イ−ジス艦とフェ−ズド・アレイ・レ−ダ−と電磁波問題

□イ−ジス艦「きりしま」
 2002年12月、日本の海上自衛隊所属最新鋭護衛艦「きりしま」がアフガニスタン沖に向け横須賀港を出航した。
 「きりしま」はイ−ジス艦である。イ−ジス艦は目標敵の探索・探知とその情報処理さらにその敵に対する攻撃を高性能レ−ダ−とコンピュ−タで自動処理する「イ−ジスシステム」を搭載している最新鋭艦だ。
 1隻の建造費が約1200億円。通常の護衛艦が数百億円である。

□敵破壊力6倍アップ
 イ−ジス艦のレ−ダ−は数百キロの範囲で同時に200個以上の目標を捕捉できる。そして同時に10個以上の目標を最大射程100キロを超える迎撃ミサイルで攻撃が可能だ。
 ふつうは2〜4個の目標しか同時迎撃できないので。通常艦の6倍程度迎撃能力がある。
 そのことは敵からすると日本がそれだけ戦争に深く加担したとみなされる。イ−ジス艦の派遣が問題を起こしているのはそのためだ。

□フェイズド・アレイ・レ−ダ−とは
 イ−ジス艦の特徴は、レ−ダ−に「フェイズド・アレイ・レ−ダ−」を採用している。従来のレ−ダ−は一基が360度回転する。最速でも1回転に1秒かかるので目標が探知レ−ダ−をかいくぐることもある。
 これに対しフェイズド・アレイ型は固定式で360度の全周方位角と天頂までの仰角をカバ−する。そのため1艦に角度が違う同レ−ダ−を4基搭載する。形は八角形で縦横の長さは約4メートル。
 その中に四千以上の電子素子があり一つ一つの素子からパルス化した高周波電磁波を発射させる。

□位相配列で時間をずらして電磁波を放射
 レ−ダ−電磁波は時間をずらし発射することで広い範囲を同時捜索・探知できる。パルスデジタル電磁波は多数の素子から発射したほうが、全体を一つの巨大な発信装置とするより効果がある。懐中電灯を二つ並べてスイッチを入れた時、各電灯の光が重なった所のほうがより明るいのと原理は同じだ。
 「フェイズド・アレイ・レ−ダ−(phased array radar)」(位相・配列・レ−ダ−)はその通り読んで字の如しだ。

□コッド岬のペイブ・ポ−ズと同じもの
 米マサチュセッツ州ボストン市の東に位置し大西洋に突き出したコッド岬に米空軍ペイブポ−ズ基地にある「早期超大型警戒レ−ダ−網」が同じフェイズド・アレイ・レ−ダ−を使っている。
 コッド岬周辺の住民は長年にわたってフェイズド・アレイ・レ−ダ−が人体に悪影響あると反対している。
 非常に短いパルス化した電磁波はエネルギ−が強く、人体内に深く入り込む危険性が強いからだ。

□空軍研究者も反対する技術
 テキサス州サンアントニオのブルックス空軍基地の研究者リチャ−ド・アルバニ−スは「この種のレ−ダ−電磁波は広い範囲で人間を被曝し“ブリュアン前駆体”を引き起こす。フェイズド・アレイ・レ−ダ−放射線はまだ人体に安全かどうかテストされていない電磁波だ」と警告を発している。
 もともとレ−ダ−そのものが人間にとって有害でレ−ダ−操作者に健康被害が多く出ているが、それに輪をかけて危険なレ−ダ−技術なのだ。

□「快適な艦に交代した」ではすまされない
 気温40度、甲板上は80度になるインド洋。政治家への説明として甲板上で目玉焼きを焼く写真を見せ、「派遣中の護衛艦は居住スペ−スが悪いから最新鋭艦を」と“情”に訴える防衛庁幹部の作戦も成功しイ−ジス艦の派遣はろくに論議もなく決まった。
 世界でイ−ジス艦をもつ国はわずかだ。そんな攻撃的な最新鋭艦をインド洋にまで派遣していいのか、という根本問題に加えて電磁波の問題もある。だが電磁波の問題はまったく論語されていない。

□結局、人間の目が勝負
 軍事評論家野木恵一氏は「中東地域は大気が不安定なことが多く、電波が乱反射しレ−ダ−も影響を受けやすい」と言う。コンピュ−タで高度に自動化されたイ−ジス艦でも、目標を敵を判断し、迎撃司令を出すのは人間である。民間船を装ってゆっくり接近し自爆テロするケ−スだって考えられる。
 米イ−ジス艦がイランの旅客機を打ち落とした事故も実際起きている。
 アメリカは、軍隊が兵器として電磁波を利用したいがために、電磁波の人体の影響について研究していても公表しないといわれる。私たちはもっと真実を追求していかねばならない。


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