2004年7月22日
総務大臣殿
電磁波問題市民研究会
代表 野 村 修 身
私たちは電磁波公害被害を未然に防止するため活動している環境市民団体です。
毎日新聞2004年7月15日付けによりますと、総務省は7月14日、過疎地でも携帯電話を利用できるようにするため、事業者から徴収した電波利用料を、地方自治体が通信関連施設を作る際の補助金の財源の一部に充てようという制度を導入する目的で、次期通常国会に電波法「改正」案を提出する方針を明らかにした、ということです。
これが事実とすると、今回の総務省の方針は「抜本的な対策」どころか、電磁波問題を懸念し一刻も早く電磁波公害を未然防止するため奮闘している全国各地の携帯電話基地局反対運動の人たちや、現在すでに電磁波被曝で苦しんでいる多くの電磁波過敏症の人たちにとって、看過できない重大な改悪方針と言わざるを得ません。
私たちが今回報道された総務省の方針に反対するのは、以下の理由からです。
(1)電磁波を微量といえども長期間被曝した場合の人体への影響はいまだ解明されておらず現在、どのような影響がおこりうるのか、WHOをはじめ世界各国の研究機関が調査研究している段階です。
(2)携帯電話基地局では、アンテナ部分からマイクロ波(高周波)が出ますし、電源増幅装置等からは極低周波(総務省で言う超低周波)が出ます。極低周波に関してはWHOの正式機関であるIARC(国際がん研究機関)が2001年に「極低周波磁場のヒトへの発がんリスク可能性あり(2B)」と発表しました。また今年ないし来年には、WH国際EMFプロジェクトが環境健康基準(EHC)について報告が出る予定です。高周波については、2006年〜2007年に同様にEHCの報告が予定されています。つまり電磁波の人体への影響が未解明だからこそ、こうした動きがあるのです。
(3)現在、全国の多くの地域で携電話基地局建設を巡って住民と携帯会社の間でトラブルが発生しています。それは電磁波の影響に住民が不安を感じていることと、携帯会社が周辺住民に事前に納得のいく説明をせずに基地局建設を強行しようとしているためです。住民たちが総務省や自治体に、住民の立場に立って仲介するよう求めても「それは民民問題(民間と民間の問題)だから」と逃げ、結果として携帯会社の横暴を許す役割になっているのが現状です。総務省はこれまでは、「業者に住民と話し合いをもつように」指導している、との見解を示していましたが、今回の方針は明らかに従来の方針から逸脱し業者寄りの立場で介入しようという暴挙にほかなりません。行政の中立性を放棄し民間事業者に税金を使って利益供与を図る行為は許されません。
(4)いま世界的に電磁波過敏症が問題になっています。2003年までWHOの事務局長だった元ノルウェ−首相のグロ・ハ−レム・ブルントラント氏が電磁波過敏症であることは北欧の新聞でトップ記事で紹介されていますが、徐々にこの病気は知られつつあります。日本でも電磁波過敏症患者は急増しており、一部の医療機関から症状について診断書もきちんと出ています。電磁波過敏症患者にとっては電磁波源から距離をとることと、被曝時間を短くすることが健康回復への重要なファクタ−です。したがって、携帯電話がかからない地域は彼らにとって重要な避難場所なのです。そうした配慮がまるでなく、「圏外をなくせ」という今回の方針は許しがいたものです。ドイツで2002年に出た「フライブルグ・アピ−ル」には現在2000人の医師が署名していますが、そこでは「これ上の基地局の整備拡大をしない」としています。これこそが世界の良識なのです。