京大ユニセフクラブ2000年度11月祭研究発表
「私たちのお金がこわす途上国の暮らし」
コラム 多国間開発銀行(Multilateral Development Bank)って何だ?
ODA入門、といったときにはよく「ODAには二国間援助と多国間援助がありますよ」という説明がある。このパンフもご多分にもれず最初はそんな説明が載っている。二国間援助、というのはわかりやすい。例えば日本政府から直接フィリピン政府にわたる援助のことである。では、もうひとつの「多国間援助」というのは一体なんだろう?
「わかりにくいからいいや。どうせ大した額でもないんでしょう?」そして一瞬だけ頭のなかに浮かんだその疑問はもはや光を当てられることもなく消えていく…。いや、ちょっ、ちょっと待ってほしい。やはり消えていってしまってはまずいのではないだろうか?ODAといわれているお金のうち多国間援助にあたるものは2割弱を占める。これだってODAの仲間にちゃんと入れて考えてほしい。
というわけで多国間援助≠セ。
大きく分けて・国連などの機関へ出すお金(UNICEF、UNESCO、WHOなど)
・多国間開発銀行などへ出すお金(世界銀行、アジア開発銀行など)上はいいだろう、なんとなくイメージくらいはわく。が、下はどうだろう?世界銀行?アジア開発銀行?他にもアフリカ開発銀行、米州開発銀行・・と銀行のオンパレードだ。
これらは日銀の仲間ではないし、さくら銀行や三菱銀行ともやはりちょっと違う。何が違うか?お金を貸していることは同じなのだが、途上国の経済開発≠フための融資を行うのが主目的なのだ。だから低利で長期間、しかも無担保で貸し出しをする。途上国はそのお金で道路を整備したり橋やダムをつくったりかんがい設備を整えたりする。う〜ん、なんてすばらしい援助機関なんだ!??
ところがそうも言っていられない!
なぜか?
まず、やはり円借款の場合と同じように問題プロジェクトも多い。世界銀行融資のタイのパク・ムーンダムではダムによって甚大な漁業被害が出た。 インドのナルマダ・ダムは反対運動の結果一時中断されている。こんな問題もある。世界銀行(やIMF)のプログラムによって失業者が増え、病院が閉鎖され、小農民の暮らしが立ちゆかなくなっている、といったら驚かれるだろうか? このプログラムは構造調整プログラム(SAPs)という。融資する際の条件として、あるいは融資した資金を返せなくなった国々に対して強制するものだ。要するにお金を返せるように経済の仕組みから変えてやろうというもので、福祉・教育予算のカット、貿易の自由化、国営企業の民営化、公務員のリストラなどあらゆる方面にわたるプログラムがセットでやってくる。つまりは市場原理を導入して経済の健全化を図ろうというものなのだ。ところがこのプログラム、途上国では諸悪の根源≠ニさえ呼ばれたりする。ここまで極端ないい方をされるのはこのプログラムがもっとも弱い人に一番のしわよせをもたらすからだ。
2000年5月に行われたアジア開発銀行(ADB)総会でのデモで農漁民が怒りの声を上げた。ADB BAD∞ADBローンを止めろ!≠ニいった文字がおどる。ADBは世界銀行のアジア地域版のようなもので、日本が最大の出資国。総裁も大蔵省から出ている。
(タイ、チェンマイにて)また世界銀行は最近貧困削減≠モットーに掲げているが、世界銀行はあくまでも銀行=お金を貸して返してもらうところ、という性格を持つ機関だ。できることには限界がある。農村女性に小規模融資を行うプロジェクトで、世銀から借りたお金を返すために高利貸しにお金を借りるといった悪循環も実際に起きている。
ADB=アジア開発銀行総会でのデモ(本文とは関係ありません)
そんなわけで世界銀行1994年9月に行われた世界銀行50周年の総会では50 year is enough!(50年でもうたくさん)≠フスローガンのもとたくさんの人が集まって抗議活動が行われた。♪Unhappy birthday to you!♪という替え歌も歌われたという。お誕生日はおめでたくない、というわけだ。その世界銀行に日本はアメリカについで2位という巨額のお金を出資している。アジア開発銀行(ADB)ではなんと2割を出資して堂々の1位だ。当然発言力だって強い。(世銀には常任理事を出している。ADBの総裁は日本人。)
(京大農3 角田 望)