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マイクロウェーブ・ニュース
2002年9〜10月号より
(抄訳 TOKAI)
□ハノ−バ大学とウィ−ン大学の研究報告
商用周波数(50・60ヘルツ)の磁場はDNA損傷を引き起こす、という研究報告がドイツとオ−ストリアの研究所から出された。
オ−ストリア・ウィ−ン大学のオズワルド・ヤン(Oswald Jahn)とユ−ゴ・ルディガ−(Hugo Rudiger)の実験研究で、極低周波磁場の断続的暴露後といくつかのタイプの細胞でだけDNA損傷の増加が見られた。
二人は『突然変異体研究・遺伝毒性』8月号で「この研究は、断続的なEMF(電磁場)曝露が遺伝毒性効果をもたらす可能性があることを示している」と書いている。
□バイアス(交絡因子)排除が課題
ハノ−バ大とウィ−ン大の両方の研究所で使用された電磁波曝露実験システムを設計したチュ−リッヒの「IT'IS」のニ−ルス・クスタ−(Niels Kuster)は、研究結果を保証するために研究の客観性を確認するための人為的要素排除に努めたい、と語った。
ミュンヘンの「ベルム財団」のフランツ・アドゥルコファ−(Franz Adlkofer)は、「DNAのらせんが損傷するのは振動が関わる可能性があり、DNA損傷が電磁波によるのか振動というバイアス(交絡因子)のせいなのか、今年末に調査される」と語った。
EMF(電磁波)由来のDNA損傷を初めて発見したのは、シアトルのワシントン大学のヘンリ−・レイ(Henry Lai)とN.P.シン(Singh)で1995年に報告された。レイとシンは60ヘルツの継続的電磁場を生体実験(in Vivo)でラットに曝露し脳細胞を解析した。そのシンは「今回の二つの新研究は私たちの研究の正しさを支持したし、疫学研究や今後の動物実験に大きな示唆を与えるものだ」と語った。
□断続的曝露が新研究の特徴
ウィ−ン大のヤンとルディガ−は、対象細胞に電磁波を5分間曝露しそのあと10分間休止するというサイクルを24時間以上繰り返した時、繊維芽細胞(fibroblast)が700ミリガウスでDNA損傷を起こした。それは統計的に有意であったし、曝露量と反応の関係を示す「投与反応」もきちんと出た。
ルディガ−は6月にカナダ・ケベック市で開催されたBEMS(生体電磁気学会)会議で「電磁波の断続的曝露で出たような反応は継続的曝露では出なかった」と報告した。
<図>EMFの断続的曝露によるDNA損傷(ルディガ−報告)