□再三の遅れ
WHO(世界保健機関)の極低周波に関する環境健康基準(Environmental Health Criteria〔EHC〕)の発表が遅れている。当初は2006年秋だったのが2006年中になり、続いて「2007年2月」と変更したが、それもなく「今年春」(一説では5月説)へと変わりつつある。特に「2007年2月」はWHO日本代表の発言だったので私たちもそう思い込んでいた。
□なんで遅れているのか
すでに環境健康基準報告のためのドラフト(草案)は出尽くしている。そこから類推されているのは、(1)今回「○○ミリガウス」といった具体的数値はクライテリア(基準)の中には入らない。数値はWHOと協力関係にあるICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)で作成する。(2)なんらかの文言で「予防策」の必要性が入る。おそらく「予防原則(precautional principle)」までは踏み込まず「予防方策(precautional measureかprecautional approach)」どまりであろう。(3)今回目玉として「各国向けの勧告」が入る可能性がある、である。
ドラフトがほぼ出ているのになおかつ遅れる理由としては、以下が考えられる。
一つには、国際EMFプロジェクトの最高責任者が昨年、マイケル・レパチョリからエミリー・バン・デベンダーに変わったが、彼女がドラフト内容になんらかの面で不満でゴネている可能性。
二つには、今回のクライテリアに具体的数値は入れず、数値化はICNIRPに丸投げしたが、そのICNIRPができれば同時に勧告出したくて、そのため全体が遅れている可能性。
三つには、「各国個別向けの勧告」が出そうだが、厳しい勧告が出そうな国がロビー活動で「内容を薄めさそう」と抵抗している可能性。
□日本政府の後向き対応は批判される
いずれにしても、WHOの環境健康基準が出れば、北欧を含めた環境先進国ではWHOの内容を超えた基準づくりに乗り出すであろう。日本のようにIH調理機やオール電化が普及し、子供に携帯電話を売りまくろうという電磁波に無自覚な“先進国”は国際的に批判されるであろう。(もっとも、国際的に批判されても国内メディアが報じなければ、もっとひどい事態だが)