<海外情報>
マイクロウェ-ブニュ-ス2000年11・12月号より
(抄訳・TOKAI)
脳内の視床部分と関係
この効果(影響)を生む脳の組織は、灰白質(脳内の神経組織)や大脳皮質つまりより高レベルのメンタル機能を管理する脳の「外側部分」ではないように見える。アケアマンは「RF/MW(高周波=ラジオ波・マイクロ波)は視床のような深い部分に影響を与えているように思える」と語った。
「視床(ししょう)」は大脳皮質の下にの側面に集ある脳幹にあり頭蓋骨から数センチメ−トルの所にある。視床は心臓の鼓動や意識と関係なく動く機能に関係している器官だ。今回の研究は、大脳皮質より下の部分がもっとも電磁場を感じる組織、ということを示したのかもしれない。
今回の組織の感度は明白なものだったが、この効果が一般の携帯電話にも同じ効果を示すかどうかは明らかではない。今回の実験で使われた高周波(RF/MW)は、通常の状態よりより放射線(電磁波)が脳内部に曝露されるように設計されているからだ。
直接この部分の研究を行ったのは、同大学のアレクサンダ−・ボ−ベリ−(Alexander Borbely)博士グル−プであるが、このグル−プメンバ−は、睡眠研究では世界トップレベルの研究者として知られている。彼らが観察した脳波図(EEG)の変化は、睡眠中にGSM波を浴びせて変化を見るという前回の研究と同じ変化が見られた。
脳波の変化は睡眠後3時間も続いた
今回の研究で見られた効果は高周波(RF/MW)を曝露された後に起こったが、これは“一時的”なものと彼らは見ている。脳波図(EEG)反応の増加は研究対象とした3時間の睡眠時間の間続いた。眠りにつくに必要な時間や、睡眠の質、あるいは睡眠の進行状況(夢を見ていることを示す早い目の動きとしてのREM〔急速眼球運動〕)においては変化はなかった。
アケアマンはこう言った。「私たちの研究が携帯電話使用者に関係するかどうか評価するのは難しい」。彼らの論文でも「健康に悪影響あると結論づけるには早急だ。まだ基本的なメカニズムが解明されていないからだ。」と述べている。
高周波は頭の横側に集中するのだが
前に行った実験では、脳の左右両方を同じように照射するため頭の上からGSM波を浴びせた。今回の実験では耳の上に電磁場を集中させた。高周波(RF/MW)は携帯電話のアンテナに一番近い頭の側面に集中してあたるので、脳の横側でEEG(脳波図)の効果を見ようとしたためだ。
驚いたことに、アケアマンらは脳のどちらの側に高周波を浴びせてもEEG変化は両側とも均等であることを知った。この釣り合った効果は、大脳皮質の下つまり脳の中央部の構造と関係していることを示しているのかもしれない。
視床はもっとも電磁波を感じる部分
このことは被験者のEEG(脳波図)で見られる変化の型でも裏付けられる。前回と今回の両方の実験で、RF/MW(高周波)は、深い眠りの段階で出てくるEEG信号の型である“sleep spindles”(睡眠の軸)のところでEEGのパワ−は増加した。アケアマンらは「視床は“sleep spindles”生成と深く関係しているので、視床こそEMF(電磁場)をもっとも感じる部分なのだ」と指摘した。
『NeuroReport』論文では論じなかったが、曝露評価からのデータはこの仮説を補強している。頭部モデルで行った曝露測定では、皮質の下の部分で高い吸収値を示した。それは大脳皮質の数値を超えていたかもしれない。
脳のこの部分がもっとも影響を受けることを示す、3つの証拠がある。1つはEEG(脳波図)の変化が脳の両サイドで均等だったこと、2つはEEGの変化の型、3つはこの実験で使われた電磁波の曝露がもっとも大きかったのがこの部分であったことだ。
アケアマンらはEEG(脳波図)効果をコントロ−ルするパラメ−タ−を明確にするため、特別な電磁場の強度・周波数・変調といった研究をさらに行うことを提案した。アケアマンは「行動のメカニズムを調べるためもっと研究が必要だ。動物研究はそのために有効かもしれない」と語った。
前回の実験で見られた睡眠を軽くする効果(眠ってから目を覚ますまでの時間を短くする効果)は今回は見られなかった。彼らは前回出た効果は「慣れないセッティングという環境が被験者の睡眠を妨害するほうに働いたのでは」とみている。同じことは、被験者が早く眠りにつかすために、夜の睡眠を4時間までに制限するというプロトコルの変化を見る実験でも出た。