2003年3月1日朝8時からの読売テレビ全国ネット(東京は日本テレビ)報道番組『ウエ−クアップ!』(桂文珍・酒井ゆきえ司会)で電磁波問題特集を約10分間放映した。以下はその内容である。
[注:カッコ内の記述は画面の説明]
酒井ゆきえキャスタ−:さあ続いては2003年『ウエ−クアップ』のシリ−ズ企画です。“地球環境を考える第3弾”、けさは私たちの身近にあふれている電磁波について考えます。
(電磁波過敏症のパ−・セガベックさんが宇宙服のような防護服で登場)
ナレ−ション:ステンレスが織り込まれた防護服を着るこの男性はスウェ−デンの大手携帯電話会社の元開発研究者だ。彼は特殊な作業をしている訳ではない。ある病気に冒され、この服を着けなければ外出することができないのだ。その病気とは電磁波過敏症。
電磁波とは電気の流れによって必ず発生する電気と磁気の波だ。私たちの生活にごく身近にあるもので、大きく分けて二つある。一般の家電製品や送電線などから出ている極低周波と呼ばれるもの。そしてテレビ放送や最近普及した携帯電話に使われているマイクロ波という高周波である。
電磁波過敏症とはこうした電磁波に反応し、症状は一人一人異なるが頭痛・吐き気・めまいなどを起こすものだ。しかし電磁波過敏症は現在正式な病名としては世界的に認められていない。
(カロリンスカ研究所報告書−1992年スウェ−デン−と「白血病リスク」のテロップが出る)
ナレ−ション:電磁波の人への影響については70年代後半から世界的に研究が行なわれ、様々な報告が発表されている。その中には過敏症以外の病気への影響を指摘している報告書もあるが、確実に電磁波が原因だという証明は得られていない。
(ド−ル委員会報告書−2001年イギリス−が出る)
(経済産業省電力安全課・福島亨課長が登場)
福島亨課長:多くの研究者・医者の方々から「仮に影響があったとしても、他の日常な健康リスクに比べてとても小さいものなるだろう」と聞いおります。
(WHOのマイケル・レパチョリ博士が登場)
レパチョリ:不安なものを避けるという予防的措置をとることが、心配の度合いを下げる方策です。人々の不安は、一般的にそうした事で自然と少なくなっていきます。そしてそれは電磁波のヘビ−ユ−ザ−である日本に適用できるものです。
ナレ−ション:欧米では「21世紀の環境問題」とまで言われている電磁波。しかし、私たちはこの電磁波についてどれだけのことを知っているのだろうか。
(テロップ「『地球環境を考える』電磁波−−見えない脅威?」)
(群馬県前橋市の内科病院の前景。小児科とアレルギ−科の病院の看板も続いて映る)
ナレ−ション:シックハウス症候群などいわゆる化学物質過敏症の治療を行なっているこの病院に電磁波過敏症を訴える患者が治療に訪れている。10人程いる患者の一人に会った。
ナレ−ション:この女性は去年電磁波に反応するようになり、目を開けていられないという症状が出るようになったという。
(カメラが近づくと女性の様子が変わった)
女性患者:ああ、やっぱり。
(女性観じゃは目をしばつかせる)
レポ−タ−:だめですか?
女性患者:そうですね。
レポ−タ−:どういう感じになるんですか?
女性患者:あの−、目がですね、開けられなくなっちゃうんで、はい。
レポ−タ−:カメラですか?マイクですか?
女性患者:どっちでしょうかね。カメラのほうが強いですね。ちょっと外へ行ってもいいですか?
(外でカメラを遠くに離してレポ−タ−が女性患者にインタビュ−する)
レポ−タ−:原因は電磁波であるとはっきりしたんですか?
女性患者:テレビを見ている時離れないとだめですし、離れていても症状出ますし、とにかく電気製品でいろいろ感じるようになりましたので。それで自分で電磁波に違いないという風に思いました。
(医師が診察室で同じ女性患者を診察している)
ナレ−ション:この女性の診察は照明もエアコンも切った部屋で行なわれる。
医師:ちょっといいですか?
(医師がエアクリ−ナ−をスイッチを切った状態でコンセントにつなぐ。同時に、関係ないACアダプタ−もコンセントにつなぐ。ACアダプタ−からは電磁波が出る。)
医師:これでどうですか?
女性患者:ああだめ、ああだめ。コンセントを入れただけですか?
