携帯電話基地局の設置収益を国税庁が指摘

報告者:電磁波問題市民研究会・過敏症担当

 2013年2月17日付けの毎日新聞によると、「携帯電話の基地局(アンテナ)の設置場所として、マンション屋上などの共用部分を携帯電話会社に貸して賃料を得ているマンション管理組合が、国税当局から申告漏れを指摘されるケースが出始めている。管理組合は、税法上、非課税の「人格なき社団」に分類されるが、収益事業をする場合は課税対象になるからだ。携帯電話業界では、高速通信サービス(LTE)の基地局が急増。太陽光発電パネルの設置も同様の扱いになると言い、屋根貸しビジネスの落とし穴と言えそうだ」との報道があった。
 賃料があれば収入なので、税金を払ってくださいというもので、10年(法人の場合は7年)遡っての申告が必要になる。大阪府内のある管理組合は、5年間で約5000万円の申告漏れを指摘されたケースもあるそうだ。
 さて、この件をじっくり考えてみれば、課税は当たり前のことである。遡って課税される場合、管理組合に現金があれば問題ないが、補修費や管理費に充ててない場合は、問題である。そういうケースは、少なくないのではないだろうか。
 というのも、基地局を設置するときに、管理費に補填でき、入居者が支出する管理費が安くなると判断し、設置を決めたことが考えられ、その収入は使われているだろうからだ。基地局を設置するときに、携帯電話会社からは、賃料の収入に関しては税金がかかるので、申告をしてくださいという案内はあるのだろうか。

携帯電話基地局設置反対はお金の多寡ではないが
 こういう報道が出るからには、管理組合がそんな話聞いていないと、困惑しているという背景がうかがえる。管理組合が、そんな話は初めに言って欲しかったというのに対して、携帯電話会社側からの弁を想像すると、「収入がある場合、申告するのは当たり前。わざわざ説明する必要はない」ということが考えられる。少しきびしい言い方になるが、管理組合も、そのお金に目がくらんだ可能性もある。しかし、携帯電話会社はしっかり説明すべきである。
 少し楽観的かもしれないが、今後、集合住宅で基地局設置を打診されたら、健康影響だけでなく、課税されることを議論にあげると、考え直す人も増えてくるのではないだろうか。わずかな収入に、それに課税までされることで、さらに収入が少なくなる。そんなお金のため(本来はお金の多寡ではない)に、健康を犠牲にしてもいいのですかと。

なぜ、今課税されることになったのか
 もう一つ、この報道には、疑問が残る点がある。太陽光パネルやLTEの増加を持ち出しているが、携帯電話基地局は、以前も急激に増加した時期があった。NTTドコモやauが、デジタル形式の携帯電話を普及させた頃である。
 そのとき、国税局は何もしなかったのだろうか。その頃は、ユビキタスなどと通信環境の整備が求められていたので、基地局設置のため課税すると、そのスピードを抑えかねないと何らかの力があり、一通り行き渡ったところで、そろそろ課税をと考えたのか。そう考えてしまうのは、深読みし過ぎだろうか。
 いずれにせよ、携帯電話基地局の設置に関しては、慎重に対処すべきであることには違いない。


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