京大ユニセフクラブ新歓学習会
もう一つの貿易を求めて〜フェアトレードの挑戦
担当 衣斐友美
福田健治
0.フェアトレードって何?
・フェアトレードを知っていますか? フェアトレードって何がいいんでしょうか?
1.南北問題ってなに?
(1)植民地時代
先進工業中心地(北)
原燃料供給地(南)
⇒不平等な国際分業体制
(2)戦後の植民地独立
旧植民地が、政治的独立を果たし、さらに経済的独立(植民地経済からの脱却)を求め、先進工業国と対等の地位に立つことを目指して南北間の経済関係調整にのりだす。
⇒南北問題
●南の貿易が不利な理由
・発展途上国の輸出産品が価格・市場の不安定な一次産品にかたよっている。
・付加価値が高く市場需要の延びやすい工業製品が先進国に独占されている。
●経済関係調整の手段
・北に輸出していた天然資源への自国主権確立
・この資源を自国で利用するための工業化
・工業化のための設備財輸入をまかなう一次産品輸出所得の安定化と援助
(3)工業化のひずみ
●南北問題の解決を目指した発展途上国の開発過程において様々な問題がおこる
・自然環境の破壊
森林伐採・砂漠化・大気汚染・水質汚濁
・貧富の格差増大⇒国全体として経済発展をしても、それが底辺の人々には届かない
・生活環境・コミュニティーの破壊
・劣悪な労働環境、低賃金
・都市への人口集中
⇒都市と農村の経済的格差により、都市に人々が流入。都市での居住環境の悪化。
・人口の急激な増加⇒環境問題・貧困問題・食糧問題などと密接に関係し、南北問題の解決をさらに困難にしている
2.フェアトレードの仕組み
・フェアトレードとは
経済的・社会的に弱い立場にある発展途上国の人々から、伝統的な工芸品や農産物を公正な価格で買うことで、途上国の人々の自立を支援する運動
・フェアトレードの原則
(1)小規模生産者との直接取引
(2)公正かつ安定した価格(一部金額の前払い)、長期間の契約
(3)生産地の生活・環境を保全する、伝統的な産品を輸入
(4)生産者による生活向上・コミュニティー発展のためのプログラムの支援
・主な扱い商品
大規模な生産施設、高度な技術を必要としない、地域の伝統的な製品
民芸品・工芸品(アクセサリー、インテリアなど)
紙製品(カード、レターセット、包装紙など)
布製品(タオル、衣類など)
農産物(コーヒー、紅茶、砂糖、バナナ、ハーブなど)
☆ATOその1 グローバル・ヴィレッジ 設立・・・1991年、イギリス人女性によるナミビア支援から ・理念 @ 貧しい人や弱い立場の人々、世界の資源の地位や価値をおとしめ、搾取する社会構造、経済システムを問い、持続可能な発展を目指し、代替的なライフスタイルを提案、促進する。 A 国籍、民族、その国の政治システム、宗教、性別、性向、皮膚の色にかかわらず、世界のいかなる場所での貧困、苦境、被害を軽減し、基本的人権の擁護を確立する。 B 1と2の目的を達成するために個人や社会に対して情報を提供し、教育し、行動への促進を行っていく。 ・取引先・・・15カ国55団体、多くはヨーロッパ向けに輸出実績がある団体 ・規模・・・専従スタッフ11名、97年度売り上げ 約1億1千万円 ・商品、販路・・・資料参照 ・独自の商品開発が課題 |
3.フェアトレードの意義
・生産国で...
生産者支援、コミュニティーの再生、伝統的技術・文化の保存
広い意味での生活環境を守り、近代化に対抗していくこと
・先進国で...
途上国ならではの付加価値 民芸品、工芸品(通常は手に入らない)
途上国の文化・生活への理解 民芸品や生産者情報を通じて
国際産直として 無農薬、素性確かなものを
・南北間のつながりを...
