京大ユニセフクラブ2000年度11月祭研究発表
「私たちのお金がこわす途上国の暮らし」

どんなODAがあるの?


まず、冊子の最初の方にも出てきた下の図を見てください。

図を見ての通り、ODAはまず二国間援助多国間援助に分かれます。

二国間援助は名前の通り、援助する国と援助してもらう途上国、の二つの国の間で行われる援助で、この二つの国の政府が話し合って援助が決定されます。二国間援助の場合、援助国の側に委ねられる決定事項の範囲は広く、援助国は自分の国の利益を優先した決定をしがちです。だから援助をするにあたって途上国に不利になるような問題あるケースが多い。今回私達が主に扱っているのはこの二国間援助です。

一方、多国間援助は国連などの国際機関を通して行われる援助で、二国間援助に比べて政治的に中立であるし、途上国に対する人道的な性格も強い。それでもやはり問題はあるようで…(→気になる人はコラム・多国間開発銀行へ)

ここで、二国間援助についてもう少し掘り下げていくと、二国間援助は贈与政府借款(貸し付け)に分かれます。

贈与の方にまず焦点を当てると、贈与には技術協力無償資金協力があります。

技術協力は、途上国の明日を担う人材の育成、いわば「人づくり」のお手伝いです。途上国に専門家を派遣したり、逆に途上国から研修員を受け入れたり、あるいは機材を提供したりしています。特にこの三つをうまく組み合わせて行う技術協力をプロジェクト方式技術協力、と呼んでいます。他にも、どんな開発が可能か調査して、いろいろな開発の計画を提案する開発調査や、青年海外協力隊の派遣があります。日本ではJICA(国際協力事業団)が窓口となって技術協力を行っています。

無償資金協力は、簡単に言うとタダであげるお金の援助です。安全な飲み水、食料、衣料、住宅といった生きていくために最低限必要とされるもの、BHN(Basic Human Needs)や、教育や研究にその大部分が使われています。特に貧困問題が深刻な途上国の中でも貧しい国々、LDC(Least Development Countries)がこの主な対象国になっています。

政府借款(貸し付け)は無償資金協力と対比して有償資金協力とも言われます。有償、というのは返済義務があるという意味で、つまり返さなければいけないお金のことです。お金の援助、と聞くとタダであげるとばかり考えてしまいがちですが、この援助ではお金を貸してあげるだけです。その代わり、普通に商売でお金を借りる時よりも、やさしい条件(グラント・エレメント25%以上)で貸し出されています。例えば返す期間が長かったり、利子をあまり取られなかったりします。主に道路・発電所などの経済インフラ(インフラストラクチャー:基本的施設)を整備する時に利用されます。

有償資金協力の日本独自の言い方で円借款というのがありますが、これは日本で貸し付けが行われる場合、「円」で行われることが普通だからです。また、日本で有償資金協力を行っている機関はJBIC(国際協力銀行)です。

☆mini講座:タイド・アンタイド
タイドってわかりますか?最初はなかなかわかりにくい概念ですよね。タイドは英語で[tied]と書かれます。そう、ネクタイとかひもを意味する[tie]を思い浮かべてもらえばタイドが日本語でひもつきと呼ばれるゆえんがわかってもらえるでしょう。前置きはこれくらいにして説明に入ります。

有償資金協力(貸し付け)の場合、援助される途上国の名義で援助国の銀行に口座が設けられて(例えば日本の銀行にタイ名義の口座が作られる)、途上国はその口座からお金を引き出して使うことができます。大事なのはこの後で、途上国がこのお金を利用して必要な物資(技術・人材なども含みます)を購入する際に、どの国からそれを輸入するかが問題になることがあります。それを、お金を貸している援助国に限定されることをタイドといいます。つまり、援助国が日本なら、お金を貸してもらった途上国は、日本企業のものしか買えないわけです。
整理すると、援助国は途上国にお金を貸した上で、そのお金の支払先を自分の国の企業に限定しています。これでは援助国にとっては自国企業の、しかも確実な、輸出促進の手段にすぎません。タイドがよしとされない理由がわかってもらえたでしょうか?もちろん、アンタイド(untied)はその逆で、途上国がどこの国から物資を調達しようが問われません。

(京大農2 辻田 香織)

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