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(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2001年1〜2月号より
☆医療装置の示度を変える
米ミネソタ州ロチェスタ−にあるマ−ヨ・クリニック病院が発行する『マ−ヨ・クリニック会報』にジェフリ−・トリ(Jeffrey Tri)とデビッド・ヘイズ(David HAYES)らによる携帯電話の医療機器への影響に関する研究報告が掲載された。
それによると、携帯電話からの電磁波が「病院内の装置の計器表示度数を変える」し「時には装置を止めてしまう」という。ただしそうした重大な電磁波干渉はまれにしか起こらない、としている。この研究は5台の種類の異なる携帯電話を使って17の病院装置を対象に実験したものである。その際、携帯電話の照射角度や装置との距離を変えたりするなどいろいろ試した。
☆決して侮れぬ結果
トリとヘイズは共に医師だが、2人を中心にまとめられた研究結果は、携帯電話の使用を躊躇させる内容だった、と二人は書いている。なぜならば、電磁干渉(EMI)は全実験の55%で起こったのと、さらに全実験の7%は臨床に大きく影響を与える可能性があるほど強かったからだ。具体的には、デ−タの解釈を邪魔したり、装置の誤作動を引き起こす可能性があったということだ。
ある種の電磁干渉(EMI)は、機器の41%で観察された。「会報の論説」を書いたデビッド・ヘルマン(David Herman)博士とジョン・アベンシュタイン(John Abenstein)博士は携帯電話EMIで、人工呼吸器(ventilator)が止まったり再始動したケ−スを引き合いに出した。「もっと警戒すべきことは、人工呼吸器が携帯電話を切ったら戻らなかったことだ」と二人は書いている。
☆あくまで実験でのケ−スだが
主研究者のトリとヘイズは「この種の電磁干渉が実際に起こるのは極めてまれだ」と書いている。というのは、人工呼吸器の連絡接触部分の5〜10p以内で使われればこうしたことが起こるが、その部分は機器のウラ側にあり、通常患者や訪問者が近づかない所だからだ。
今回の研究で最も起こったEMIは、心電計の表示装置への干渉だ。機械本体へのノイズはもっともよく出たが、これはデジタル型電話でよく起こった。一方、機械の動く部分への干渉も見られたが、この場合は主にアナログ型電話で起こった。
電話の受信音がEMIを生じるかを研究するための「リンギングテスト(ringing test)」などのバッテリ−・テストについてはしばしば反応が見られた。
☆距離を離すことが大事だが、禁止も
トリとヘイズは、「携帯電話が合理的距離(研究では60インチ=180p)で使われるならば、重大な誤作動は起こさない」と結論づけている。
その一方で、「今回の研究は心肺モニタリング装置については制限された。また病院には文字通り数千もの電子機器が使われているが、それらもテストされてしかるべきだ」とトリとヘイズは言及している。
今回の研究について「(会報の)論説」と研究論文で携帯電話の病院内での禁止について別々の見解に分かれた。
(研究論文を書いた)トリとヘイズは病院内での携帯電話を禁止すべきか否かについては見解を述べなかった。代わりに、この問題について規制ル−ルがつくられる前にもっとテストが必要だ、と述べた。
☆クリニック会報「論説」は禁止支持
対照的に、『マ−ヨ・クリニック会報』の論説は、携帯電話の病院内での禁止を支持した。とりわけ手術室や集中治療室(ICU)のような患者が最も無防備な区域では携帯電話の禁止を支持した。
ヘイズはちなみに埋め込み型ペ−スメ−カ−と携帯電話研究の第一人者である。