<海外情報>

インデペンデント
2007年4月15日
(抄訳:TOKAI)

ミツバチはなぜ集団逃亡したのか

穀物生産危機につながる問題だ

□突然にコロニーを捨てるミツバチ
 B級のホラー映画のような事態が、世界的に起こっている。
 ミツバチはコロニーを形成し女王蜂を中心に集団生活をするのに、集団そのものがある日突然消えるという現象が、世界のあちこちで起こっている。
 2006年の秋に、この現象は養蜂家の間で噂として流れた。しかし、米国の半分の州では既に起こっている。
 コロニー(集団)を形成しているミツバチが、女王蜂と卵とわずかな幼年期のハチを残して、こつ然として巣箱から消える。それはまるで19世紀半ばに起きた「メアリー・セレステ号事件」のミツバチ版だ。メアリー・セレステ号事件とは、1872年にニューヨークを出帆しイタリアのジェノバに向かった中型帆船メアリー・セレステ号が、4週間後に大西洋上で発見されたが、船体や艤装になんの異常もないのに、乗組員だけが消えていたという有名な事件だ。

□携帯電話の電磁波が原因説
 消えたハチは、どこにも発見されない。通常は、巣箱に残った蜂蜜や花粉をねらって、寄生虫や野性動物や他のハチが来るのだが、なぜか捨てられた巣箱に寄りつかない。
 何人かの科学者は、携帯電話やハイテク製品から出る電磁波が原因ではないかと主張している。すばわち、携帯電話から出る電磁波がハチのナビゲーション(航行)システムに干渉し、ハチの帰巣能力を邪魔するというものだ。この説を支持する証拠も、いくつか出てきている。

□虫媒を妨げて食料難問題引き起こす
 米国で始まった「ミツバチコロニー崩壊騒動」は、ヨーロッパに広がっている。具体的には、ドイツ・スイス・スペイン・ポルトガル・イタリア・ギリシャ・英国である。
 米国では、西海岸で商業用養蜂の60%が打撃を受け、東海岸の70%が打撃を受けている。英国でも、ロンドンの最大養蜂家の一人であるジョン・チャプルが、彼の経営する40の巣箱の内23がやられたと発表している。
 アルバート・アインシュタイン博士は、「世界の収穫量の多くはハチの花粉媒介(受粉)に依存している。もしハチがこの世から消えたなら、人類は4年も生きられないであろう」と警告した。

□諸説あって確立はしていない
 この現象がなぜ起こっているのか、正確なことは誰もわからない。英国環境食糧農業省は、英国のミツバチコロニー崩壊騒動の証拠はまったくないとしている。ダニ説・寄生虫説・地球温暖化説・遺伝子組替説など、原因仮説は他にもいろいろあり、どれも決め手になっていない。
 ドイツの研究では、送電線の周辺でコロニー崩壊が起こるとしている。ランドー(Landau)大学の限定的研究では、ミツバチは携帯電話が近くにあると巣箱に帰らないとしている。ランドー大学の研究を行なったヨーチェン・クン博士は、「この研究結果は一つのヒントである」と語っている。米国で90年代に政府や企業が資金提供した、大規模携帯電話研究のチーフで、携帯電話は有害だと発表したジョージ・カルロ博士は、「ミツバチコロニー崩壊は電磁波が原因であると、私は確信している」と語った。
 携帯電話の危険を示す証拠は増えているがまだ確立したわけではない。がんと同じように、原因の証明に10年はかかるだろう。


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