<海外情報>
環境先進国ドイツの意識と生活
ドイツのミュンヘンを訪問した時に、ドイツに住む日本人の方とお話した内容が、とても興味深かったので紹介します。
ドイツを訪れたのが、2011年10月でした。この頃、日本では福島原子力発電所事故のについての報道は、やや減っていたように思います。しかし、ドイツでは毎日のように、日本の福島原子力発電所事故と原子力発電のあり方について、詳しく報道されていたそうです。
私たちが現地に住む日本人通訳の人と現地で落ち合ったときに、「日本は大丈夫ですか? わたしたちはとても心配しいています」と真剣に聞かれました。当時の日本では、ただちに影響はないという言葉に慣らされていた私たちは、そのとき改めて事故の大きさを思い知らされました。
電力会社が選択できるドイツ
ご存知の方も多いと思いますが、ドイツでは、発電方法やその会社の考え方や料金などで、電力会社を選ぶことができます。例えば、どんな発電方法でもとにかく安いほうが良いとか、電気代はやや高くても環境を考えている(原子力発電ではないなど)会社から電気を買いたいとかです。
「どちらが良いのでしょうかね」と問うと、その方は「そんなことは、迷うことはないです。私は、高くても環境のことを考えている会社から電気を買います」ときっぱり言いました。さらに、「いや私だけではなく、私の周りの人はそう考えていますよ」と。それがドイツの脱原発につながったとも言えます。
朝日新聞が2011年5月に実施した原子力発電に関する世論調査で、ドイツは反対81パーセント賛成19パーセントと、原発にNoという意見がはっきり現れていました。一方事故の当事者である日本は、事故後2か月後ではありましたが、反対42パーセント賛成34パーセントで、反対が数字は上回っていますが、反対の声がそれほど大きいとはいえない結果になっています。
お話をしたドイツ在住の日本人の方は、事故の被害を受けている当事者がなぜ原発にNoを言わないのか、不思議で仕方ないともお話していました。事故から1年以上が経過した現在も、事故は終息していないのです。
政府は、事故は過去のように捉え、あの事故はアンラッキーな出来事で、二度と起こるはずはないと、思い込んでいるように見えます。
夜8時に店は閉まり人影もまばら
さて、環境先進国といわれるドイツですが、環境のことを考えているのではと思えるとことが、いくつかありました。
まず、ミュンヘンでは、夜8時には多くのお店が閉まってしまいます。飲食店の一
部は開いていますが、コンビニエンスストアはなく、商店やスーパーは閉店します。そのため、街は人影がまばらになります。ひるがえって、日本の東京では、煌々と明かりが輝き、人が多く行き来していますので、大都会であるはずのミュンヘンで、東京から来た私たちは、夜の静けさに驚かされました。
しかし、夜は暗くて人はあまり出歩かないものだという、当たり前であったことが思い出されました。東日本大震災の後、電力量の逼迫から節電が求められ、東京の街が薄暗くなった時期がありました。そのとき、暗くてもいいと感じた人や落ち着くという人が少なくなかったはずです。日が出ているときに動き夜は休むという、生物としての自然な生活の大事さを感じました。
さて、私たちは日曜日の夜にドイツを出国する予定であり、昼間は時間があったので散策する予定でいました。しかし、通訳の人から、「日曜日はお店がほとんどお休みしますよ。お土産屋さんも全部休みます」と聞き、そうなのかなと疑心暗鬼でした。さて、日曜日に街に出ると、確かにお店は閉まっていますし、観光地にある、露天のお店まで開いていません。市街地は車の進入が禁止され、歩いている人は観光客ばかりです。博物館や美術館は日曜日には入館料が安くなり、現地では、休みの日は文化施設に行く人が多いそうです。休みの日は休むということが徹底されていて、これは結果的に省エネルギーになるのだと実感しました。
生活のあり方を考える機会に
さて、日本はどうでしょう。24時間開いているコンビニがいたるところにあり、街には光が溢れています。便利で快適なことは良いのですが、これを当たり前のように享受するのではなく、本当に必要なものは何か、何をすべきで何をすべきでないのか、私たちの生活を見直す時期が来ているのではないでしょうか。
ドイツを見習おうと言うつもりはありません。ただ現実にこんな国もあるのだと知っていただくためにドイツの生活の一部を紹介しました。
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