図書館問題研究会常任委員会では、関係団体と共同で、江東区に対し、次の提案文書を送りました。これについての回答をいただき、さらに質問しました。
質問に対する再回答は2002年2月19日にいただきました。
なお、常任委員会ではこの回答に対しても見解等を準備中です。
(図書館問題研究会常任委員会)
江東区長殿江東区教育長殿
江東区議会議長殿
江東区教育委員会委員長殿
江東区立江東図書館長殿
江東区の図書館のカウンター窓口の在り方についての提案
図書館問題研究会
学校図書館問題研究会
親子読書地域文庫連絡会
YAサービス研究会
私たちは、住民のくらしやしごとに役立つ図書館の発展を願って活動しています。このたび、江東区の図書館カウンター窓口の委託構想を聞き、大変、危惧を覚えるところがあります。十分な時間をかけて、一般区民や専門家を交えて図書館サービス向上のあり方を再検討することを求めます。
1 今回の委託構想の問題点
(1)公共図書館では、カウンター窓口の仕事は直接区民と接する最も大切な仕事です。こどもからお年寄りまで、自営業からビジネスマンまであらゆる人々のニーズにこたえなければなりません。このような様々な利用者の問い合わせにこたえていくためには、カウンター窓口には正規の専門職である司書を配置することが必要です。今回の委託構想では、カウンター窓口に正規の専門職としての司書を必ず置くことが明示されておらず、サービスの質的な向上が示されていません。
(2)図書館のカウンター窓口という、最も大切で専門性が要求される仕事について、図書館職員や利用者を交えての十分な討議や検討がなされていません。住民に最も利用される施設である図書館の主要な業務について、必要な手続きをふまずに業務委託を計画することは、自治のプロセスとして大きな問題があると言わざるを得ません。
2 今後の江東区における図書館サービスの向上に向けて(提案)
以上の問題点をふまえ、下記のことを提案します。
(1)カウンター窓口サービス向上に向けて(ア)カウンター窓口委託構想は当面保留とし、最低一年間、カウンター窓口サービス向上についての検討期間を設けること。
(イ)カウンター窓口サービス向上のための図書館の一般職員も参加できる検討機関を設けること。
(ウ)カウンター窓口サービス向上について図書館利用者や一般区民も検討に参加できるように、図書館協議会またはそれに準ずる協議機関を設けること。
(2)司書職制度の導入に向けて
地方分権を推進する中での図書館サービス向上の見地から、江東区独自の正規常勤専門職としての司書職制度の導入の検討を始めること。また、同時に、現在、図書館に勤務する司書資格のない職員について、本人が希望し、かつ、適性と資質を有すると判断できる場合、司書資格取得のための講習派遣、通信教育受講への支援等の経過的な措置を検討すること。
(3)新しい時代の図書館サービスに向けて
図書館は文化・芸術・リクレーションに資するのは言うまでもありません。また、「総合的な学習」との協働、子育て支援、新しいビジネスの創造、起業支援、地域産業支援、まちづくり支援、行政活動支援、NPO活動支援など、幅広い分野において、資料・情報の徹底的な提供を行うことによって役立つことができます。地域を発展させる図書館サービス計画の策定が必要です。 伝統と実績ある江東区の図書館サービスのさらなる発展として、区の重要政策・施策の中に図書館を位置づけることを提案します。
2001年12月25日
江東区の図書館のカウンター窓口の在り方について回答
[江東区立江東図書館]
この度は、江東区立図書館の事業運営についてメールをいただき有難うございます。
メールによりお寄せ頂いたご意見につきまして、下記のとおり回答いたします。
記
1.今回の委託構想の問題点
(1)江東区では、平成14年4月より、図書館業務のうち管理業務、選書業務、レファレンス業務等を除きカウンター業務、書架整理、配架業務等一部を民間委託するよう準備を進めているところであります。ご指摘のカウンター窓口については、最近、東京都旅券課でパスポート申請事務が委託化され利用者に好評との新聞報道がありましたが、さっそく旅券課の現場調査を行い、あらゆる住民のニーズに対応できるか等検討した結果、一部窓口業務を委託することが可能であると結論をだした次第です。
