政治が悪いから投票率が下がる!?

安藤雅樹


 編集後記で選挙のことを書いた。選挙の話をもう一つ。

 選挙の前になるといつでも投票率のことが話題になる。その時にいつも知識人が言うことがこれである、「政治が悪いから投票率が下がる」。

 僕はこの言葉を聞くたびにすごく嫌な気分になる。確かに今の政治では誰が国会に行っても同じかもしれない。どうせ政治家を選んでも公約を守らないかもしれない。だからみんな嫌気が差して投票に行かないのかもしれない。でも、この「政治が悪いから投票に行かない」という言葉は、有権者の責任を他に転嫁する言葉以外のなにものでもないと思う。

 投票に行かないのは、政治家が悪いのではなく、有権者が、国民が悪いのである。そうはっきり言ったほうがいい。知識人は心の中ではそう思っているに違いない。なぜなら投票に行かないのは絶対に第1次的には国民が悪いからである(理由になっていないが、これは自明の理のように僕には思える)。もしかしたら論者の人はこの自明の理は言ってもしょうがないから、2次的な策として「政治が悪い」と言っているのだろうか。そうだとしたら、それは逆効果である。そのようなことを言っていたら、ますます投票に行かない人を正当化する事になってしまう。

 一部には、投票に行かない人には罰金や選挙権停止などの処置を採る国もあるという。このようになってしまったら最悪である。本当の「義務」になってしまう。そうではなく自主的に行く、という心の持ちようが大切ではないだろうか。

 今回の参議院選挙では「選挙に行こう勢!」という作家の石川好さんなどの有名人を中心とした投票に行くことを呼びかけるグループがテレビなどのマスコミで広く取り上げられていた。もちろん、本当に少しは投票率アップに貢献したのかもしれないが、このグループが自分たちのおかげで投票率が上がった、というようなニュアンスのことを言っている(僕がそう感じただけなのかもしれないが)のを聞いてすごく嫌な気分になった。別にあなた方のおかげで投票率が上がったわけではないでしょ。実際前回の参議院選挙の時に同じ活動をしていれば44%の投票率をぐっと上げられた、と思うの?ということを聞きたくなった。

 これもある意味では「政治が悪いから国民が投票に行かない」と同じような展開である。つまり、僕は「国民が投票に行く、行かない」ということをその人の心情、もっといえば責任問題以外の部分にかけてほしくないのである。国民が投票に行かないということはその人の責任なのであって、政治の責任ではない。国民が投票に行くということはその人の責任でもって行くのであって、どこかの団体が広く呼びかけたから行くのではない。すべては国民自身の責任なのである。

 最後にこれだけは言いたいこと。「投票に行かないのは、政治が悪いからではない。その人が悪いのである。」テレビに出ている論者の人はこう言い切ってほしい。

 

 

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