<海外情報>
□南米でも基地局問題深刻
南米のチリで、画期的判決が出ました。
首都サンチャゴ市からそれほど離れていない、ランカグア州オイギンズ地方のサンタクルス町に建設された、携帯会社エンテル(Entel) PCSの携帯電話鉄塔に対し、カルドエン財団理事長ディエゴ・カルドエン・デラノ氏が、撤去を要求して裁判を起こしました。
2009年12月4日、ランカグア上訴裁判所(高等裁判所)は原告を支持し、基地局撤去の判決を出しました。
□憲法上の権利擁護から撤去判決
判決は、裁判所公吏のカルロス・バニャ−ドス氏、カルロス・アランギス氏、および弁護士代表のアラミオ・カルモ−ナ氏の3人の判事が、一致して出されました。
判決根拠は、チリ憲法の第1条(精神的・肉体的権利)、第9条(健康保護の権利)および第8条(環境汚染から離れて暮らす権利)です。
□問題点として二つの理由
基地局の具体的問題点として、判決は二つの理由を述べています。
一つは、チル公立衛生研究所の情報として、携帯電話中継基地局アンテナから発信される電磁波は健康を害する可能性があるからです。
電磁波の健康影響については、まだ確定しておらず有害か否かは議論段階にあります。しかし、もし有害だとすれば、その影響は重大です。
これについてはタバコの例があります。1960年代に、タバコが有害であるとする証拠は示されていないとして、タバコは商業的自由の権利を有していました。しかし、そのことで避けられたはずの将来的なタバコからの死が放置されたと判決は指摘しています。
二つ目の理由は、基地局が建設された地域は景観保存地区であり、基地局は景観を害するとしています。
<電磁波問題市民研究会のコメント>
チリの高等裁判所で、基地局問題に画期的な判決が出ました。2009年に出されたフランスのベルサイユ判決並みの快挙です。タバコを例にして、有害性が確立していなくても、予防原則的立場から撤去せよとしていますし、景観の問題にも触れています。チリは世界一の銅産出国ですが、ランカグアには埋蔵量世界一という鉱山があり、鉱山で栄えている地域です。チリでは、この他にも、有名な港町であるバルパライソ市等でも、基地局問題が燃え広がっています。