<海外情報>

NRPB報道課のプレスリリ−スより
2004年7月21日
(翻訳:TOKAI)

リスクと予防措置(英国放射線防護局レポ−ト)

□予防策と予防原則について検討
 NRPB(英国放射線防護局)は国民にリスクを伝えるために使う重要な用語を検討するための研究会を開き、その研究会の検討結果をレポ−トとして発行した。用語のうち特に重要なものとして検討されたのは「予防的アプロ−チ(予防策=precautionary approach)」と「予防原則(precautionary principle)」だ。
 レポ−トは、リスクを評価(アセスメント)するにあたっての科学者や専門家の役割について、そしてリスクを管理(マネ−ジメント)するにあたっての行政の役割について、検討している。国民は「リスク評価に関与する組織は公開性と透明性と公平性をもつべきである」ことを求めている。そしてそれができないなら、その組織がリスクに関してアドバイスしても国民の信頼は得られない、としている。

□リスクが不確かでも予防策は大事
 日常生活においての(リスクに対する)警戒は、直感や経験や他人の行動への観察が決め手になる。予防策や予防原則はもっと明確な理由に基づいている。しかし時々予防策と予防原則が混同されているし、日常生活の警戒と予防策・予防原則とが混同されて理解されている。科学や政治の分野ではこれらの用語の混同はせず、もっと明確な使い分けをした方がいい。
 有害なもののリスクについて実験に基づく証拠がある場合は、科学者は予防策を取り入れる。また一般人に対する曝露レベルや労働現場での曝露レベルが許容範囲まで下げられるケ−スならば、科学者は予防策を採用できる。たとえリスクに関する情報が不確かな場合であっても、あるいはリスクに関する情報が実験デ−タによる推論の段階であっても、ガイドラインや基準値設定において補足的な警告として採用することが大事である。電磁波や他の因子によるリスク評価について科学者は(たとえ証拠が不確実な段階でも)予防策を採用するというこのやり方は、まだ広くは知られていないし、評価も十分にはされていない。

□科学者はもっと踏み込め
 予防原則とは、科学的証拠がリスク評価の上で不十分な段階でも、リスク回避のための方策を実施しなくてはならないための政治的用語である。有害なレベルや症例発生の可能性が十分わかっているならば、予防策がとられてしかるべきだ。それは政府や国民が証拠に基づいた決定だと根拠づけができるからだ。たとえリスクレベルやリスクの可能性が不確かであっても、科学者たちは有害なものにアドバイスをすべきだし、利用できる証拠を評価して採用すべきだ。また同じように、科学者たちは予防原則の採用をすべきかどうか、どのように予防原則を採用したらいいか、についてアドバイスすべきだ。そのためにもリスク評価を信頼できるものにするための研究調査をもっとすべきだ。
 今回のNRPBレポ−トでは、「安全」という言葉の定義も様々であることをいろいろ検討し言及している。また科学者の役割、リスク評価における専門家の役割、行政の役割、あるいはNRPBのような組織が公開性と透明性と公平性を必要とすることも言及している。


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