[注:個人名関連は「*」であらわす]


小田原市市議会議長 二見健一様

平成12年11月20日

1.9GHzのマイクロ波を常時発信するPHS用無線基地局の人体への影響について国が早急に調査を開始し無害との結果が出るまで、免疫的弱者で身体機能の発達途上にある子供を健康への悪影響の可能性から回避させるため、電話会社に対して基地局設置場所は幼稚園・保育園・小中学校の近隣地を避けるよう配慮を要請する意見書を郵政省および環境庁に提出することを求める陳情書

陳情者                  
********* 小田原市**********
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趣旨
 本年5月にイギリス政府諮問の専門委員会が、「子供は頭骨が軟らかく、脳神経の発達過程にあるため、大人よりも電磁波の影響を受けやすい」と指摘し、「携帯電話の電磁波が子供の身体に悪影響を与える可能性があるため、16歳未満の子供が不必要に携帯電話を利用しないよう勧告する」との報告書(スチュアート報告)を発表した。
 また、近年の日本の社会問題である子供の学力低下、アレルギー(化学物質過敏やアトピー性体質、スギ花粉症など)、少子化などには電磁波の影響があると指摘する医学や物理学の専門家の著も出ている。
小田原市内の携帯電話およびPHSの無線基地局の設置状況を見ると、PHS用基地局が幼稚園や小学校の至近に設置されている例が多数ある。携帯電話の電磁波は800MHz(メガヘルツ)あるいは1.5GHz(ギガヘルツ)であるが、PHSの電磁波は1.9GHz(一秒間に19億回+−の変動がある)であり、波長は携帯電話の電磁波では38cmあるいは20cmであるが、PHSでは 身体の厚みよりも短い16cmで、体内にて絶えず電場と磁場の変動を起こす。携帯電話の基地局に比べてPHSの基地局の出力は弱いが、設置高度が低いため人体との距離が短かく、その影響は軽視できない。
 陳情者も含め、環境NPO「電磁波問題市民研究会」で知り合った電磁波を身体に感じる人とのあいだでは、「携帯電話よりもPHSの方が身体に変調をきたす」との発言が出ている。携帯電話の電磁波の影響についてはWHOや先進諸外国の動向と並んで我が国でも調査が開始されているが、8月にNPOとしての郵政省および環境庁との交渉会に参加 して質問したところ、日本で発明され欧米では採用されていないPHSの電磁波の影響については調査の予定が無いとのことであった。
 国会議事録を検索すると、全国各地で基地局の設置反対運動をしている市民の相談を受けた議員から電磁波の影響について質問が幾度となく出ている。昨年4月の参議院交通・情報通信委員会には、「小田原市において携帯電話基地局が事前説明無く建設され撤去運動が起きている」との発言がある。郵政省は、4年も前の96年に国際非電離放射線防護委員会が出した「基準値以下の出力では健康に悪影響が発生するとの証拠が無い」という見解を受けて、「電波防護指針を満たせば人間の健康への安全性が確保されるというのが国際的な認識である」との答弁を繰り返している。「悪影響が発生する証拠が無いということと人間への健康への安全性が確保されるということとの間には少し違いがあると思う」との議員の発言に対して、郵政省は「人の健康にかかわる問題なので今後も調査研究を重ねていく」と述べているので、まだ着手されていないPHS基地局の電磁波についても早急に調査研究を開始していただきたい。
 国際非電離放射線防護委員会の基準値および、それを元に電気通信審議会の答申から97年に設定された現在の電波防護指針は、熱作用のみを考慮したもので、非熱作用は観点に含まれていない。最近の海外の動向を見ると、スイスやイタリア、ザルツブルク(オーストリア)など、高周波について非熱作用を防護する見地から国際非電離放射線防護委員会の基準値よりもかなり厳しい規制値を独自に設けた国や自治体がある。
 非熱作用による長期的影響を解明する疫学調査には長い時間がかかるので、陳情者は、調査の結果が明らかになるまで野放しにするのではなく、有害であった場合の被害を最低限にするため、将来を担う子供に対しては保護・回避の慎重策を講じるべきだと考える。郵政省は97年に携帯電話事業者に対して「基地局建設に当たっては事前の近隣住民への理解を得るよう努めて欲しい」と要請しているが、現実は大部分の基地局は事前通知無く建設されており、しかも簡単には撤去に応じない。陳情者の娘が通う市立酒匂幼稚園正門前にNTTドコモのPHS基地局が立っていることに入園が決まってから気づき、頭痛を覚えたため陳情者が電話で苦情を申し立てたところ、同社は理解を得る努力をするどころか、無下に「契約者以外の方からの撤去の要望には応じられない」と言うのみの対応で あった。
 横浜市をはじめ全国各地の公立小中学校において、学校内に設置されたPHS基地局が父兄の不安の声により撤去に至っている。国は、携帯電話会社が市民と対立することなく営業していくためにも、市民の不安の声をくみ取ってPHS基地局の安全性を保証するための調査に乗り出し、もしも有害の可能性があれば基地局の立地条件について規制を設けるべきであると思う。
 これらの点から、PHS基地局の無害性を確定する調査が行われていない現時点においては、児童憲章および児童福祉法に謳われている「子供の心身の健全な発育」のための環境が阻まれる恐れを回避するため、安全性が確立するまで基地局の立地は子供のための施設から距離を置くよう、国として電話会社に配慮を促していただきたい。陳情者は、PHS三社による電波強度のグラフと自身の体感から、高出力型のPHS基地局については少なくとも300メートルは離して欲しいと考える。
 環境先進都市を提唱し、特例市に認められた小田原市に、急務であるこの問題について是非とも国に意見書を提出していただけるよう、お願い申し上げます。


項目
小田原市議会に対して、以下の内容を盛り込んだ意見書を郵政省および環境庁に提出することを陳情致します。

  1. 1.9GHzのマイクロ波を常時発信するPHS用無線基地局の人体への影響について調査を早急に開始すること
  2. 上記の調査から無害との結果が出るまで、免疫的弱者で身体機能の発達途上にある子供を健康への悪影響の可能性から回避させるため、PHS基地局の設置場所の選定に際し、電話会社に幼稚園・保育園・小中学校の近隣地を避けるよう配慮を要請すること

以上

(添付資料)
  1. 2000年5月の英国スチュアート報告の解説
  2. スイス、イタリア、ザルツブルクにおける高周波の電力密度規制の動き
  3. 北里大学医学部長 石川哲 「あなたも化学物質過敏症?」より抜粋
  4. 京都大学工学部講師 荻野晃也 山形南高校新聞記事 「携帯電話の何が問題か」
  5. フリージャーナリスト 天笠啓祐 講演録「なぜ日本では電磁波規制が進まないのか」
  6. 2000年8月 環境NPO「電磁波問題市民研究会」と環境庁・郵政省との交渉録
  7. 国会議事録

以上
 
 
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