また、窓口の司書の配置については、現状でも司書の資格の無い職員で対応する場合が多いのですが、ある程度経験を積めば十分対応でき、サービスの質的な低下を招くことはないと判断しました。
(2)窓口の委託化については、図書館のみではなく、出張所等あらゆる窓口を対象に検討が進められてきました。
議会等でも再三今後の公共施設のあり方等について質問もあり、長期基本計画に行政評価システムを導入し、区が行っている各事務事業が「施策」の目的達成にとって必要な事業であるか、他の方法は考えられないか等の視点から評価を実施してまいりました。
2.今後の江東区における図書館サービスの向上に向けて(提案)
(1)カウンター窓口サービス向上にむけて
(ア)前記のとおり、本年4月にむけて現在館長会等で準備作業を進めているところです。
(イ)一般職員を含めたプロジェクトチーム編成を計画しましたが組合の反対でできませんでした。しかし、各担当者会及び館長を通じて意見を聞く様にしています。
(ウ)今すぐは無理と思われるが、今後地域住民と一緒に図書館運営について検討に参加できる様な協議機関を設け地域に根差した図書館となるよう努力したいと思います。
(2)司書職制度の導入に向けて 昭和30年代には司書としての採用をしていましたが、それ以後司書としての採用はしていません。また、平成9年4月には職種の見直しがあり職種・職務名「司書」が廃止になり平成13年度には司書講習費用が削減されてしまいました。
(3)新しい時代の図書館サービスに向けて 新たに行政評価システムを活用し施策の重点化を図り、成果主義区民起点の効果的・効率的行財政運営の基盤づくりを目指す目的で作成された「長期基本計画」にも図書館を生涯学習の拠点として充実することとしております。
窓口業務一部委託化により、祝日開館や開館時間の延長も可能になりますが、職員と委託業者との仕事の関係等非常に難しい問題も沢山あります。
住民の皆様に喜んでご利用いただける図書館を目指して努力してまいる所存です。
(2002年1月8日 江東区立図書館から電子メールで回答)
江東区の図書館のカウンター窓口の在り方について回答に対する質問
図書館問題研究会
拝啓 時下ますますご清祥のことと存じ上げます。
当会の提案に対して、ご丁寧な回答をいただき、ありがとうございます。しかしながら、不明な点も多々あるため、ここに質問をさせていただきます。ご多忙の折、まことに恐縮ですが、3週間程度でご回答いただけないでしょうか。どうぞ、よろしくお願いいたします。
1 今回の委託構想の問題点
(1)東京都旅券課でのパスポート申請事務と、区立図書館のカウンター業務とは、まったく種類の異なる業務ですが、どうして、パスポー申請事務の委託化についての調査結果から、区立図書館のカウンター業務の一部が委託できると判断されたのでしょうか?
また、現状で司書の資格の無い職員で対応する場合が多いことについて、問題や課題はないのでしょうか?
ある程度経験をつめば十分対応できるとのことですが、どの程度の対応を十分と考えるのでしょうか?
さらに、サービスの質的な低下は招かないということでは、現状維持になるわけですが、その場合、委託のメリットは何でしょうか? サービスの向上の必要性はないのでしょうか?
(2)行政評価においては、住民や利用者、専門家は加わっているのでしょうか?
行政評価を反映した『江東区長期基本計画(素案)』では、図書館に関しては、施策3「生涯学習・スポーツの充実」において、施策実現に関する指標としての区民一人あたりの年間図書館資料貸出数(点)を9.0、10.0に上げることを目標とし、施策実現の課題解決に向けての主要事業として、図書館の改修とDAISYによる録音図書のデジタル化事業をあげています。これらのことに対して、図書館のカウンター窓口の委託を手法として採用することの妥当性及びメリットは何でしょうか?
また、議会等では、議会以外の場も含め、具体的にどのような場で、どのような質問がされ、どういう答弁等をされたのでしょうか?
