東京都品川区は、小学生の登下校中の誘拐や性犯罪の被害を守るためにと、区内小学生約1万2千人全員に、防犯ベル付きPHSを持たせることを決め、6月末からモデル校で実験を始めた。
児童に無料配布されるPHSは愛称が「まもるっち」という。登下校時に首に掛け、危険を感じたらピンを引く。すると区役所のセンタ−に緊急通報が届いて本人の氏名と居場所が特定され、待機する係員と通話できる。保護者・学校・現場周辺に住む「協力者」20ヵ所にもメ−ルか電話で非常事態発生と場所を自動的に通知し、大人が駈けつける、という。
□子供にケ−タイ持たせていいのか
まず、品川区当局がおかしいのは、先進国の潮流である、子供にケ−タイは持たせないことに逆行していることだ。電源が入っていれば、通話しなくても位置確認のためPHSと基地局は電磁波を発信し合っている。そうした電磁波被曝への配慮はまったくない。
□さらに子供のプライバシ−権を侵害
ジャ−ナリストの斎藤貴男さんは「会社にいる上司に居場所を監視されたり、空腹を覚えた時に携帯電話が突然、近くにある飲食店を指示し、それに従うようになったら、私たちは果たして人間と言えるだろうか。個人情報を握られ主体性や尊厳が奪われる社会に、PHSを持たされる子供は確実に慣らされていくだろう。権力機関が国民の監視に利用しないとも限らない」(朝日新聞 2005年7月18日)と警告する。子供にも人権があると国連でも提唱している時代である。
□犯罪を阻止できる保障もない
最近の犯罪は、ある策が講じられるとその策を前提にさらに巧妙な犯罪が発生する、といった具合に“進化”する。銃犯罪には銃をという米国式に対し、カナダはコミュニティづくりを重視し、トロントのような大都会でも鍵はかけないという。日本は米国方式ばかり追っているが、カナダのように、地域力をどう高めるかが求められるべきなのではないか。
親とつながる安心感と品川区当局は言うが、ケ−タイでつながった若者たちに心のつながりが不足しているように、なにかがこのやり方には欠けている。