京大ユニセフクラブ2002年度11月祭研究発表
「水家族」
3 海洋と炭素
第3章 みずから見た地球(文責:大部)
3−1海洋と地球温暖化
2で述べたような温暖化の検証は広い様々な分野で行われています。研究者のなかには、地球の歴史から周期でこうなるのであり、地球温暖化は起きていないという人もいます。
しかし、起こっているのは事実であるというのが現在は一般的です。しかし、起こっているものと考えても地球規模で起こっている事に人為的に何かをして必ずしも成功が得られるといわれるよい案はないのです。大気中の二酸化炭素をうまく循環させるための対策としては温室効果ガス、とりわけ量の多い二酸化炭素排出量の削減が提案され一部で実施されています。これは京都議定書などでご存知でしょう。京都議定書などの国際会議など政治的なことから各家庭レベル、民間レベルで行われているものまであります。もうひとつは、二酸化炭素をうまく循環させようという試みです。これにはクリーンエネルギーの開発と、炭素の固定があるように思われます。森林が成長する時に多くの二酸化炭素を固定すつことから森林を切って新たに植えようという案や、砂漠に木を植えようという試みもなされています。今回は水から地球温暖化を考えているので、海洋に係わる炭素の固定について調べてみました。
3−2炭素循環
地球温暖化の原因にも色々あるが、50%は二酸化炭素の問題といわれています。
自然界に存在する炭素は各種の経路を通って循環しています。すなわち植物は大気中の二酸化炭素と水から光合成によって炭水化合物などを作ります。動物はこの炭水化合物等を取り込んで消化、吸収して分解し、さらに死んでからはバクテリアなどの作用全て分解されて二酸化炭素などとなって大気中に戻ります。あるいは生物体が石油・石炭などの化石燃料や石炭などにより、燃焼その他によって大気中に移行します。
3−3炭素固定
固定とは組織や生物などをできるだけ生時の状態のまま保つ処理のことです。顕微鏡で観察する標本を作る際に使われる方法です。大気中の二酸化炭素の増加を抑えるための対策として二酸化炭素の固定は、光合成や日常的に消費されるドライアイス等のように短期間に再び大気中に放出されるような一時的な固定では効果がありません。分解されずに還元状態のまま保存される泥炭や深海水のように用意に大気中には戻らないようにする必要があります。
3−4海底に沈める
二酸化炭素の循環をうまくするための案が世界中で研究されています。そのひとつとして、ノルウェー沖の海流を利用して二酸化炭素を海底に沈めるというのがあります。沈めておけば上昇してくるのは何千年か先なのでここ百年は大丈夫だということだそうです。具体的には二酸化炭素を液化します。二酸化炭素は20度で60気圧に圧縮すれば液体になります。これを600メートル以上の深海に入れれば気化することが無いといわれています。そして、回収した二酸化炭素は液化か固体化することで貯蔵、運搬が可能になるだろということです。それから、1気圧では一気にマイナス86度まで下げなければ固体化(ドライアイスにする事)はできず、膨大なエネルギーがいります。液化ならその点少しのエネルギーで間に合うということです。
液化二酸化炭素の比重は水より重いのでエネルギーを使って押し込まなくても、断熱パイプを海に突っ込んでおけば自然に沈んでいきます。600メートルより深い60気圧以上あれば二酸化炭素は気化しない状態となり、3000メートル以上深くなれば液化二酸化炭素の比重は海水より重くなって浮いてこなくなるといわれています。しかし、周辺環境への影響はまだはっきりしていません。
3800m以上の深さでは液化二酸化炭素と海水とが接する部分に二酸化炭素ハイバレートと呼ばれる安定した隔離層が形成されます。ここでは、二酸化炭素の海水への溶解・拡散速度は極端に遅くなると考えられています。深海からの上昇流はせいぜい一年に2mなので溶解二酸化炭素が再び海面にでるまで、深さ3000mなら1500年かかるというわけです。
しかし、深海の液化二酸化炭素が、何かの拍子に一気に気泡となる「シャンパン現象」が起こる可能性もあります。シャンパン現象とは二酸化炭素が過飽和の状態となりビールやシャンパンの栓を抜いたように急激な上昇流が発生する現象のことです。シャンパン現象は自然界にも存在し、アフリカ中部の湖ではシャンパン現象で大量の二酸化炭素が噴出して1700人の人命を奪うという事件が起きています。
3−5サンゴによる固定
天然に存在する二酸化炭素の固定には、海洋における有機化学的な固定があります。陸地では炭素の半分が森林で貯蔵されていますが、海洋においては炭素の9割以上が生物の死骸として貯蔵されます。このときいっしょにたまる窒素やリンは海流で流されていきます。この流れの中で二酸化炭素が固定されるともいわれています。
もうひとつ、いわれていることには、サンゴによる固定があります。サンゴは海水中のカルシウムを固定して炭酸カルシウムで体を作っていますが、海水中のカルシウムの起源が風化・溶解した石灰岩であれば、二酸化炭素の収支には影響しません。しかし、サンゴの成長過程で光合成によって固定される二酸化炭素の量のほうが多いならば、サンゴの成長に伴って二酸化炭素が固定されると見なせます。しかし、海水中の二酸化炭素は固定されているものなので、それを個体に析出させたとしても二酸化炭素固定の総量が増えたとはいえません。しかし、サンゴには共生植物が存在し、共生植物は光合成によって生体組織に二酸化炭素を取り組んでいるため、サンゴ礁が在りつづける限り二酸化炭素の固定はおこなわれているということができます。
海藻類の中で、特に渇藻類には巨大なものがあります。渇藻類とはクロロフィルaとcの他に主要な色素としてフコキサンチンを持ち、光合成により可溶性糖類のマントニールとミズナラシをつくります。とくに寒海では種類が多く、また大きな海中林をつくる種類のものもおり、二酸化炭素固定量も多くなっています。
サンゴ自体が何かをするわけではありませんが、海洋資源に与える影響は大きく、地球温暖化を調べる上でも、注目されています。