2 今後の江東区における図書館サービスの向上に向けて(提案)
(1)カウンター窓口サービス向上に向けて
(ア)ご回答によりますと、来年度から即実施ということになりますが、図書館を直接利用している区民の意見はどのように聞き、また、どのように区民を含めた検討を行うのでしょうか?
(イ)組合はどうして反対したのですか?
(ウ)今すぐは無理と思われる理由は何ですか? また、今すぐ、図書館協議会等の機関を設置することが困難な状況で、窓口サービスの委託という大きなサービスのあり方の変更を行うことに問題はないのでしょうか?
(2)司書職制度の導入に向けて
地方分権時代を迎え、地方自治法も改正され、特別区も新たな位置付けとなった現在、江東区独自の判断として、専門職としての司書を採用・配置することに問題や障害はないと考えられるのですが、実現できない理由は何ですか?
また、司書講習費用の削減を区として行った理由は何で、また、それを増額する方針がないのはなぜですか?
(3)新しい時代の図書館サービスに向けて
開館時間延長と祝日開館の必要性の客観的根拠は何ですか? また、窓口業務を委託しなくても、これらのことは一定、可能と考えられないでしょうか?
(2002年1月25日 江東区立図書館あて、電子メールで送付)
[江東区立江東図書館からの回答]
メールによりお寄せいただいたご意見につきまして、下記のとおり回答いたします。
1.今回の委託構想の問題点
(1) 東京都旅券課でのパスポート申請事務の調査を行ったのは、ご承知のように申請には住民票や戸籍謄本が必要であり、それらのプライバシー保護がきちんと守られているかまた受付事務が円滑に行われているか等調査したわけです。その後都内の公立図書館と千葉の市立図書館でカウンター業務を委託しているところなど調査いたしました。また、司書の資格の無い職員の対応について問題や課題はないかとの問合せですが、職員一人ひとりの能力の問題はありますが、資格の無い職員でもやる気のある者は司書以上の働きをしています。委託することにより、住民から要望の多かった祝日開館や開館時間の延長も可能になります。
(2) 行政評価において、民間企業の専門家に知恵を頂いています。また、各部課で住民や利用者の意見を反映しています。カウンター窓口の委託を採用することで職員も削減されますがのこつた職員は、余裕をもって今までできなかった新しい図書館サービスにむけて努力できることと思います。
議会では、再三公共施設全般について見直しするよう質問があり昨年6月本会議において区長より図書館の一部委託化と区民サービスの更なる向上と経費の節減を併せて実現する旨、答弁したところであります。
2.今後の江東区における図書館サービスの向上にむけて
(1) カウンター窓口サービス向上にむけて
(ア)図書館利用者の意見は、カウンター窓口や区長へのはがき及び各図書館に設置してあるポストにはいっているお便り等により意見を聞いています。
(イ)組合は、提案当初より委託化に反対でした。現態勢で運営したい希望がありました。
(ウ)協議会には、地域の有識者や青少年関係者・学校関係者・利用者など幅広い方々に参加していただきたいと考えています。それらの人選などなかなか難しい問題も沢山ありますが、他の自治体での状況等調べて設置できるよう努力してまいります。窓口については、現在一部の職員の対応が悪いと批判をいただくことが結構ありますが、委託をしても、その点は十分配慮しサービスの低下にならないようにしてまいります。
(2) 司書職制度の導入にむけて
昭和30年代以降、司書としての採用はしていませんが、図書館運営に問題がなかったことだと思われます。
講習費用などの削減については、民間企業で生き残るためにあらゆる施策をしているのと同様に、江東区も厳しい財政状況のなかでそのように選択せざるを得なかったのです。
(3) 平成12年7月より近隣の江戸川区で祝日等開館し、区民よりなぜ祝日開館出来ないか、また、議会でも再三同様の質問があり、検討しましたが、現在図書館で働く職員は、交代勤務・土日勤務などをローテーションで行っており非常に不規則な勤務をしており現状ではこれ以上開館日数を増やすことは、困難と判断したわけです。
(2002年2月19日 江東区立江東図書館から電子メールで回答)