□3階建てアパ−ト屋上に建った基地局
4年前の2006年10月、宮崎県延岡市の3階建てアパ−ト屋上に、KDDIの基地局が建設されました。住民有志は反対の取り組みを行ないましたが、同年10月末には基地局は稼働しました。稼働後1ヵ月にも経たないうちから、耳鳴り等の健康障害が発生し、住民たちは4000人以上の反対署名を集め市長に提出しました。
2007年5月に、住民たちは104戸を対象に自主的に健康アンケ−トを実施したところ、42戸の63人が回答し、耳鳴り、頭痛、肩こり、不眠等の自覚症状を訴えていることがわかりました。
□市実施の健康相談でも健康障害確認
住民の要請で延岡市は、2007年11月から12月にかけて3日間、保健師4人を派遣して、住民相談を実施しました。その結果でも、相談した住民60人のうち45人が、耳鳴りや頭痛等を訴えました。この45人のうち30人は、基地局稼働後に症状が出たと訴えました。
2008年7月に、住民たちは独自に、第2回目の健康アンケ−トを実施しました。結果は、149戸のうち79人が耳鳴り、肩こり、不眠等の健康障害を訴えていることがわかりました。
□返事を全くしないKDDI
住民たちは、延岡市だけでなく、熊本市にある九州総合通信局やKDDIにも働きかけを行なっています。こうした一連の取り組みや健康アンケ−ト等の具体的な結果を踏まえて、住民たちはKDDIに基地局撤去を要求してきました。それにもかかわらず、KDDIは返事を全くしません。
□ついに住民たちはKDDI相手に提訴
2008年10月に、住民たちはKDDI携帯基地局を撤去する会を正式に発足させました。
2009年には、弁護士6名が現地調査に入りました。その結果、多数の住民が耳鳴り、鼻血、頭痛等の症状が基地局稼働後に発症している事実、そして入院等で基地局から離れたところにいると症状が緩和、消失している事実を確認しました。
2009年12月16日に、遂に住民30人は、KDDIを相手取り、基地局の操業停止を求めて、宮崎地方裁判所延岡支部に訴状を提出しました。弁護団は26名という充実ぶりです。
□はじめての被害を争う裁判
今回の裁判は、九州地区で9番目の裁判です。これまでの裁判は、基地局電磁波は潜在的に健康影響をもたらすので基地局の操業を停止ないし基地局建設を差し止めるよう求めるものでした。言い換えると、被害を未然に防ぐための裁判です。これに対し、この裁判は、すでに健康被害は出ているという事実を争うものです。このような基地局を巡って、実被害があるのかないのかを争う裁判は、全国で初めてです。
□裁判が始まった
2010年3月3日に、宮崎地方裁判所延岡支部で歴史的な裁判が始まりました。
弁護団長と、原告団長がそれぞれ意見陳述を行いました。原告団長は撤去する会代表でもあり、その訴えは胸を打ちました。弁護団長の意見陳述は具体的で迫力がありました。