IAC(関係省庁間調整委員会)はNIEHS(国立環境健康科学研究所)の健康リスクについての結論と同じ考えである。すなわち「ELF EMF(極低周波電磁波) 曝露(被曝)は白血病を引き起こす弱い科学的証拠のゆえ、完全に安全とは認められな い」し、「小児白血病と成人慢性リンパ性白血病で報告された(電磁波との)関わりは、とりとめのない(random)研究結果とか否定的な(negative)研究結果と安易に退けることはできない」。個々の研究からの(関連性の)支持は弱いが、曝露(被曝)測定のいくつかの方法に関して、疫学調査研究は曝露の増加に伴ってほぼ一貫した僅かなリスク増加のパタ−ンを示しており、正確に言うと小児白血病(居住での曝露)より成人慢性リンパ性白血病(職業上の曝露)のほうが幾分弱い。それでもやはり、科学的証拠は強くないので因果関係ははっきりしていない。
〈曝露(被曝)程度〉IACは、低周波電磁場曝露は現代生活では避けられないと認識している。環境中であれ職業上であれ曝露の性質に関する情報は増えているし、居住上の疫学調査・職業上の疫学調査研究や測定調査や工学研究を含む最近の調査によって、電磁波の性質はより解明がすすんでいる。
〈個人リスクの低減〉低周波電磁場曝露が結論として「安全」あるいは「リスクあり」と決定づける十分な情報はない。どの程度の電磁場曝露レベルだと生物学的に影響あるかもわからない。曝露低減のための行動を望む個人にとって、最も直接的方法は電磁波発生源から距離を置くことと曝露時間を減らすことである。
〈規制〉公衆(一般人)に対する量的曝露防護基準を定めた規制は現在、勧告されていない。その理由は、量的曝露基準を基にした「曝露量反応関係」の確固とした情報がないためだ。因果関係ははっきりしていないし、特に曝露線量と曝露距離が環境健康リスクと因果関係にあるとする立証がされていない。
職業上の曝露の規制については、OSHA(労働安全衛生局)が「米政府産業衛生士協議会(ACGIH)」の曝露規制ガイドラインを適用する。作業場での量低減防護基準を定めた規制も、前述したのと同じ理由(因果関係や曝露量反応関係がはっきりしないこと)のため実行されていない。
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の短期間直接健康影響ガイドラインのような現行ガイドラインは、妥当かどうか検討されねばならない。IAC委員会もまた、「米国電気電子技術者協会(IEEE)」の標準化調整委員会28や「米国放射線防護測定協議会(NCRP)」や「ACGIH」のような自主的標準化組織の活動に政府機関が遅れをとらないよう奨励する。政府機関もまた高曝露(被曝)労働者に対して、被害自覚教育が必要であることを明らかにするよう奨励される。
〈情報提供〉極低周波磁場と起こりうる健康リスクについての情報は、公開されるべきだ。ラピッド計画のウェブサイト(NIEHSがメンテナンスしている http://www.niehs.nih.gov/emfrapid/)の継続は価値がある。IACはまた、関係政府機関が高曝露されている人たちに彼らに援助を差し伸べる機関は自分たちなんだ、と知らせるにはどんな方法がいいのかについてもっと検討することを奨励する。
電力施設は、関心のある顧客にEMF調査・測定・情報を提供し続けることを奨励される。IACは、電力施設の周辺の電磁波レベルを減らしたり増えないようにするための方法を調査したり、改善するために、電力業界が努力することはメリットがあるということを知っている。そしてそれは継続することが奨励される。EMFラピッド計画は、磁場曝露を減らすために使われるの技術を再検討し評価した。
〈調査〉低周波電磁場のいくつかの生物学的影響は、科学的文献で報告されてきた。しかし人間への悪影響の原因を示す関係はまだ確立されていない。公衆に対し、低周波電磁場の健康リスクへの疑問を解明するためにより完全な答を出すためには、もっと研究を必要である。研究結果を反復実験することは、いまでも大事なことである。技術的文献で報告されたEMFの生物学的影響(効果)の原因となる電磁波の特質(測定基準)やメカニズムを確認することは、同じく重要である。ラピッド計画の終了でEMF研究に投入できる資金が少なくなったにもかかわらず、IACは研究努力は継続されるべきと信じているし、それも長期間続けられかつ妨害されないものと信じている。
〈調整〉適切な連邦政府機関が省庁間の調整と連絡を続けていくべきだ。それら省庁は、「米国内の政府機関と民間機関それぞれのEMF研究の監視」「国際的なEMF研究計画に基づく研究結果の追跡」「研究・標準化・規制に関する活動への参加」「科学的証拠の定期的再評価」「それぞれの省庁の責任と管轄が及ぶ範囲で必要となるEMF防止・管理のための政策勧告の作成」、について継続していくべきだ。