医師:いや、じつは他のこともやったんだけど。
(医師へのインタビュ−)
医師:電磁波過敏症であると百%納得しているわけではない。もしかすると精神的なものじゃないか、自分で思い込んでいるんじゃないかという部分がないわけではない。しかし、ああやって試すと「やっぱりあるな」と日に日に心証が濃くなっていかざるをえない。もう手探りですね。医師や薬じゃ効きませんて。私はやっぱりね、電磁波から逃げまくるしかないと思う。
ナレ−ション:電磁波過敏症は電磁波との因果関係がはっきりしないことから正式に認知されていない。しかし電磁波の健康への影響は世界的に注目されている。
(国立保健医療科学院の建物全景が映り、次に大久保千代次部長が登場)
ナレ−ション:電磁波は人に影響を与えるのだろうか?世界保健機関(WHO)日本代表であり、電磁波の研究をしている大久保千代次氏を訪ねた。
大久保千代次部長:電磁波の曝露レベルによって人体への影響は変わります。非常に強い場合は、当然誘導電流が出ますので影響はあると思います。ただし、居住環境での健康リスクはほとんどないだろう、と私個人は考えている。たしかにおっしゃるとおり、いろいろ健康影響に結びつくデ−タは単発の実験ではある。しかしその実験をもう一度再現しようとしても出ないし、たとえその人が再現しても別の研究組織でもう一度やってもらうと出てこない。再現実験と他の研究機関の再現実験という、その二つの判定をクリアできるデ−タは今のところない。
レポ−タ−:確証はしていないということですか?
大久保千代次部長:ということですね。
(電磁波問題市民研究会の定例会の風景)
ナレ−ション:電磁波問題市民研究会は、電磁波の影響を訴えている市民グル−プ。国内およそ200ヵ所で送電線や携帯電話中継基地局の問題に関わってきた。
電磁波問題市民研究会事務局長:ヨ−ロッパでは電磁波のことを『21世紀の公害』と最大級の表現をしている。いま、電磁波はリスクありのクロでも、リスクなしのシロでもない。クロでもシロでもなく『限りなくクロに近い灰色』つまりグレ−ゾ−ンとみている。
(千葉県内の高圧送電線の風景)
ナレ−ション:高圧送電線の下で暮らしている家族が電磁波の影響を訴えているためいろいろな人に家をみてもらっているという。その家を電磁波問題市民研究会事務局長とともに訪ねてみた。
(送電線下の家と持ち主が登場)
ナレ−ション:この方は室内でも強い電磁波が測定されると訴えている。家には引っ越しで誰も住んでいない。
(室内で電磁波測定器で測定中)
電磁波問題市民研究会事務局長:送電線に近くなれば距離が短くなるから、測定器の値がまた上がるんです。
(ド−ル委員会報告書が表示)
ナレ−ション:昨年3月、イギリス政府の諮問機関が出した報告書。それによると、0.4マイクロテスラになると、小児白血病の発症リスクが2倍になると報告されている。0.4マイクロテスラとは蛍光灯から数10pの距離に存在する電磁波量である。この家の持ち主は7年前に夫をがんで亡くした。その後、子供も頭痛や吐き気を訴えるようになり、それらが電磁波の影響だと考えている。
持ち主:私のところは子供がおりまして、その当時子供がたいへんな頭痛と吐き気で。毎日地下鉄に乗ると吐いていて途中下車するような状況になった。そこでガウスメ−タ−で測り電磁波のない下宿を捜しましてそこに子供たちを住まわせました。
レポ−タ−:移られて症状は変わりましたか?
持ち主:ええ、頭痛はスキッとなくなりました。目の悪化もある程度止まっているそうです。吐き気ももちろん止まっている。
(「平成14年度科学技術振興調整費中間・事後評価報告書」が表示)
ナレ−ション:実は日本でもWHO(世界保健機関)の要請で、送電線から出る電磁波の影響についての疫学調査が1999年から3年間にわたって行なわれた。しかし、今年発表された政府の報告書ではその調査について「電磁界の健康調査を推測するには非常にあいまいな調査結果に終わった」という評価を下している。
(電気事業連合会の入っているビルの全景)
ナレ−ション:全国の電力会社10社がつくる電気事業連合会は電磁波についてどのように考えているのだろうか。
(電気事業連合会・森望副部長)
森望副部長:通常の生活環境における電力設備からの電磁界が健康に影響を及ぼすような有害なものが出るということはない。
(経済産業省電力安全課・福島章課長)
ナレ−ション:一方、所管官庁である経済産業省は?
