図書館のカウンター業務の民間委託に反対するアピール
「行政改革会議最終報告」(97.12.3)以降、自治体サービス行政の市場化(アウトソーシング)が進められ、東京の江東区、墨田区などでは、図書館のカウンター業務を民間業者に委託しました。
しかし、私たちは、住民にとってよりよい図書館サービスを行うために、図書館のカウンターには、専門的知識をもち、経験を積んだ自治体職員である司書が配置されるべきだと考えます。
貸出し・返却等のカウンター業務は誰でもできるから、企画立案や選書等の業務から切り離してもかまわないという議論がありますが、これは図書館の実情についての認識を欠くものです。カウンターは図書館が住民と接する窓であり、住民が図書館にその思いや考えを伝える場でもあります。図書館の職員は、カウンターでの貸出し・返却やフロアワークを通じて、住民との交流や信頼を積み重ねることができ、選書、蔵書構成、将来構想など重要な計画が立てられ、再び住民へのサービスとして反映させることができます。
もちろん、直営でカウンター業務を行う図書館にも、問題は少なくありません。「図書館のカウンター業務は直営である必要はない、民間業者に委託した方がサービスは向上するのではないか」という住民の批判を図書館の職員は真摯に受け止める必要があります。図書館自体が、業務分析にもとづく効率的な職場体制の構築、図書館サービス評価等の努力をおしまず、住民の厳しいチェックを受ける覚悟がなければ、図書館の直営について、多くの住民の理解を得ることは難しいでしょう。
それでも、忘れてはなりません。住民の声を図書館が直接に受け止め、住民とともに経営を変えていくことは、直営だからこそ可能なのです。住民から、知る権利を保障するサービスを託された行政は、図書館の直営に最善を尽くすべきではないでしょうか。
江東区、墨田区において行われているような請負契約による業務委託では、本来、受託先職員に対し自治体職員が直接指示することはできません。ところが、実際には業務を円滑に進めるために、受託先職員に直接自治体職員が指示するということが日常的におこなわれなければなりません。これは違法行為です。
カウンター業務の委託は、以上のような問題があるため、私たちは、委託の白紙撤回を求め、また、新たにこうした委託が広がることに反対します。
2002年7月9日
図書館問題研究会第49回全国大会