<海外情報>
大久保貞利
2011年5月31日に記者発表した、無線周波数(高周波)電磁波を2B(発がん可能性あり)に評価するとした、WHO(世界保健機関)IARC(国際がん研究機関)のワーキンググループ(作業部会)の主要結論と発がんハザード評価の簡潔な報告が、同年7月1日のランセット・オンコロジー誌に掲載されました。
内容はあくまでサマライズ(概略)であり、IARCの詳細な評価は、近いうちに発表が予定されている、モノグラフ第102巻で示されます。
極低周波電磁波に関しては、2001年にIARCが極低周波磁場を2Bと評価し、さらに、2007年にWHOが極低周波電磁波の環境保健基準を発表しました。今年の発表では、高周波電磁波(電磁場)の発がん評価が2Bと出たので、今後はこの評価をもとにリスク評価が行われて、高周波電磁波の環境保健基準が発表されるでしょう。発表の時期は未定です。
高周波電磁波を2B(発がん可能性あり)とした根拠として、携帯電話やコードレスフォンから出る電磁波と脳腫瘍発症の関係を示唆する、疫学研究と動物実験研究の二つをあげました。極低周波電磁波は疫学研究のみを根拠とし、動物実験については分からないとしていました。
聴神経腫のリスク増加を支持する証拠として、日本の研究が紹介されています。これは2010年11月に発表された、東京女子医大医師らの疫学研究をさしており、その内容は、1日20分以上携帯電話を使用すると聴神経腫リスクが増大としています。
2010年6月に発表されたインターフォン研究では、曝露と携帯使用が同じ頭部側で10年以上あるいはヘビーユーザーの場合はリスクが増加としていますが、全体としては、携帯電話の使用と神経膠腫リスク・髄膜腫のリスクは、どちらも増加しなかったとしていました。今年の発表で発がん可能性ありとしたのは、2010年6月で未発表だった聴神経腫調査結果が加わったこと、さらに、その他のプール分析を総合したためと思われます。