、以下の事実を認めるよう申し入れます。
(1)1998年2月4日夕刊「憂楽帳」掲載の「ナヌムの家」と題するコラムは、すべて事実 無根である。
(2)映画「ナヌムの家」「ナヌムの家U」いずれの作品にも、記事に書かれたような身の上話やそれに類似する話はないことから、翌2月5日夕刊の「訂正」は、新たな虚偽を含んでいる。

<要求事項>
 上記の二つの記事掲載に関連し、(2)までの事実確認を前提として、貴社に以下の事柄を求めます。
(3)なぜ、どのように「ナヌムの家」の記事が書かれたのか、また「訂正」の記事を書くにあたって、毎日新聞社および執筆記者はどのような事実関係の再調査をしたのかについて、明らかにすること。
(4)これまで貴社は、(1)(2)に責任を負うべき社内関係者にどのような対応をしたのか、掲載記事が与えた社会的影響をどのように認識しているのか、またそれらに基づき、同じような事態の再発防止や読者への信頼回復のため、どのような行動を示すのかについて、明らかにすること。
(5)報道機関としての貴社と読者の関係は紙面を通して結ばれているという事実を踏まえ、上記の<事実確認>および<要求事項>に対し、紙面で応えること。

 以上への対応について、4月30日までに予め書面をもって回答されるよう申し入れます。

「憂楽帳」の虚報を考える会
FAX : 03-5684-0484
E-mail :med-eth@jca.ax.apc.org