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日本ペンクラブの「著作者の権利への理解を求める声明」について(見解)

 2001年6月15日、日本ペンクラブが「著作者の権利への理解を求める声明」を発表した。そこでは、公立図書館について、次のように言及されていた。

 「ところが最近、こうした著作者等の権利を侵害する動きが顕著になっており、日本ペンクラブは深い憂慮の念をいだいている。問題は、(中略)公立図書館の貸し出し競争による同一本の大量購入、である。」

 「また、公立図書館の同一作品の大量購入は、利用者のニーズを理由としているが、実際には貸し出し回数を増やして成績を上げようとしているにすぎない。そのことによって、かぎられた予算が圧迫され、公共図書館に求められる幅広い分野の書籍の提供という目的を阻害しているわけで、出版活動や著作権に対する不見識を指摘せざるを得ない。」

 貸出し競争との指摘であるが、公立図書館の意図は競争にはない。貸出しをつうじて「利用者のニーズ」に徹底的にこたえようとする公立図書館の姿勢が、競争と捉えられるなら、それは誤解である。たとえば予約である。大量の予約が入るベストセラーもあるのは事実だが、大部分は、書店では手に入らないものも含めた、幅広い分野の多様な本に対する予約である。どちらに対しても、確実にこたえるのが、現代の公立図書館の姿勢である。それが可能になったのは、戦後日本の公立図書館が、資料提供をサービスの中心として発展してきたからであった。

 当研究会で1999年8月〜9月にかけて行われた調査サンプルによれば、1998年のベストセラー20点の購入費の資料費全体に占める比率がもっとも高い図書館でも1%程度である。(『みんなの図書館』2000年3月号)。ベストセラーの大量購入によって、資料費が圧迫されているという事実も存在しない。ベストセラーのみを購入する図書館は存在しない。ベストセラーの要求に確実にこたえている図書館は、同時に高度な専門書を含め幅広い蔵書構成を有しており、それらに対する要求にもしっかりこたえている。

 また、同一作品の大量購入は、大人向けのいわゆるベストセラーにかぎられない。児童書や地域資料のきめ細やかな複本購入によって出版文化を支え、多くの読者を育てているという側面もある。

 公立図書館のサービスは、むしろ、出版文化のショーウィンドウ的な役割を果たしている。書店もないような地域において、図書館は住民が本に触れることのできる貴重な場となっていることも指摘しておきたい。

 図書館は著作権者の敵ではない。共に、豊かな出版文化を創造していくパートナーであると、われわれは認識している。今後は、著作権者の権利と図書館利用者の権利の双方を保障していくことをめざして、当研究会としても積極的に取り組んでいきたい。全自治体のおよそ半分におよぶ図書館未設置自治体の存在など、多くの問題を抱える図書館への理解を求めるとともに、共に、図書館設置促進と図書館資料費の増額に取り組みたい。

2001年7月10日

図書館問題研究会第48回全国大会