<海外情報>
(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2002年1〜2月号より
□最大磁場で流産リスク高まる、の波紋
米カリフォルニア州オ−クランドにある「カイザ−・パ−マネント」のディ−・クン・リ(De-Kun Li)率いる研究チ−ムが『エピデミオロジ−(疫学)』1月号で発表した「16ミリガウスかそれ以上の最大磁場(MMF=Maximum Magnetic Field)を浴びると流産リスクは高まる」(会報11号14ペ−ジ参照)とした新見解が一流の疫学者間で活発な論争になっている。
従来の曝露主要指標(指針)は平均磁場(TWA=Time-Weighted Average)であった。たとえば商用周波数(50ヘルツまたは60ヘルツ)のEMF(電磁場)のICNIRP(国際非電離放射線)基準は1ガウス(1000ミリガウス)で、この程度までなら妊娠女性が浴びてもいいとするのが国際基準であるが、これはTWA(平均磁場)の考えに立脚した数値だ。
□騒音公害との類比(最大磁場擁護意見)
「カリフォルニアEMF計画」でリの研究を資金援助したカリフォルニア健康サ−ビス課のレイモンド・ニュ−トラ(Raymond Neutra)は、リが最大磁場曝露と呼んでいることの意味を説明するため騒音公害との新しい類比をあげている。それは「人は累積した音に関心はない。それよりも夜目を覚まさせる大きな音に関心がある」と。
□最高で約6倍のリスク
ディ−・クン・リの妊婦らを対象とした研究では、平均磁場(TWA)では流産リスクは増加しなかったが、16ミリガウスかそれ以上の磁場を少なくとも10秒間被曝した女性の流産リスクはほぼ2倍になる。そして「型にはまった(通常の)日」に24時間磁場を被曝しその中で16ミリガウス以上の被曝を含む場合はリスクが3倍で、妊娠10週目以前で流産した女性が同条件で被曝した場合はリスクは6倍に近い。
リは「私たちの研究結果は論理性もクリアしており証拠性は強い。私たちの研究により最大磁場(MMF)が流産リスクと相関関係があるとわかったあとで、レイモンド・ニュ−トラ(Raymond Neutra)とゲリ−・リ−(Gerri Lee)は自らの研究所に戻り彼ら自身のデ−タを調べたところ同じ関連性があることを確認したことは、私も満足に思う」と語った。ニュ−トラとゲリ−・リ−の研究は『エピデミオロジ−』の同じ号に出ている。
ディ−・クン・リは、「私たちは妊娠中に1回短く16ミリガウス以上を被曝したら流産になる、と言っているのではない。私たちの研究では型にはまった日、つまり通常の生活で16ミリガウス程度はおそらく被曝するとみている。ただし、16ミリガウスの磁場被曝をどの位の時間浴びたら、あるいはどの位の回数浴びたら妊娠に影響するかについては調べていない」と語った。
リの研究では、磁場の発生源はなんなのかについては調べていない。つまり家の電気器具か職場の電気設備か、あるいは鉄道なのか送電線なのかの区別でなく、あくまで16ミリガウスを浴びたか否かを調べたものだ。
□デイビッド・サビッツは懐疑的
ノ−スカロライナ大学のデイビッド・サビッツ(著名な疫学者)は、リ−の提起した曝露指針に懐疑的だ。
サビッツの反論はこうだ。「リ−は最大16ミリガウスかそれ以上被曝すると流産リスクが高まるというが、研究結果からわかることは、健康な妊娠女性と、流産経験あるいは流産しやすい女性のリスクの差が行動上の違いから生じている、ととらえた方が納得いく。吐き気を経験する女性や腹が膨らんだ女性は家や職場や地域を動き回らない。だから結果的に被曝量は少なく、妊娠していない女性やもう妊娠する可能性のない女性はよく動き回りそれだけ被曝する可能性は高くなる、と理解したほうが妥当だ」としている。
カロリンスカ研のア−ルボムはサビッツの意見を理解し、ナンシ−・ワルトハイマ−は「平均磁場以外の影響を調べたことはいいことだ。しかしもっと16ミリガウス指標についての研究知りたい」と語った。