電線の地中化計画に電磁波低減対策を要望

国土交通省に要望書を提出し交渉を行なう

□五年間で電線地中化率17%を予定
 国土交通省は昭和61年度(1986年度)から「電線類地中化計画」を進めています。市街地の幹線道路(一般国道と都道府県道)の地上電柱を取り払い、電線ケ−ブル類を地中化する計画ですが、すでに平成15年度(2003年度)までで約9%の「無電柱化率」を達成しています。そして、平成16年度(2004年度)から平成20年度(2008年度)までの5年間で、無電柱化率を17%までに上げる計画を進めています。

□電磁波対策への考慮がまったくない
 ロンドン・パリ・ワシントン・ボンなど世界主要都市では、100%電線地中化を達成しており、日本政府として「景観」上からして電線類地中化を進めたいという意図はわからないでもありませんが、現在でも、6600ボルトの電線がから漏洩する、極低周波電磁波の被害にあっている人もいます。その電線を地表すれすれに埋設すれば、地表面での電磁波被曝量は明らかに増えます。
 しかし、そうした電磁波対策への認識がまったくないまま推進計画が進められているので、電磁波問題市民研究会は、2005年7月15日(金)午後3時から国土交通省1階共用会議室で関係省庁交渉を行いました。国土交通省側の出席者は、奥西史伸・道路局地方道環境課道路交通安全対策室計画係長と塚田哲也・道路局総務課連絡調整係長でした。
 交渉は予め渡していた、「電線類地中化事業にあたって、電磁波低減対策をとるよう要望します」と題した要望書の要望項目に沿って進められました。

 以下に交渉の経過を要約します。文中において、<会>は電磁波問題市民研究会の発言であり、<省>は国土交通省側の応答を示します。

□電磁波対策はまったく考えていない
<会>今回の「推進計画」はどんな背景から出てきたのか?
<省>電線類地中化については、昭和61年度から何期かに分けて推進してきた。これまでの取り組みで、市街地の幹線道路(国道と県道)の無電柱化率は9%になった。今回平成16年から20年度の5ヵ年計画で、同じく市街地の幹線道路で無電柱化率を17%までもっていく予定である。無電柱化を進める基本的考えは、(1)安全で快適な通行空間の確保、(2)景観向上、(3)防災の観点、(4)安定したライフラインの確保、(5)情報通信ネットワ−クの信頼性の向上である。
<会> 電磁波低減対策は考慮されたのか。
<省>考慮はされていない。
<会>WHO(国連世界保健機構)が2004年10月に出した「科学的不確実分野における予防的方策展開のためのフレ−ムワ−ク」では、配線構造や送電線あるいは配電線システムについて極低周波磁場を減らせるように配慮し、技術的な実践が可能ならするように提言している。そのことは知っているのか?
<省>今回、要望書を受けたので経済産業省と総務省にも相談したが、WHOの大まかな動きは知っていたが、指摘のことは知らなかった。

□関係省庁と連携はとっているというが
<会>経産省等関係部局との連携や検討にいてどのように進めているのか。
<省>「推進5ヵ年計画」の際は、警察庁・経産省・総務省それに国交省の4省庁で関係省庁会議を開いて決めている。地中化にあたっては電線は経産省、通信ケ−ブルは総務省、道路使用については警察庁が管轄しているためだ。計画ができた段階では年に1回会議を開いている。
<会>そうした会議で経産省や総務省は電磁波についてなにも言わないのか。
<省>出てこない。

□文部科学省の全国疫学調査も知らない
<会>文部科学省が助成金出した1999年から2001年の3ヵ年計画で、日本初の全国疫学調査を実施した結果、「小児脳腫瘍リスクが10.6倍で有意」と出た。そのことは知っているのか。
<省>知らない。
<会>同じ政府内の他省がそうした研究結果を出しているのに尊重しないのか。
<省>先程も言ったように、経産省と総務省に聞いて、WHOの疫学調査や動物実験結果については大まかに知っているが、文部科学省については知らなかった。

□埋める深さは1メートル20センチ程度
<会>どの位の深さに埋設するのか?
<省>地表から50センチ〜1メートル20センチの所だ。地形や地質によってはもっと深い所もある。
<会>電磁波過敏症の人は、今でも道路の電線が走っている側は避けて、電線が走ってない側を歩かざるを得ない人もいる。そうした人にとっては、地下埋設は現在より危険になることを意味している。あなた方は若いが、あなた方の子供たちが安心して暮らせるような道路づくりを考えてもらいたい。
<省>関係省庁の会議では、今日要望されたことを、私たちとして出していきたい。


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