<海外情報>
デーリー・メール
2006年10月23日
(抄訳:TOKAI)
携帯電話使うと精子の数も質も落ちる
米国クリーブランドの研究チームが米国生殖医療学会で発表
□携帯電話使う男性にショッキングな話
2006年10月22日、ルイジアナ州ニューオーリンズ市で開催された米国生殖医療学会でオハイオ州クリーブランド・クリニックのグリクマン泌尿器科研究所チームが「携帯電話と男性精子の関係」についての研究結果を報告した。
発表したのは、グリクマン(Glikman)泌尿器科研究所のアショック・アガーワル教授(Ashok Agarwal)(研究チームのリーダー)である。研究チームは、インドのムンバイ(旧ボンベイ)の不妊治療病院の医師たちの協力で、361人の男性精子を調べた。
361人の調査対象者を、携帯電話使用時間を中心に4グループに振り分けた。まずAグループは「携帯電話を全く使わない人」(40人)、次がBグループで「携帯電話を1日2時間以内使う人」(107人)、3つがCグループで「携帯電話を1日2時間以上4時間未満使う人」(100人)、最後が「携帯電話を1日4時間以上使う人」(114人)だ。
男性精子は4項目にわたって調べた。4項目とは「1cc中の数」「運動している精子の割合」「精子が生存しているか否か」「正常な形の割合」である。「運動している精子」とは、精子は子宮管を通り卵子にまで到達するには豊富な運動量が必要なので、元気な精子でないといけない。「精子の生存」とは、運動していなくても生存している精子ならば自然受精はむりでも人工受精は可能である。「正常な形」とは、精子の頭が楕円形で酵素で被われ、尾がムチのように長くて泳ぐ力をもっている。
| 携帯電話使用時間/日 | 精子数(万/cc) | 運動割合 | 正常割合 |
A | 全く使わない(40人) | 8589 | 0.68 | 0.4 |
B | 2時間以内(107人) | 6903 | 0.65 | 0.31 |
C | 2〜4時間(100人) | 5887 | 0.55 | 0.21 |
D | 4時間以上(114人) | 5030 | 0.45 | 0.18 |
□長時間使う男性は特に要注意
WHO(世界保健機関)は、1cc中に正常形で運動量のある精子が2000万個以上ないと不妊のおそれが高いとしているが、携帯電話を1日4時間以上使う男性は、数の上では約5千万個あるが、運動量や正常な形まで含めると2千万個を下回り、「不妊のおそれ」に該当すると研究チームは指摘している。
アガーワル教授はこう語っている。「世界中で10億人以上の人が携帯電話を使っているし、毎年20〜30%の割合で使用者は増えており、5年後には20億人に達するであろう。携帯電話を使っている人は、携帯電話をあたかも歯ブラシのようにしか考えていないが、携帯電話が生殖力をだめにしているかも知れないことは考えようとしない。まだ生殖力をだめにすることは証明されたわけではないが、この研究結果のインパクトは大きい。なぜならば携帯電話は生活の一部になってきているからだ」。
アガーワル教授は、携帯電話の電磁波か熱が男性生殖器に影響を与えているのではとみている。「携帯電話の影響の証明には時間が必要だが、男性ホルモンのテストステロンをつくる睾丸のライジッヒ細胞(睾丸の問責組織細胞)に電磁波を浴びせるという動物実験が以前行なわれ、その実験で影響を受けていることが示された。電磁波はライジッヒ細胞に直接ダメージ与えるのかもしれないし、精子の生産を減らすのかもしれない。メラトニンホルモンを減らし、精子運動を鈍らせている可能性もある」とアガーワル教授は語っている。
熱と精子生産は関係があり、睾丸は冷やさないと精子はつくりにくい。
電磁波と精子の研究については、2004年にハンガリーのセグド大学の研究チームが「携帯電話を使うと使わない人より精子数が30%減り、精子の運動力も減る」という研究結果を発表した。また2005年に英国のニューカッスル大学のジョン・エイトケン博士らが、マウスの精子に携帯電話と同じマイクロ波を照射したところDNAがダメージを受けたという研究を発表した。
これらに比べると、今回の研究結果は、規模してもデザインにしても、はるかにすぐれている。
これに対し、アラン・パシー(Allan Pacey)博士は反論している。彼はシェフィールド大学の男性病学の上級講師で米国生殖医療学会の名誉会長をしている人物だが、「この研究はいい研究だが、電磁波が原因しているとの内容にはうなづけない。携帯電話が精子に影響しているというが、1日に4時間も携帯電話を使う人はストレスの多い仕事をしているかもしれないし、座っている時間の多い仕事かもしれない。ジャンクフードをよく食べ太っているからかもしれない。携帯電話以外の理由で精子が減っているという説明のほうが納得できる」と語っている。イギリスの男性はこの10年間で精子が29%も減っているが、その原因としては肥満・タバコ・ストレス・公害汚染・環境ホルモン、が考えられている。
英国の携帯電話人口は約4千万人だが、市民団体『パワーウォッチ』代表のアラスデア・フィリップスは「携帯電話使用時間と男性の生殖力の低下には相応の関係がある。目・胸・睾丸はエネルギーを吸収しやすい部位であり、多くに男性は携帯電話を腰のベルトにつけている。私は膝の上でケータイメールを2〜3時間連続で打っている人を見たことがあるが、電車のような金属の箱のような中では携帯電話を送信するのにかなりの出力がいると思う。電車内で携帯電話メールをしたい人は携帯電話を窓に近づけて送るようアドバイスしている」と語っている。
携帯電話の使用時間とは、電話やメールしている時間だけでなく、ON状態にしていれば発信していて使用しているのと同じなのである。携帯電話を腰のベルトにつけていれば股間に熱を生じ、精子生産に影響を与える。
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