<日常生活を守るために「予防原則」の徹底を>

 今年6月27日に世界保健機関(WHO)の下部機関である国際がん研究機関(IARC)は「人体への発がん可能性有り」のランク「2B」に全会一致で正式にランク付けをする発表をしました。続いて10月28日付の朝日新聞が国立環境研究所(茨城県つくば市)で「がん抑制ホルモンの『メラトニン』が磁界によって動きを阻害される」という結果を得たと報道しました。1.2〜4マイクロテスラ(12ミリガウス〜40ミリガウス)の磁界でもメラトニンは細胞の中で抑制作用を低下させ、濃度によっては消失したとのことです。

 日本では過去から電磁波について発がんなど人体への影響を与えるという証拠が見つかっていないとして問題視していません。そして、このような発表が相次いでも行政の対応は旧態依然としていて「人体への影響が認められるとは言えない」としているようで、国民に対し何の情報も開示されていないことが大きな問題だと思います。

 被害の因果関係がはっきりするまで何十年もかかるような疫学調査によらなければならない「人体への影響」であると言うものなので、今の日本の行政では永久に放置される可能性が高くなります。ゆくゆくは「薬害エイズ問題」「東海村JOC臨界事故の問題」「ストーカー問題」「狂牛病問題」の二の舞いになるように思います。因みに海外では、疫学調査が必要なほど微妙な因果関係に絡む問題であると言うことで、国民のことを心配する国がガイドラインを設け「慎重なる回避」をしています。

 最近、日本でも携帯電話の電磁波が心臓ペースメーカーへ及ぼす影響の研究を始めてから5年間かかりやっとガイドラインができました。人体でなく結果が出しやすい機器に与える影響ですら長い年数がかかっているのです。まして人体への影響などは長い年数がかかるのは当たり前であり、はっきりと断定できることが困難であるのは誰でも理解できるからこそ海外での「慎重なる回避」が行われると思います。
 しかし、世界の研究結果のように世界的にはこれだけ認識されていることが、日本では「問題なし」と判断されていたり、報道関係が取り上げにくいのは電力業界をはじめとする商売上、政治上の圧力があるのではないかと言われていますが、その他に次のようにも思えます。

 人の「健康」より「商売」を優先させることは日本だけではなく海外でいくらでもある話だと思います。そのような商売の中でアメリカ人や世界の多くの人々は自己責任の原則で「自分の健康は自分で守る」ために自分で選んで行動しています。しかし、日本人と言えばいつもの横並び主義なので「テレビや新聞を含め自分の周囲で認めていれば自分も問題なく認める」ところがあり、新しい情報を与えてもらわなければ自分で情報を探しに行くことまではしません。日本人が電磁波問題をあまり気にしていないのもそんな性格からかもしれません。国民のことを思うなら誰かが正しい情報を開示・提供していくべきだと思います。その「誰か」は行政だけでなく、当然国民のために仕事をする我々の使命ではないでしょうか。

 電磁波の被曝量は「強さ」×「距離」で決まるのですが、「電磁波は強い」ことと「機器に密接して使用する」という電気製品では、特に最近の電磁調理器が該当し、人体への影響を受け易く心配です。他の電気製品からも電磁波は出ていますが体から離れて使うものが多く国際的な基準もほとんど問題とされません。しかし、身近で長時間つかうものは心配なので電気毛布などは家電メーカーが電磁波を95%カットした商品を出したとも聞きます。電磁調理器は電磁波を機器の表面に届かせないと調理できませんので電磁波をカットすることができません。調理する人は少なくとも20ミリガウス〜30ミリガウスの電磁波を浴び続け、何と調理器の中心部では2000ミリガウス以上も発していると言われており特に妊婦さんなどお腹が密着するので心配です。
 しかし、機器メーカー、電力会社は莫大な資金力ですばらしいテレビコマーシャルや新聞広告で一般消費者を魅了し、電磁調理器をすすめています。私は今、電磁調理器(IHコンロ)の電磁波が及ぼす影響を一般消費者から工務店、ハウスメーカーの方々に情報を提供しておりますが、「こんなことは初めて知った」など電気機器メーカーや電力会社側からは一切の情報を受けていない方が多いようです。テレビコマーシャルによって消費者は電磁調理器をはじめオール電化住宅がこれからの家の主流になる」などと思いはじめ、電磁波の影響など微塵も情報を得られない状況です。これは、工務店、ハウスメーカーなどは情報を得ていないからもちろん一般消費者にまで情報が伝わるわけがないのです。

 日本の超有名大手電気機器メーカーのT社とN社に尋ねると「電磁波が怖い人は使わなかったら良いのです」とのなんともしらけた回答でした。

 電磁調理器もハウスメーカーの広告宣伝費やモデルハウスなどは電力会社から資金的に豊富に援助が出るため、ある意味オール電化を宣伝材料として最近は施主がコンロの種類を指定しなければ新築時に最初から組み込まれて設置されるケースが多く、徐々に増えつつある状況です。電磁波の問題を少しでも知れば手遅れにならずに済むこと以外に、ペイオフなど今後いろいろな機会で必要になってくる自己責任の感覚を健康を通じて身につけられるようになると思います。そのためにも、自分の仕事を通じてさまざまな角度から電磁波問題の情報を出来る限り多くの人々に提供していこうと思います。


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