<会員寄稿>

トンデル博士講演会で感じたこと

 トンデル博士に最初会場外で出会った時、「留学生が聴講に来てる!」と思った程、若々しくチェックのシャツにジ−パンにリュックというラフな服装でした。会場に入ってみて、講師だと知り驚きました。トンデル博士の友人の今中氏(京大原子炉研究所)が通訳をし、今中氏の友人の荻野晃也氏が司会をされました。息の合った良いセミナ−になりました。
 第一部は、電気過敏症というテ−マでトンデル博士の講演をメインに、加藤やす子さんが過敏症のアンケ−ト調査の結果の発表を、そして新城医師が、基地局稼働中と停止後のマンションの健康調査の発表をされました。

 最初に通訳の今中氏がトンデル博士に京都の清水寺周辺を案内した時、トンデル博士が「なんでこんなに電柱が建っているの?」と驚いたという発言に、私も2009年5月〜6月にかけて、3週間ばかり娘のお産の手伝いのため渡英し、日本に帰って電柱が気になって仕方がなかった事を思い出しました。
 英国もスウェ−デンのように高圧線は緑地帯にあり、電柱(と思っていた)は3〜4軒に1本で、街燈としてありました。その時は電柱や電線がない事には気づかず、なんだか空間がすっきりしているなと思っていました。日本に帰国してから、林立する電柱や張りめぐらされた電線、さらに他にもさまざまなものがくっついていて、なんと薄ぎたない光景と気になって仕方ありませんでした。

 電気過敏症についてですが、過敏症の人が存在していることは認めるが電磁波が原因とは思われないという説明を、日本の「偉い人」からよく聞きます。しかし、トンデル博士はスウェ−デン国立厚生衛生局の医師ですが、電磁波で過敏症を発症したことを証明する試験方法が今のところないけれど、電気製品の近くで痛みを感じる人がいるのも確かなので、電気に過敏性を持つ人が医学的な診察を受けることは重要ですと言われました。そして、さらにトンデル博士は、NGO団体「電気過敏症のためのスウェ−デン協会」が患者に対し、政府の支援を受けて、法律に従って特別な診断はなくても、個々の能力と障害との評価に基づいて、色々な社会的かつ医学的な支援をすることができるようになっていると言われました。
 この話を聞いて、私は日本の国はやはり変だなと思いました。電気製品、電力設備、テレビ・ラジオの放送設備、ケ−タイ基地局、etcのどれもが政府の許認可の上に成り立っているのに、電磁波を浴びて体調不良になった人を、診てくれる所も訴えていける場所も無くて見捨てられ、あげくに、そうした体調不良の人は「心理的ストレスだ」と言われてしまうのですから。それでいて、税金や健康保険料は支払い続けなければならないのが日本の現実です。
 国が国民をこんなに粗末に扱っていいんですかと、トンデル博士の講演を聞いて感じました。

<電磁波問題市民研究会よりのコメント>
この講演は2010年9月5日に大阪市立弁天町市民学習センターで行われました。講師のマ−チン・トンデル博士は、スウェ−デンのヨ−テボリ大学サ−レンスカ病院の医師です。労働環境医学の臨床医として電磁波過敏症の人を診察していますし、大学で電磁波過敏症の講義もしています。一方で、政府の電磁波問題に関する厚生委員会のコンサルタントも務めています。


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