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マイクロウェーブ・ニュース
2002年9〜10月号より
(抄訳 TOKAI)

アメリカ・ボルチモアの携帯電話脳腫瘍訴訟事件は連邦第一審敗訴

弁護側アンジェロス法律事務所は上告の方向

□9月30日にケ−タイ産業寄りの判決出る
 ボルチモア市の神経科医クリストファ−・ニュ−マンが携帯電話使用で脳腫瘍になったと訴えていた携帯電話脳腫瘍訴訟の連邦第一審裁判所判決が9月30日出た。判決を下したのはキャサリン・ブレイク連邦判事で、内容は原告ニュ−マン側の「携帯電話が脳腫瘍の原因だとする証拠は科学界では受け入れられない」というもので、被告携帯電話産業側の主張を支持するものである。
 ブレイク判事は10月25日までに原告側が上告しなければ、10月30日を期限で8億ドル(約960億円)の損害賠償訴訟は却下となる、と発表した。

□原告側は上告の方向
 43歳の医師ニュ−マンが「自分が脳腫瘍になったのは携帯電話使用が原因」とモトロ−ラらの携帯電話会社を訴えたのは2000年8月である。ニュ−マンは彼の脳腫瘍はアナログ型携帯電話でできたと主張してきた。
 ニュ−マンの弁護人であるボルチモアの「ピ−タ−・アンジェロス法律事務所」のジョン・アンジェロス(John Angelos)弁護士は、「私たちは上告するつもりだ」と語った。 二年前にはじめてニュ−マンが弁護を依け、頼したジョアンヌ・ス−ダ−(Joanne Suder)弁護士は、ニュ−マン事件を州地裁で争っていたが、その後ピ−タ−・アンジェロス事務所に係争をバトンタッチした。ス−ダ−弁護士はニュ−マン事件以外の6件の携帯電話訴訟(州段階の)を受け持ち、かつさらに訴訟待機中の客ももっているが、彼女も携帯電話訴訟を放棄する気はない。今回の判決後に彼女は「私たちには携帯電話と脳がんの関係を立証できる科学的な証拠をもっている」と語った。

□ド−ベルト基準を重視したブレイク
 キャサリン・ブレイク判事が被告側勝訴とした最大の根拠は「原告側が用意した証人の証拠は“ド−ベルト基準”に合致していない」ことにあると判事自身、力説している。
 ド−ベルト基準とは、「ド−ベルト(Daubert)とメレル・ダウ薬品鰍ニの間の係争」で米最高裁が1993年に、法廷でどのような科学的証拠が採用されるかを示した基準のことである。証拠として採用するには適切で(relevant)信頼性のある(reliable)ことが要件とされ、具体的には証拠となる論文が信頼性のある学会誌に発表されたかどうかが一つの判断となる。
 ブレイク判事は、原告側証拠はド−ベルト基準を満たしてなく反対に被告側証拠は基準を満たしている、と判断したのである。

□レナ−ト論文が重要な分かれ目
原告のニュ−マン側が提出した重要な証 拠がレナ−ト博士の疫学論文だった。スウ ェ−デン・エレブロ(Orebro)大学のレナ− ト・ハ−デルは携帯電話と脳がんの関係は 大いにあると主張しているが、判事は「レ ナ−ト論文は“投与反応(量に比例して反 応が出る)の欠如"と“ 再現テストの欠如 から重大な批判対象になっている」と斥 シアトル・ワシントン大学のヘンリ− ・レイの「高周波がDNA損失と関係して いるという実験についても「レイのはア ナログ携帯電話で使う八百メガヘルツでな く2千4百メガヘルウを使っているから証 拠としてふさわしくない」と斥けた。
反対に被告側の提出した証拠は「科学的 に確立され、高い信頼性がある」と評価し た。州地裁から連邦地裁に訴訟の舞台を移 したことは被告に有利に働いた。


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