総務省(旧郵政省)「生体電磁環境研究推進委員会」の中間報告(1月30日発表)批判
何を根拠に「悪影響を及ぼすという確固たる証拠な認められない」と言うのか
2001年2月21日 電磁波問題市民研究会
- 生体電磁環境研究推進委員会について
携帯電話の急速な普及で電磁波の健康への懸念がもたれてきているため、旧郵政省が97年度(平成9年度)から関係省庁や大学の医学・工学研究者と協力して「電磁波は安全」とすることで電波利用を促進しやすい環境づくりのため設置した委員会。だからはじめから「電波の生体安全性評価」に関する研究計画策定や研究成果評価、及び諸外国の研究成果評価を「検討事項」(テ−マ)にしている。メンバ−も「公正かつ中立的」ではなく18名のうち業界関係者が5人、官僚系が4人を占め、学者9人も多気昌生氏をはじめ国の政策に沿う見解の学者で固めている。これでは「電波は安全」という結論以外は出るはずがない。
- 「安全であるという確固たる証拠」は示されていない
中間報告は「電波防護指針値を下回る強さの電波によって健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められない」としている。このこと自体は間違ってはいない。しかしだから「現時点では電波防護指針値を直ちに改訂する必要はない」と導くのにこの見解を使うのであればそれは誤りである。なぜならば、「生体にとって安全であるという確固たる証拠は認められない」し「生体に悪影響を及ぼさないという確固たる証拠は認められない」からである。
- 「人体に影響を与える可能性がある」との報告は適切でないのか
中間報告は「低レベルの電波が人体に影響を与える可能性があるとの報告」は必ずしも実験条件等が適切でないといった問題が指摘されており、委員会は「生物・医学実験を行っている」しこれまでの研究結果では人体に影響を及ぼさないことを示している、としている。この見解の欠点は「長期間かつ微弱なものの影響」は短命なラット等の生物・医学実験では解明しにくいという最近の知見を学んでいないことだ。だからこそ動物実験だけでなく人間そのものの実生活を長期間対象とした「疫学調査」「疫学研究」が注目されるのであり、日本はこの分野がすこぶる遅れているのも事実なのだ。現在のところ電磁波は「クロ」でも「シロ」でもない「灰色」なのが実情であり、その点では「人体に影響を与えない可能性がある」との報告もその点では“適切”でないとも言えるのである。
- 「予防原則」は科学的な根拠がないから採用しないという乱暴さ
中間報告は「最近、『予防原則』という考えに基づき、非常に低レベルの電波防護指針を採用すべきとの意見があるが、これは科学的な根拠に基づかないものであり」として否定している。しかしダイオキシンや環境ホルモンでもそうだが、「長期間かつ微弱なものを被曝ないし摂取」する場合の対処は子どもや赤ちゃん・胎児といったセンシティブに影響を受けやすい対象には「予防原則」を適用するほうがベタ−とするのは環境先進国の大きな流れである。
- 日本は「慎重なる回避」政策という予防原則を採用すべきだ
日本は長く「治療原則」つまり被害が確定したら対処に乗り出す政策できた。このやり方が時代遅れであることは明らかになってきている。一刻も早く日本で「慎重なる回避」政策が採用されるべきことを訴える。
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