海外情報

マイクロウェーブ・ニュース
2002年9〜10月号より
(抄訳 TOKAI)

オーストラリアの携帯電話電磁波研究には多くの批判が出ている

レパチョリ実験研究結果を否定したアテリッジとカッチェルの研究

□『放射線研究』9月号に掲載されたもの
 オ−ストラリアの新しい動物研究結果は、同じオ−ストラリアで、以前「ケ−タイとがんは関係あり」とした実験結果を否定するものだった。しかしこの新研究に対し世界中から批判の声が上がっている。
 新研究は『放射線研究』9月号に掲載されたタミ−・アテリッジ(Tammy Utteridge)とティム・カッチェル(Tim Kuchel)らの論文だ。以前の研究とはマイケル・レパチョリが1997年、王立アデレ−ド病院にいた頃発表したもの。GSM(欧州統一規格ケ-タイ)高周波電磁波をトランスジェニックのラットに慢性的に曝露した所、リンパ腫が有意に増加したというもので当時大変話題になった研究だ。トランスジェニック・ラットとは遺伝子形質を転換したネズミで、レパチョリは「Pim−1」というがんになりやすく遺伝子形質を転換したラットで、2.4倍リスクが電磁波で上がったことを証明した。

□コントロ−ル・ラットに問題が
 レパチョリ研究を否定し、「GSM電磁波を浴びてもリンパ腫は増加しなかった」というアテリッジとカッチェル(アデレ−ドの医学・獣医学研究所に二人は勤務)の研究結果を米携帯電話会社モトロ−ラのメイズ・スウィコ−ド(Mays Swicord)は「レパチョリ研究結果は再現に失敗した」とこれを評価し、CTIA(米携帯電話工業会)も同じ見解をとった。
 だがアテリッジとカッチェルの研究で問題なのは、コントロ−ルに使った「Pim−1」マウスがレパチョリに使ったネズミより3倍以上高い率でリンパ腫に罹っている点にある。症例(病気の対象)と対照(コントロ−ル=比較母体集団)のリスク比をみる際、対照にリンパ腫リスクが高ければリスク比率が下がるのは当然のことである。レパチョリのネズミが22%のリンパ腫比率だったのに二人の新研究コントロ−ルは74%と3倍も比率が高かったことに二人は論文で論じていない。

□次々と出る批判
 モトロ−ラのフロリダ研究所の前責任者Q・バルツァ−ノ(Balzano)「新研究は再評価が慎重でないし、十分説明もされていない。はっきり言って矛盾に満ちている」と批判した。NIEHS(米国立環境健康科学研究所)のロン・メルニック(Ron Melnick)「この論文は受け入れない」とし、他にも次々を新研究結果に批判が出ている。ちなみにレパチョリはWHO国際EMF計画共同で責任者だ。


会報第19号インデックスページに戻る