福島章課長:国内外の研究者・お医者様は仮に影響があるとしても他の日常的な健康リスク比べて非常に小さいというふうに言われていると承知していますから。私どもとしては、これからのWHOでの検討結果が出てまいりますので、そういったものを踏まえて合理的な対応を図っていくことが重要だと考えています。
(携帯電話をかけている人々)
ナレ−ション:PHSも含めて現在およそ7千万台も普及している日本の携帯電話。この携帯電話からも高周波という電磁波が出ている。去年、NTTドコモが携帯電話の中継基地局から出されている高周波の生物への影響を細胞レベルで調査研究すると発表した。
(NTTドコモ電波部・高尾俊明課長)
高尾俊明課長:基地局設置する時に電波に対して不安をもっといる方がいるので、皆様の不安を解消するために研究を行なっている。その結果をお知らせすることで不安の解消につなげていただければなと考えていますので研究を始めました。
(京都大学工学研究科・荻野晃也博士)
荻野晃也:悪影響があるという研究がいっぱい出てきてもそれでも100%悪影響と確定できない。私どもは危険が100%確定していますとは言っていません。ただかなり高い可能性があるという時どう対処したらいいか、それが問われているんですよね。それで危険性が証明されるまで安全と考えるのでなく、安全性が証明されるまである程度危険の可能性があると考えて対処しよう。これが21世紀の環境問題に対する考え方になっている。
(ルクセンブルグの「国際電磁界プロジェクト会議」が開催された会議場が映される。国際会議場らしく各国の旗がはためいている)
ナレ−ション:今週(2003年2月24日から26日)、ヨ−ロッパのルクセンブルグで電磁波に関する世界保健機関(WHO)主催の会議が行なわれた。世界各国から医者や専門家およそ100人が参加した。
(会議場内の光景と「国際電磁界プロジェクト会議」のテロップ)
ナレ−ション:電磁波に対して予防的措置をどのようにとるのかなどについて話し合った。WHOではこうした会議を重ね2005年には電磁波についてのガイドラインをまとめたいとしている。
(会議に参加したEU〔欧州連合〕のM.セギノ博士)
セギノ:電磁波問題については国際単位で協議し対応を決め、実施しなければならないのです。
(WHOのM.レパッチョリ博士)
レパッチョリ:政府当局は国民に電磁波の情報を与え、教育していくべきなのです。分かっていることと分かっていないことをです。
(スタジオに戻り。両キャスタ−:桂文珍と酒井ゆきえ)
酒井ゆきえキャスタ−:さあ、私たちはこの電磁波とどう対応していけばよいのでしょうか?世界保健機関(WHO)は専門のプロジェクトを設けて話し合いを進めておりそして再来年(2005年)を目処に予防的措置についての指針(ガイドラシン)の策定を目指しています。
(以下のフリップ)
国内外の取り組み
WHO(国際保健機関) 国際電磁界プロジェクト実施 2005年“予防的措置”ガイドライン策定へ 日本 調査研究をすすめる省庁 総務省・環境省・厚生労働省 文部科学省・産業経済省資源エネルギ−庁 |
酒井ゆきえキャスタ−:ではこの「予防的措置」とは一体なにかというと、環境問題や健康問題に対して「予防原則」という一般的な考え方があります。これは科学的に確実になっていないリスクに前もって対処するという考え方で、危険性の証明が十分でない段階でもそのリスクが重大なものになる前に措置をとる。これが予防的措置です。
(以下のフリップ)
“予防的措置とは”
予防原則 ○科学的に不確実性で大きな“リスク” に対処。 ○危険性の証明が十分でなくても“予防的 措置” 「もしかしたらリスクがあるかもしれない」 ことを広く知らせるという考え方 |
酒井ゆきえキャスタ−:簡単に言うと、もしかしたらリスクがあるかもしれないことを知って対応しましょうという考え方のことです。たとえば、タバコのパッケ−ジにありますように、「健康を損なうおそれがある吸いすぎに注意しましょう」という表示がありますが、これを行なう根拠と同じことで、ま、早い段階でリスクの可能性を認識しましょうということなんです。
桂文珍キャスタ−:岩田さん、利便性というものは多少リスクがあるんでしょうな?
(岩田公雄・読売テレビ解説委員)
岩田公雄解説委員:そうですね。文明の発展の中で、電気・パソコン・インタ−ネット、どれも不安感があるものに対して様々な利便性の享受とともに、より多くの人々に情報を公開して、そうしたことができるような社会を築くということがこれからのテ−マでしょうから。利便を享受するために、これに積極的に立ち向かう姿勢が必要ですな。
桂文珍キャスタ−:しかし、ヨ−ロッパはいろいろ勉強してますな。
岩田公雄解説委員:研究が進んでいるし公開もする。