電力会社10社が送電線位置情報の提供を拒否
毎日新聞2012年1月30日より
国土地理院は、紙の地形図(縮尺2万5千分の1)に代わるものとして、2011年2月から、インターネット上で電子国土基本図を公開している。紙の地形図は測量に基づいて作製していたが、電子国土基本図は、航空写真に、自治体や法人などから寄せられた道路や建造物の位置情報を、反映させて作っている。
送電線や鉄塔などは、航空写真では確認しにくいため、国土地理院は、昨年末までに電力会社10社に位置情報の提供を求めた。ところが、全部の電力会社がこの要求を拒否したため、送電線や鉄塔の表記が電子国土基本図から消えてしまった。
関西電力の担当者は、毎日新聞の取材に対し、位置情報がテロなどに悪用される恐れもあるので詳細な情報は提供していないと話した。
上越教育大学・志村喬准教授(地理教育学)は「送電線や鉄塔の記載は登山などの際に現在地を確認するのに役立つ。地理や地図学習の大きな障害になる恐れもある」と指摘。日本国際地図学会評議員の田代博・筑波大付高教諭は「ネット上ではより詳細な航空写真が公開されており、時代錯誤も甚だしい」と話した。
日本地理学会は、鉄塔などの情報を引き続き掲載するよう求める意見書を、国土地理院へ提出した。
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