環境省エコチル調査国際シンポジウムが開かれる

2011年2月4日に、東京大学・山上会館で、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)国際シンポジウムが開かれました。以下はその報告です。

エコチルとは
 エコチルとは、エコロジー(環境)とチルドレン(子ども)を合成した言葉です。環境中の化学物質等が、子どもの健康に与える影響を検証するために、環境省が平成22年度から、10万組の親子を対象に、子どもが胎児期から13歳に達するまで追跡しようと、子どもの健康に関する全国調査を開始しました。この全国調査を環境省はエコチル調査と呼んでいるのです。
 今回の国際シンポジウムは、エコチル調査の重要性を国民に広く知ってもらう目的で、デンマークと韓国と米国から専門家を呼び、国際連携の可能性も含めて、今後のエコチル調査の方向性を明らかにしようと開催されたものです。

シンポジウムは2部形式
 シンポジウムは2部形式になっており、第1部では、日本のエコチル調査と諸外国の調査を紹介し情報交換を行う、第2部では、各国の子どもたちの調査をより大きな成果にするため、国際連携の可能性を議論するとしています。
 シンポジストは、日本から佐藤洋氏(東北大学大学院医学研究科)、デンマークからマッズ・メルビー氏(デンマーク国立血清研究所)、韓国からエウンヒ・ハー氏(梨花女子大学校医学専門大学院予防医学科)、米国からジェシカ・E・グラバー氏(ユニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健発達研究所)、国際機関からルス・A・エッゼル氏(WHO=国際保健機関)、デジレ・モンテシロ-ナルバエズ氏(UNEP=国際環境計画)、それにテリ―・ドワイアー氏(マードック小児研究所・国際小児がんコホートコンソーシアム)の7人です。

国際調査開始のきっかけ
 国際的に大規模な、子どもと環境の関係をみる調査行われるきっかけは、1997年のG8環境大臣会議の合意にあります。これはマイアミ宣言と一般に言われています。環境ホルモン問題のきっかけとなった、『奪われし未来』(シーア・コルボーンら著)の発刊は1996年ですが、当時の環境悪化が子どもの未来を奪うことが、世界的話題となった時代を反映して、マイアミ宣言は出されました。子どもの健康と環境因子との因果関係を、国際的に調査研究することは、悪いことではありません。

問題は残っている
 エコチル調査にも問題はあります。一つは、胎児から13歳まで追跡調査するということは、原因か解明されるまでに、早くても14年以上かかることになります。環境問題が激化している今日、これではあまりにも悠長すぎないかという点です。徹底した研究がなされることは悪いことではありませんが、同時に予防原則に基づく対策は早急に研究とは別に実施すべきです。
 もう一つの問題は、環境因子を化学物質等としている点です。現在では、子どもの環境問題の重要な因子には、化学物質と同時に電磁波があります。
 エコチル調査には、電磁波を対象として入れるべきです。会場からも、どうして電磁波を対象としないのかという質問が出ましたが、環境省側は電磁波は測定しにくいと応えて、入れることに難色を示していました。


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