生産者とのつながり 顔の見える貿易
身近なモノから世界を考える材料として
現在の自由貿易と違う貿易のシステムとして
貿易を通じて人のつながりを創り出すこと
4.フェアトレードの歴史
1940年代
アメリカのNGOがフェアトレードに取り組み始める
1950-60年代
途上国の独立にともない「南北問題」がクローズアップされる
1960年代
UNCTAD設立、"Trade
not Aid"が途上国のスローガンに
60-70年代
ヨーロッパ各国でATOが次々と誕生
それと対応して途上国にもマーケッティング団体・生産者団体が設立
1980年代
売り上げの拡大、マーケッティング団体の増加
ヨーロッパで環境問題・消費者問題への意識の高まり
国際組織IFAT、EFTAの設立
1990年代
日本におけるATOの設立
国連環境サミット、社会開発サミットの開催
☆ATOその2 OXFAM(U.K) ・設立・・・1942年、ナチスに占領されたギリシャへの支援のために設立 ・1960年代からフェアトレードに取り組む ・イギリス中に800以上のOXFAMショップ、リサイクルとフェアトレード商品の販売(1700万ポンドもの売り上げ) ・取引先・・・36カ国以上、詳細な取り引き基準(資料) ・規模・・・専従スタッフ400名以上 |
5.フェアトレードの課題
●原理的課題
・モノ、金、情報の一方通行性←現状の格差の上でのもの
モノは途上国から先進国へ、金は先進国から途上国へ
情報はマーケッティング情報が一方的に流れるだけ、現地情報も乏しい
・援助と貿易の間で
高価な商品、価格競争力 アクセサリ・工芸品類のほうが有利
←「貿易」に対するアプローチは? ex.ヨーロッパのフェアトレード団体
生協、NGO関係者などオルタナティブにお金を出す層にしかアピールしない?
=誰にアプローチするのか、より広い層にアピールするには・・・
チャリティー的役割から抜け出せない以上、価格競争力を持つのは無理?(その背後にある「途上国に人たちへの支援」を買ってもらわざるをえない)
●実際的課題
・日本の未成熟な消費文化
・日本での経験蓄積不足、独自の商品開発力
・他の消費者運動(生協、産直、環境etc.)との関係
☆ATOその3 オルター・トレード・ジャパン ・設立・・・1989年、フィリピン・ネグロス島の砂糖危機への支援活動から ・取扱商品・・・バナナ、黒砂糖、有機エビ、コーヒー、キムチなど ・取引先・・・フィリピン、インドネシア、エクアドルなど ・規模・・・職員13名、96年度売り上げ 約12億円 ・日本の生協運動、途上国の民衆運動に根ざした民衆交易 ・バナナ貿易の失敗・・・モノの流れの一方通行性による弊害 |
6.私たちの生活の中で
・もう一つの交易システムとしてのフェアトレード・・・生協運動からの視点
闇に包まれた物流システム
企業による不透明なモノの流れから、市民による「顔の見える」関係へ
「生活を自治する」ということ
・消費者としての私たちとフェアトレード・・・環境保護運動からの視点
ふだんの買い物の中で、否応無しに「大量消費」に巻き込まれる
「グリーンコンシューマー」・・・地球にやさしい消費者とは?
消費者としてできる、ささやかなこと
=消費する「モノ」と途上国、環境、農村etc.との関係
自分とつながっている世界を意識すること、想像力を持ちつづけること
[参考文献]
松井やより『市民と援助』岩波新書、1990年
内橋克人『共生の大地』岩波新書、1995年
堀田正彦『台所からアジアを見よう バナナ』オルター・トレード・ジャパン、1995年
堀田正彦他『有機エビの旅』オルター・トレード・ジャパン、1994年
[参考ホームページ]
オルター・トレード・ジャパン http://www.jca.ax.apc.org/atj/
第3世界ショップ
http://www.p-alt.co.jp/dai3.html
OXFAM
http://www.oneworld.org/oxfam/
IFAT
http://www.ifat.org/